【Inter BEE 2018】 特別講演「eスポーツと放送局の向き合い方」開催決定!! ~日本のeスポーツ産業の課題と展望、テレビ局の事業化ステップを探る~

2018.9.3 UP

eスポーツの関係者が集まり課題や展望が討議された
(左)深谷氏、(右)江尻氏

(左)深谷氏、(右)江尻氏

(左)窪田氏、(右)小林氏

(左)窪田氏、(右)小林氏

吉井氏

吉井氏

会議に出席したeスポーツの関係者の方々

会議に出席したeスポーツの関係者の方々

 Inter BEE 2018初日の11月14日(水)に開催する特別講演「eスポーツと放送局の向き合い方」は、eスポーツの最前線で新しいビジネスを切り開こうとする面々が登壇し、eスポーツの現状と今後の可能性や課題、さらには、放送との連携について、現在の状況や今後の展望を語ってもらうものだ。
 

■世界的ブームのeスポーツ 市場規模は年間700億円、視聴者数3億人

 eスポーツとは、ネット上でプレイする各種のオンラインゲームの対戦の様子を公開し、あたかもスポーツ競技のようにファンが応援する新しいエンターテインメントだ。競技の勝者には賞金が授与され、中にはプロ選手や企業からスポンサードを受けるプロのチームもある。欧米や中国、韓国などでは、特定のゲームを対象にした「eスポーツ リーグ」が複数あり、年間の賞金獲得金額1億円を超えるプレイヤーも少なくないという。
 
 ゲームはシューティングゲームや格闘技ゲームだけでなく、カードバトルゲームやサッカーゲームなど、ジャンルはさまざまだ。欧米では90年代後半から世界規模の大会が開催されており、2017年の市場規模は700億円、視聴者数は3億人を超え、まだ成長を続けているという。eスポーツはイベントだけでなく、OTTなどの視聴ジャンルとしても確立しており、大きな産業、ビジネスに育っているのだ。
 
 世界におけるeスポーツ産業の急拡大と比べて、日本ではまだ認知度も低く、今後の成長余地が大きい。総務省の調査報告書の試算によると、日本では年間5億円未満、視聴者数158万人という。しかし、世界の状況を見ると、eスポーツがスポーツイベントの一環として位置づけられようとしている動きもあり、そうした動きの中でイベント、視聴コンテンツとして無視できない状況になりつつある。
 

■オリンピックでも競技化を検討 FIFAは「eスポーツ ワールドカップ」開催

 具体的には、現在インドネシア・ジャカルタで開催中のアジア競技大会ではデモンストレーション競技としてeスポーツが行われている。中には、日本でもおなじみの『ウイニングイレブン 2018』『リーグ・オブ・レジェンド』などもあり、6タイトルが実施されている。アジア競技大会は2022年の中国・杭州での開催に続き、2026年の第20回大会は、名古屋での開催となることもあり、日本におけるeスポーツの対応が急がれる。
 
  IOC(国際オリンピック委員会)もオリンピックでの競技への導入を検討している。本記事の後半で詳細をご紹介するが、世界最大のスポーツイベントとして知られるFIFA ワールドカップの主催団体、FIFAはすでに「eスポーツ ワールドカップ」を実施しており、日本からも「選手」が参加している。
 

■日本におけるeスポーツビジネスの課題と将来性を討議

 こうした背景もあり、今回の特別講演では、日本のeスポーツにおける現在の課題や、放送との連携の可能性などについて、関係者からの意見を聞いていく。8月のお盆明けには登壇者の事前打合せが実施され、それぞれのeスポーツとの関わり方や現状の課題、将来展望などの意見交換が行われた。
 
 特別講演「eスポーツと放送局の向き合い方」の企画発案者であるニューメディア 出版局長の吉井勇氏は、この講演のねらいを次のように説明する。
 「特別講演に集まっていただくのは、いずれもeスポーツと深い関わりを持っている方々。日本におけるeスポーツの課題や今後の方向性を語ってもらうとともに、Inter BEEなので、放送局の人たちにとってどういうチャンスがあるのかを知ってもらう機会としたい。 体を動かすスポーツではないのになんで"スポーツ"というのか、という感覚的な思いも含め、理解を深めてもらい、どのように事業のステップを踏んでいけばいいのかといった糸口を提供できるものにしたい」(吉井氏)
 
