【NEWS】日本レコード協会 新年賀詞交歓会 「2020年東京オリンピック・パラリンピックへ向けた文化・芸術発展の牽引役に」

2015.1.7 UP

一般社団法人 日本レコード協会 斉藤正明会長

一般社団法人 日本レコード協会 斉藤正明会長

青柳正規 文化庁長官

青柳正規 文化庁長官

横尾英博 内閣官房 知的財産戦略推進事務局長

横尾英博 内閣官房 知的財産戦略推進事務局長

左)昨年の音楽産業実績、右)違法ダウンロード削除要請の状況

左)昨年の音楽産業実績、右)違法ダウンロード削除要請の状況

  一般社団法人 日本レコード協会は1月5日、東京・千代田区のホテルニューオータニ「芙蓉の間」において、新年賀詞交歓会を開催した。会場には1,000人を越える関係者が集まった。

■斉藤会長「定額制聴き放題、ハイレゾ配信に期待」
 同協会会長の斉藤正明氏が登壇し、冒頭、次のように挨拶した。
 「レコード産業を取り巻く環境は、常に変化をし続けている。少子高齢化、人口減少で、ヒット曲のメインターゲットの若者は減少傾向にある。デジタル化、ネットワーク化による情報拡散のスピードは増す一方だ。ユーザーの趣味趣向、世代間のギャップ、パーソナル化が進み、大ヒット曲が大変生まれにくい環境になりつつあると感じている。そんな中での昨年の映画『アナと雪の女王』のサウンドトラックの大ヒットは、世代を越え、共感を生み出せば、ヒットにつながるんだという、大いなる証明であったと思っている」
 「音楽配信市場では、定額制聴き放題サービスが今年からいよいよ本格的スタートの状況にある。さらに、高音質の音楽配信を求めるニーズから、ハイレゾ配信の伸張も大変期待できるところだ。ハイレゾに対応する機器の売り上げも好調なようなので、このチャンスを適確に捉えていきたい」
 「パッケージ市場を維持しつつ、配信市場を伸ばす。大変難しい命題だが、このスローガンを今年も継承しつつ、今年は『ネクストステージを切り開く一年』にしたい。協会会員社一丸となってこの難局を乗り切っていきたい」

■有料音楽配信が5年ぶりの前年度越え
 また、昨年の音楽産業の実績について次のように振り返った。
 「11月末時点でのパッケージの生産実績は残念ながら対前年比94%。昨年に続いてのマイナス成長となった。しかし光明もあり、有料音楽配信は10月末の時点でトータル104%。2009年以来、実に5年ぶりに年間で昨年を上回った。10月までのパッケージ・配信をあわせると、トータルで前年比95%になる」

■需要拡大、違法対策、海外展開など重点施策を掲示
 続いて今年、協会が取り組む重点施策として、「需要拡大施策」、「違法音楽ファイル、違法音楽配信対策」、「社会貢献事業」、「日本音楽の海外展開」などを上げた。
 「需要拡大施策」について、斉藤会長はまず、「日本の音楽市場の8割はパッケージ市場。世界の音楽市場を見渡しても、このようなパッケージの強い市場は他に例を見ない」とし、このパッケージ文化を維持するねらいから「ミュージックジャケット大賞」を実施することを紹介した。さらに、成長を続ける音楽ブルーレイディスクの商品カタログ発行、「CDショップ大賞」への協賛など、「パッケージ市場の活性化をめざした事業を、今後も継続して推進していく」と述べた。

■違法サイト削除要請件数が9カ月で74万件に
 「違法音楽ファイル・違法音楽配信対策」については、「私的違法ダウンロードの罰則化にかかる改正著作権法の施行」から2年が経過し「違法配信流通量は減少しているなど、一定の効果は得られている」と評価をした。しかし「昨今では、スマートフォンアプリを利用して海外のサーバーにアクセスさせて違法配布をするなど、手口が巧妙化しており、依然として違法配信の流通は後を絶たない」と指摘。
 違法音楽対策の専門組織として2013年4月に開設した「著作権保護・促進センター」(CPPC: Copyright Protection and Promotion Center)が、4月から10月までの9カ月間で実施した削除要請件数が「74万件に上っている」ことを紹介。「違法対策にかかる主権者の負担は大きいが、必要なこと。今後も積極的に取り組んでいく」ことを表明した。
 法改正の広報・啓発活動では、日本レコード協会など音楽関係7団体が組織した「STOP! 違法ダウンロード広報委員会」の活動内容を紹介した。今年で活動3年目に入るが、昨年は、小室哲哉氏の協力を得て制作した「啓発映像『GOOD CLICS CREATE GOOD MUSIC』」を、夏の野外フェスで上映したりYouTube、ニコニコ動画等に広告として出稿したという。タイトルの「GOOD CLICS CREATE GOOD MUSIC」は、正規のクリックが新しい音楽をつくるサイクルにつながるとの意味が込められている。
 また、映画の本編開始前に上映される、盗撮防止・違法ダウンロード防止のキャンペーン映像が、昨年10月末にリニューアルされたことを紹介。「映画館へ行こう実行委員会」の協力により、全国約3,300スクリーンで本編開始前に上映された。

