【Inter BEE 2014】InterBEE Connected WrapUp トークセッション 放送は制作・伝送路・デバイスの串刺し。その串を抜いた議論を活発に!

2014.12.12 UP

 Inter BEE 2014で開催された新たな催しInter BEE Connected。三日間のセミナーの最後を飾るセッションは、アドバイザリーチームが全員集合。発案者である江口靖二氏を進行役に、Connected具現化にあたってサポートした日本テレビ・安藤聖泰氏、毎日放送・齊藤浩史氏、フジテレビジョン・塚本幹夫氏、NHK文研・村上圭子氏という、放送と通信の最先端で奔走してきた面々が、締めのトークとして三日間を振り返り、今後の動向について思いを語り合った。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境 治)

 まずはそれぞれが、Inter BEEについて、そしてConnectedについて雑感を語り合った。江口氏はオープニングのスピーチでも語った、海外の放送業界のイベントが変化を意識した特設コーナーをはじめているのを見て、日本でもその必要性を感じたという、Connected発案の動機をあらためて説明。塚本氏はフジテレビでネットでの事業に携わってきたからこそ、放送の高度化やインタラクティブかはどこまでつきつめるべきなのか、果たしてビジネスになるかが気になっていたという。村上氏も、多様な仕組みが実現してきた中で、サービスになるか、ニーズがついていくかについて埋めるべき溝があり、それを議論する場が必要だったとし、Connectedの重要性を感じたことを述べた。
 齊藤氏は、関西キー局を中心に実験を重ねてきたマル研(マルチスクリーン型放送研究会)の中心人物として、まさしく同じことを感じていたという。今回はConnectedの中でマル研を出展でき、一歩進んだ感触を得た。
 こうした意見交換の中で印象的だったのが、安藤氏の発言だった。「放送は、制作・伝送路・デバイスが串刺しになって常に一体で進化してきた。ところがネットをはじめ新しい技術が出てきて、伝送路もデバイスも多様になった。串刺しでしかとらえてなかった放送事業の、“串を抜いた”議論が必要なのだと思う。」串を抜く。これはいま議論の前提に必要な考え方を明解にする言い方だ。その後の議論の流れのキーワードとなっていった。
 議論は錯綜し、話題はあっちへ飛びこっちへジャンプしたので、レポートとしては各氏の印象的なコメントを取り出しておこう。
 塚本氏は初日のUSニールセン社エリック・ソロモン氏の講演に啓発されたことを話した。「C3(放送後3日間の録画視聴まで含めたCMの視聴率)は妥協の産物だった。CM視聴だけにお金を払いたいスポンサーに対し、テレビ局はだったら録画で見る分も入れたいと言って生まれた。いきなりは導入しにくいが、ニールセンのような視聴計測の進化は今後日本でも必要になる。計測の意味は、ビジネス価値を示すことにあるからだ」
 村上氏は、テレビがネットに融合するからこそ、社会的役割を再構築すべきではないかと問いかけた。「テレビには、見ようと思ってない情報も届けて人々に気づいてもらう公共的な役割があった。これまでの時間的な編成とは別に空間編成とでも呼ぶべき新しい編成が可能ではないかと思う。そのための場として、全局共通のSVODプラットフォームはできないものだろうか」
 齊藤氏は関西キー局らしい視点で主張した。「テレビは生活。放送局が生活の中でどう役立っているかは人によって違うし、キー局とローカル局でもかなり違うと思う。放送局とは何なのかを考え直すべき時だという気がする。議論しながら同じ“放送”という言葉を使いつつ違う“放送”を語っていないだろうか。」先ほどの安藤氏の“串を抜く”とも関係して、放送とは何かを再定義する必要はあるかもしれない。
 登壇者の話には、それぞれの放送への熱い思いがこもっていた。そしていま、放送の本来的な意義は何で、今後どう変化していくのか、それこそ“串を抜いた”議論をすべきタイミングであることがよくわかった。江口氏は最後に、Connectedを継続的に開催していきたいとの意志を表明した。InterBEE全体の来場者も今回は増えたそうだが、それは放送事業に新たな価値が出てきている証しだろう。Connectedの意義は来年以降ますます高まるに違いない。次回の開催に、期待したい。

#interbee2019

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