 特別講演は2部構成になっている。1部では「eスポーツとは何か?」と題したデモ、およびプレゼンテーションが、2部では、複数の関係者が登壇し、「eスポーツに見るビジネスチャンス」と題したパネルディスカッションを実施する計画だ。
 

■DeToNator 江尻氏「日本は認知拡大の段階」

 「eスポーツとは何か?」のプレゼンテーションを担当するのは、日本のeスポーツ プロゲーミングチームとして活動するDeToNatorを運営するGamingD代表の江尻勝氏だ。江尻氏は2009年にオンラインゲームAVAのチームを設立し、その後さまざまなタイトルで活動をしている。Amazonのストリーミング配信プラットフォームTwitchでゲームを紹介するストリーマーと呼ぶインフルエンサーも在籍している。
 
 江尻氏は、現在の日本のeスポーツの状況について次のように話す。「欧米、韓国、中国など、eスポーツは世界中で急速に拡大・進歩している。それに比べて日本は成長が遅く、チームのレベルもまだ低い。当社ではまずは世界に遅れをとらないように、チームは外人選手を起用し、海外のリーグで活動させ、国内向けにはストリーマーにゲームのルールなどの基礎知識や、高度なテクニックなどを紹介し、認知の拡大に務めている」(江尻氏)

 
■abemaTVの番組で年間6,000万人視聴

 江尻氏はまた、日本の課題について「まず、認知度を高めると同時に、世界のレベルに通用する選手を育てること」と言う。「プレイの技術力を育てるというだけでなく、社会人として、プロ選手として、多くの人があこがれれる存在になるようにしなければならない。そのための教育に力を入れている。また、それに応じた報酬を与えていくことで、ファンとともに、選手になりたい人を増やしていくことが重要。そのためには、選手だけでなく、選手の保護者の世代の人にも認めてもらえるようになる必要がある」(江尻氏)
 
 江尻氏は「 今一番、力を置いているのはストリーマーといわれるインフルエンサーによって、eスポーツのおもしろさや、高度なテクニックを伝えていくこと」という。その認知拡大の番組が、すでに人気コンテンツとなりつつあるようだ。
 「実際に、ゲーム競技の中継よりも影響力が強い。ストリーミング視聴は間にCM挿入もでき、最近ではゴールデンタイムに家族で視聴するというケースもある。ゲーム中継は5-6時間もかかる。滞在時間が長いという点で、新たなビジネスチャンスと捉えられるのではないだろうか」(江尻氏)
 同社は現在、abemaTVで冠番組「DETONATOR PROJECT」を制作。ユニークユーザー数が月間500万人、年間で6,000万人もいるという。
 

■日本テレビ eゲーム地上波番組「eGG」、 M1総視聴率が全番組中2位に

 すでに放送局でもeスポーツに関する動きが出ていている。登壇者の一人で、日本テレビのグループ会社でeスポーツを展開するアックスエンターテインメント株式会社の小林大祐社長は「もともと、eスポーツに興味のある社員によるグループ内起業として立ち上がった」と設立の経緯を説明する。同社では今、eスポーツチーム「AXIZ(アクシズ)」を創立してeスポーツ事業に参入するとともに、7月19日から地上波でeスポーツ専門番組「eGG(エッグ)」を放映している。これは、地上波放送と同時に動画配信を実現している。
 
 小林氏は、同時配信をする理由として「ゲーマーが視聴することを想定すると、それぞれ環境や時間によって異なるデバイスを使用している。人によっては、テレビを視聴していたモニターをゲーム用ディスプレーとして使用することもあり、そのときには動画配信のほうを見てもらうことができるようにしなければならず、複数デバイスへの同時配信が必須となる」と話す。
 
 注目すべきは、第1回の放送でM1(男性20-34歳)の総視聴率が、ゴールデンも含めたその週の全番組の中で2位だったという好結果だったこと。小林氏は「視聴率は扱うゲームの種類によって変わる可能性はある」と控えめな評価だが、「同時放送で視聴率を棄損していないということもあり、ビジネスとして好循環となっている。新しいビジネスになり得ると実感しており、放送の収入につながる可能性がある」と期待を込める。
 

