私が見た Inter BEE 2014 動向(その4)映像ディスプレイ、符号化技術・配信系

2014.12.16 UP

場内を圧倒する4K対応大画面LEDディスプレイ(ソニー)
国際会議場とブースを結んだ8KライブIP伝送(NHK-MT)

国際会議場とブースを結んだ8KライブIP伝送(NHK-MT)

高性能誤り訂正技術利用による次世代IP伝送技術(NTTグループ)

高性能誤り訂正技術利用による次世代IP伝送技術(NTTグループ)

4K放送で使われている4K/60p HEVC用コーデック装置(NEC)

4K放送で使われている4K/60p HEVC用コーデック装置(NEC)

初登場のIP配信向けQOSソフト”Zixi”(JVCケンウッド、DPSJ、共信コミュニケーション他)

初登場のIP配信向けQOSソフト”Zixi”(JVCケンウッド、DPSJ、共信コミュニケーション他)

 (その1)から(その3)まで、今大会の全体状況、多種多彩なカメラ関係、ファイルベース化進む制作系について書いてきた。(その4)では場内でひときわ目立った高精細度大画面ディスプレイと、デジタル時代をベースで支える符号化技術、コンテンツ配信系などについて概略を紹介したい。

 今回、随所で大画面超高精細ディスプレイが目についた。ソニーは国際会議場会議室の壁面一杯に、横14.5×縦3mの超ワイド大画面スクリーンを設置し、超短焦点レーザ光源プロジェクター4K SXRDTMを3台使い、解像度12K×2Kのワールドカップサッカー映像などを上映していた。競技場の観覧席で見るかのような臨場感と迫力に溢れていた。また自社ブースには300インチ位の4K対応LEDディスプレイを設置し、世界遺産番組やサッカー競技映像を映していた。LED素子のピッチが細かく、高密度で、精細度が高く、その場にいるかの迫力と臨場感だった(タイトル写真)。
 場内でひときわ目立ったのはCREATE LED(中国)の10m×5mの巨大なLEDディスプレイである。500mm角のモジュラー構造ユニットを組み上げ大画面を構成しているが、こちらも画素ピッチが細かく画面全体の画素数はQFHDである。滝のシーン、富士山や花畑、中国の景観などが上映され、遠方からでも人目を引いていたが、近くに寄って見ても画素構造がほとんど気にならず、映像に引き込まれ映像酔いすら感じ、臨場感と迫力は驚くほどだった。
 その他にも、アドビの8×4mのLEDタイプ、ヒビノの6.5×3.6mサイズでQFHD、60p、RGB444対応の大画面高精細LED、さらに共信コミュニケーションのSilicon Core(米)製の画素ピッチが1.5mmと高密度で画面サイズが5.7×3.2mのQFHD対応モデルなどが目についた。いずれも明るく高精細で、デジタルサイネージ、イベントやパブリックビューなどと利用範囲はかなりありそうだ。

 今回50周年を迎えたのと機を同じくして創立30年を迎えたNHK-MTは、各種8K.4Kディスプレイを使い多彩な超高精細映像を公開していた。最大の注目は「世界初の8K3Dシアター」で、DILAプロジェクター(JVC)を使い200”サイズのスクリーンにファンタジードラマ”WISH”を上映し大きな評判になっていた。その他、4K応用の有力な分野である医療に関して、4K 3Dにより撮影した脳外科手術の生々しい様子を映し、さらに縦型の4Kディスプレイを使いデジタルサイネージへの応用のデモをしていた。圧巻だったのは8K 3面を使った超ワイド大画面である。ワイド映像の撮影は方向を少しずつ変えて配置した3台のカメラを使い同期をとりつつタイムラプス撮影した映像を動画化し、98"直視型8K液晶ディスプレイ(BOE、中国)を3台使い表示していた。パブリックビューイングなど超高精細のワイド映像の活用法として注目される。さらに、これも初の試みの8Kライブ中継も注目された。コンベンションホールのメイン会場と第6ホールのブースをつなぎ、遅延が少なく非圧縮映像による8K60pのIPライブ伝送をしていた。ホール側の8Kカメラで撮影した映像信号は非圧縮映像伝送装置”QoolTornado QG70”(PFU)を使い光ケーブル経由で第6ホールに伝送し、同装置で8K信号に戻され、前述のBOE製8Kディスプレイで表示されていた。