■52年目を迎えるレコード寄贈事業 被災地域の図書館にも寄贈
 斉藤会長は「レコード産業が長年にわたり実施している社会貢献事業」として、「大学の寄付口座」と「レコード寄贈事業」の昨年の状況を説明した。
 「大学の寄付口座」はこれまで、1992年の青山学院大学から、早稲田大学、慶應義塾大学、立教大学、横浜国立大学と、対象となる学校を増やしており、新たに今年度、明治学院大学でも開講したことを紹介した。「次代を担う学生のみなさんに、コンテンツビジネスへの関心、知的財産著作権制度の重要性についての理解を促す場として、引き続き取り組んでいきたい」と述べた。
 「レコード寄贈事業」は、昨年で52年目を迎えた。寄贈先は、養護施設200カ所、臨時災害放送局7カ所、さらに、東日本大震災の影響で資料が不足している岩手、宮城、福島3県の図書館、計67カ所に合計8,500枚の音楽CDを寄贈した。

■海外プロモーション事業 複数国での開催に意欲
 「日本音楽の海外展開」について、斉藤会長は「日本のレコード産業にとっての悲願」と位置づけた。インドネシアのジャカルタで一昨年に開始した、日本音楽の海外プロモーション事業「J-Music Lab」は、昨年もジャカルタで実施。8月と11月の2回にわたり、人気イベントに参加し、日本アーチストのライブや現地マスコミ等とのプロモーション、ブースでのCD等の販売、業界関係者を集めたレセプションなどを実施。「大変好評を博した」という。斉藤会長は今後の海外展開について、「一層力を入れていく。さらに複数の国々で展開したい」と述べた。
 最後に、今年新たに開始する新人育成事業として、2月15日、NHKホールで開催するイベント「Coming Next 2015」を紹介した。「大変厳しい市場の状況のもと、レコード会社の原点である新しい芽を育てなければならないという思いから生まれた。当協会の正会員全17社の新人アーチストが一堂に会し、業界全体で新しいアーチストを応援していくといった姿勢を打ち出していきたい」と若手育成事業に期待をにじませた。
 最後に、「Next Stageを切り開く一年にしたいと申し上げたが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、音楽業界一丸となって盛り上げていく。協会としても以上のような重点分野で、さらなる攻めの姿勢を貫いていきたい」と述べて締めくくった。

■青柳文化庁長官「2020年へ向け、文化・芸術立国への取り組み強化」
 来賓として、文化庁長官 青柳正規氏が登壇し、次のように挨拶した。
 「文化の祭典でもある2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、我が国の文化・芸術は発展の好機を迎えている。中でも音楽は、私たち一人一人の生活が明るい笑顔で満たされ、心豊かで楽しい社会をつくり出すための活力源であり、人々の、そのときどきの思い出を刻み、喜びや潤いを与えてくれる力がある。成熟社会となった我が国において、音楽をはじめとする文化・芸術の果たす役割はますます大きくなっている。文化庁も、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、我が国が持つすばらしい文化・芸術の力で、世界中の人たちをひきつけるよう、文化・芸術立国への取り組みを強化していく」

 続いて、恒例の鏡割りが行われ、以下の業界団体関係者が樽を囲んだ。
 (鏡割りに登壇した来賓)
 文化庁 青柳正規 長官
 国立国会図書館 大滝則忠 館長
 内閣官房 知的財産戦略推進事務局 横尾英博 事務局長
 一般社団法人 日本音楽著作権協会 菅原瑞夫 理事長
 公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会 野村萬 会長
 一般社団法人 日本音楽事業者協会 堀義貴 会長
 一般社団法人 日本音楽出版社協会 桑波田景信 会長
 一般社団法人 日本音楽制作者連盟 大石征裕 理事長
 公益社団法人 日本作曲家協会 川口真 顧問
 一般社団法人 日本作詩家協会 喜多條 忠 会長
 一般社団法人 日本歌手協会 田辺 靖雄 会長
 日本レコード商業組合 門倉昭一 理事長
 全国レコード卸同業会 飯原博 会長
 一般社団法人 日本レコード協会 斉藤正明 会長

■横尾 知財戦略推進事務局長「音楽業界はコンテンツ産業の牽引役」
 鏡割りの後、内閣官房 知的財産戦略推進事務局長 横尾英博氏が乾杯の挨拶に立ち、「コンテンツビジネスの海外展開の推進は現在、大きい課題。またデジタルネットワーク社会への対応も重要な課題。こうした課題に対応する上で、音楽産業全体、あるいはほかの産業と連携して取り組んでいくことが大変重要。クールジャパンの主要なコンテンツは音楽。同時に、他の産業の牽引役、先兵ともなるべき重要な存在」と指摘。
 音楽産業の国際展開に関するタスクフォースでレコード協会副会長の重村博文氏に座長を依頼したことなどを挙げ、「音楽業界が日本文化の進化、そして、コンテンツの海外展開の原動力となることを期待する」と鼓舞した。
 このあと、来賓の国会議員も登壇し、横尾氏の音頭で乾杯が行われた。

一般社団法人 日本レコード協会 斉藤正明会長

一般社団法人 日本レコード協会 斉藤正明会長

青柳正規 文化庁長官

青柳正規 文化庁長官

横尾英博 内閣官房 知的財産戦略推進事務局長

横尾英博 内閣官房 知的財産戦略推進事務局長

左)昨年の音楽産業実績、右)違法ダウンロード削除要請の状況

左)昨年の音楽産業実績、右)違法ダウンロード削除要請の状況

#interbee2019

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