■東海テレビ 名古屋でeスポーツフェスティバルを開催

 もう1社、2026年にアジア大会が開催される名古屋のローカル局である東海テレビも取り組みを始めた。昨年12月からeスポーツ チームのサポーターとなり、さらに今年3月「名古屋eスポーツフェスティバル」を開催した。定員300人の会場が1700人近くの延べ来場者数を記録。配信の同時視聴数も1万を超え、最大同時視聴18,000となるなど人気を博した。
 「地元の人にeスポーツを実際に見てもらうことが大事だと思った。今後は、コミュニティづくりをしていき、幅広い年齢層でファンを増やしていきたい」と語るのは、東海テレビでeスポーツの企画・プロデュースを担当している事業局 局付部長(事業・事業開発)の深谷弘氏だ。
 
 東海テレビは以前、総合格闘技イベントのPRIDE(プライド)の立ち上げにたずさわり、世界的な総合格闘技ブームのきっかけをつくった実績を持つ。
 「格闘技も最初は一部のファンのものだった。それをテレビが取り扱うことによって、女性のファンが生まれ、寝技の意味までわかるようになりました。そこまではやはり育てていく気持ちで関わっていく必要がある。eスポーツも、現状ではまだ、ビジネスの芽を育てているところ。コミュニティづくりに力を入れていき、アジア競技大会が名古屋で開催される2026年にはしっかりと地元に根付いたeスポーツを手掛けたい」(深谷氏)
 
 Detonatorの江尻氏も愛知県の出身ということで、地元愛もあっての協力という。江尻氏は「地方はまだ情報が少ない。東京だけでなく、各地にファンを増やしていくことが必要。応援する空気を自分たちでつくっていくことが大事」と話す。
 

■Jリーグ FIFA eワールドカップを期にパートナー拡大に注力

 スポーツビジネスの立場からeスポーツに関わろうという動きもある。サッカーJリーグのマーケティング会社であるJリーグマーケティングは、パートナーセールスや、海外事業、グッズの商品化やゲームなどのライツの許諾などを担当している。
 
 同社は17年4月にグループ再編で生まれた新会社だ。Jリーグマーケティング 代表取締役社長の窪田慎二氏は、FIFAのeワールドカップ参加の経緯について、次のように話す。
 「ちょうどグループの再編でゲームビジネスのライツなどを担当したところ、FIFAが、2004年から実施していた"インタラクティブワールドカップ"というeスポーツのイベントを、いよいよワールドカップという名前をつけてやるという情報が入ってきた。さらに日本がアジアでの予選を担当していいという連絡があった。FIFAがやるイベントで、サッカーのゲーム、名称もeワールドカップというのだから、即やろうということになった」(窪田氏)
 
 実施は早々に決まったが「そもそも、ゲームなのに、なんでスポーツというか分からないと言われることが多かった」(窪田氏)など、54あるサッカークラブの社長や、Jリーグ内部に向けてのeスーツについて理解をしてもらうのに相当苦労したという。
 そうした苦労を経てJリーグマーケティングでは今、eワールドカップのパートナー拡大に力を入れている。FIFAには、スポンサーとしてEAやコナミもおり、Jリーグでも「OTT事業者や、通信事業者、プロバイダーなど、いろいろなところに興味を持ってもらっている。 eワールドカップの開催を後押しにパートナーはまだまだ増やせる」(窪田氏)と意気込む。
 

■インテグリティ、ドーピングテストなどスポーツ競技のノウハウ生かす

 窪田氏は、スポーツならではのアプローチとして「競技の公平性や八百長にならないためのインテグリティ、ドーピングテストをやるべきかどうか、いろいろと議論している。どちらかというと得意分野なので、eスポーツに役立てられるのではないかと思う」と話す。実は今、世界のeスポーツシーンでも、八百長疑惑などが問題として表面化しており、こうしたスポーツのノウハウが生かされることへの期待も高い。8月初旬に開催されたeワールドカップのファイナルでも、選手教育のためのセミナーや、ドーピング検査も行われたという。
 