 NTTグループは次世代IP映像伝送ソリューションとして、新開発の高性能誤り訂正技術を搭載したIPゲートウェイを使い、ネットワーク系でパケットロスがあっても高い伝送品質が確保できる技術を公開していた。マルチプラットフォーム向け動画配信サービス用に開発された高性能、高機能トランスコーダは、フルHD7CHのH.264トランスコード可能で次世代ストリーミング規格MPEG DASHにも対応する。さらに低ビットレートながら低遅延、高画質のH.264 IPコーデックを使い、同じIPストリームを異なる経路で伝送し、一方でパケットロスが発生したら瞬時に他方から欠損を補完する高信頼IP伝送システムの実演もやっていた。また4K/HD/SDフォーマット、50/59.94i/60pに対応するHEVCソフトウェアを搭載したデコーダを使い、422/10bitの4K60pストリームをデコードし4Kモニターに表示していた。
 NECは、デジタル化の大きな山を越え、やがて来る地上デジタル放送システムの更新を視野に、次世代マスター、バンク、営放システムで構成される統合型テレビ送出システムを提唱していた。また既に大きく展開している4Kに関する展示物として、Channel 4Kの試験放送で使われている4K/60p対応HEVC用エンコーダ/デコーダと開発中の2K HEVCコーデックを展示していた。またU HD規格がBT.2020になったことを受け、従来のHDの色域規格BT.709とBT.2020間の相互変換可能なカラリメトリーコンバータを展示した。さらに最大16波長のCWDMに対応し光ファイバー1本で16chの3G-SDI信号が伝送可能で、4Kを4素材あるいは8Kを1素材伝送可能な光波長多重伝送システムも公開していた。

 三菱電機は独自の符号化制御技術を駆使したHEVC/H.265コーデックによる小型化した8K対応エンコーダを展示していた。東芝は高画質化し視聴形態が多様化する放送メディア状況に応えていくため、次世代トータル送出ソリューションを提案し、実績高いフラッシュメモリーを搭載しコンパクトな”Videos neo”サーバを核にしたニュース送出、CATV送出、CMバンクサーバを提案していた。
 操業開始以来45年を迎えたNHKアイテックは安全・安心な社会に寄与する技術として、平常時は通常のWi-Fiアクセスポイントして行政情報や観光情報などを発信し、災害発生時に自動的にWi-Fi放送に切り替わり避難所や行政機関などに設置したアクセスポイントからマルチキャスト方式によりスマートフォンなど多くの端末に配信する「防災情報発信型Wi-Fiシステム」を公開していた。またNHKニュースや公共情報さらにオリジナルテキストなどをスクロール文字で情報配信、表示する電光表示器「多機能型デジタルサイネージシステム」も展示していた。緊急地震速報や津波警報が出ると自動的に切り替わり、日本語だけでなく英語、中国語、韓国語など7言語にも対応するそうだ。

 上記Wi-Fiシステムを共同開発したビレッジアイランドは、多種多彩なコーデック関係の出展をしていた。”STUDIO 4K”サーバは4Kのコンテンツ制作系のみならずパブリックビューイングやデジタルサイネージなどに使えるプレイヤーである。また放送サービスが始まりニーズが高まっているハイブリッドキャスト関連では、コンテンツ開発や制作現場で有用な試験装置”Hybrid Caster”を展示していた。さらに時代のニーズに沿う技術として、フランス国立視聴覚研究所INAと共同開発した動画共有サイトに違法にアップされたコンテンツを自動検出する著作権保護ソリューションも注目された。
 IP伝送が急速に普及する中、Zixi社のIPネット配信向けQOSソフト”ZIXI”が注目された。IBC2014でデビューしIBCアオードも受賞しにわかに注目され、今回のInterBEEでもJVCケンウッド、DPSJ、共信コミュニケーションブースなどで展示されていた。このソフトを搭載したカメラ映像をIP伝送に使うとネット環境が悪化しても安定的に伝送できるそうだ。

 以上、4回にわたりInterBEEに見た最近の技術動向について紹介してきた。放送、通信を取り巻く環境は急速に変貌し、求められる社会的ニーズも多様化し、それらを支える技術も大きく進歩、成長している。放送、通信メディアに大きな影響を与える東京オリンピックも間近に控え、4K、8Kそしてハイブリッドキャストなどソーシャルメディアとの関わりも一層増えていく。とどまることがない放送・情報メディアの展開、進展に大きな期待を寄せている。InterBEEが今後も寄与、貢献していくことを願いたい。
                              


映像技術ジャーナリスト(Ph.D.)石田武久

国際会議場とブースを結んだ8KライブIP伝送(NHK-MT)

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高性能誤り訂正技術利用による次世代IP伝送技術(NTTグループ)

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4K放送で使われている4K/60p HEVC用コーデック装置(NEC)

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初登場のIP配信向けQOSソフト”Zixi”(JVCケンウッド、DPSJ、共信コミュニケーション他)

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#interbee2019

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