 FIFAが主催するとはいえ、さすがにまだサッカーほどの規模にはなっていないようだが、ワールドワイドでの実施ということ、また、FIFAがたずさわるということで、選手の参加意欲や士気も高い。なんと、表彰式はサッカーのワールドカップと同時に実施するので、前回の優勝選手は、メッシといっしょに表彰対象者として並んだという。
 
 「ワールドカップということで、プロモーションを含めてワールドワイドの規模感、盛り上がりを実現していこうと考えている。サッカーのワールドカップと、eスポーツのワールドカップ、どちらが先に日本が優勝するか、今から楽しみ。一過性のものではなく、サッカーと同じだけの規模に育てたい。そのためにも、普及活動、選手の教育、地域との連携、事業化など、本腰を入れてやっていく」(窪田氏)
 

■日本最大級のスポーツイベント「RAGE」にJリーグ 横浜F・マリノスが参戦

 講演にはこのほか、サイバーエージェントの子会社でスマートフォンの広告マーケティングやメディア事業、eスポーツ事業を手掛ける株式会社 CyberZ。
 
 同社は、ゲーム動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」(オープンレックティービー)を運営している。同社はまた、エイベックス・エンタテインメント株式会社と共同で日本最大級のeスポーツイベント「RAGE(レイジ)」を運営している。同イベントでは、年間を通じて複数ジャンルのゲームを競技タイトルとして実施しており、前述の DeToNatorや、AXIZなどもRAGEにおけるプロリーグに参加している。また、最近では、Jリーグ サッカーチームの横浜F・マリノスも参加すると発表している。プロサッカーチームの運営会社がeスポーツに参加する例はフランスや中国にもあり、eスポーツの認知拡大を後押ししている。
 
 CyberZ広報の北村瑠美氏は「横浜F・マリノスはJリーグ発足当初からのチーム。Jリーグを盛り上げてきた経験を生かし、eスポーツを知らない人たちにeスポーツの魅力を伝えていき、同じようなムーブメントを起こしたいと話されている。eスポーツの認知度は、一般にはまだ低いので、人気スポーツのチームの参戦は認知拡大のための大きな力になると確信している」という。同社からは、執行役員でRAGEプロデューサーの大友真吾氏が登壇する。
 

■吉井氏「登壇者と聴講者の接点を創り出す80分に」

 吉井氏は「今は日本のeスポーツの立ち上げ時期。立場によってさまざまな苦労や思いもある。それぞれの立場から、放送局の人たちに対して、どのようなビジネスチャンスがあるか、また、そのためにはどのようなステップを踏んでいけばいいかを理解してもらえるようにしたい。それによって、登壇者と聴講に来た人とが接点を創り出してもらいたい」と期待をにじませる。
 

■9月27日(木)に事前登録・事前聴講予約開始

 この特別講演「eスポーツと放送局の向き合い方」も含めたInter BEE 2018のセッションについては、9月下旬に全容が発表される。セッションはすべて事前申込が必要となるので、必ず事前入場登録・事前聴講予約をしていただきたい。事前登録は9月27日(木)から開始となる。
 

【開催概要】

■名称 
  Inter BEE 2018
(第54回)2018年国際放送機器展
International Broadcast Equipment Exhibition 2018

■会期
 11月14日(水)10:00~17:30
 11月15日(木)10:00~17:30
 11月16日(金)10:00~17:00

■会場
 幕張メッセ

■入場
 無料(全来場者登録入場制)

■後援
 総務省、経済産業省(建制順)
 NHK
 一般社団法人日本民間放送連盟(JBA)
 一般社団法人電波産業会(ARIB)
 一般財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)
 一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)(順不同)

■主催
 一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)

■運営
 一般社団法人 日本エレクトロニクスショー協会(JESA)

(左)深谷氏、(右)江尻氏

(左)深谷氏、(右)江尻氏

(左)窪田氏、(右)小林氏

(左)窪田氏、(右)小林氏

吉井氏

吉井氏

会議に出席したeスポーツの関係者の方々

会議に出席したeスポーツの関係者の方々

#interbee2019

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