【NEWS】新生デジタルドメイン 人気映画「エンダーのゲーム」で共同プロデュースを担当

2013.11.5 UP

「エンダーズ・ゲーム」を上映するGrove Theater(米ロサンゼルス)

■ロゴ・マークをリニューアルしDigitalDomain3.0がスタート
 デジタルドメイン(DD)は破産処理完了後、「DigitalDomain3.0」として再スタートを切った。その後10ケ月にわたり、デジタルドメインの権利70%を保有してきた米国ギャロッピング・ホース(小馬奔騰)の親会社を、香港の上場企業サン・イノベーション・ホールディングス(奧亮集團)が7月末に買収。これによりDDはサン・イノベーションの傘下に入る形となった。ただし、残りの権利30%については、引き続きインドのリライアンス・メディアワークスが保持している。
 そんな経緯の後、ある日DDのホームページに突如として登場した新しいロゴ。「DigitalDomain3.0」の「D」と「3」をモチーフにしたデザインとなっている(http://digitaldomain.com/)。7月末に行われた新しい親会社の発表の後、いつの間にやら「ひっそり」と行われたらしい。筆者の同僚で、倒産前のデジタルドメインや、同社の黄金時代に勤務していたOBの意見を聞く範囲では、意外と不評であったが、新経営陣として「新しいDD」としてスタートする為には、ロゴ・マークのリニューアルによってイメージの一新を図ろう、というポジティブな狙いがあったのだろう。


■共同プロデュースを手がける映画「エンダーのゲーム」
 そのDDがVFXを担当した話題作、映画「エンダーのゲーム」(Ender's Game、国内2014年1月18日公開)が、11月1日より全米公開されている(上写真は映画「エンダーのゲーム」を上映する米ロサンゼルスのGrove Theater)。ハリソン・フォード主演のVFX大作だが、DDはこの作品に共同プロデュースという形で出資を行っている。
 85年に発表された同名のSF小説の映画化。Hugo賞、ネビュラ賞の両賞を受賞した話題作で、日本を含め、世界で多くのSFファンに読まれている。世界設定が壮大なことから、映像化されなかった。宇宙人を倒す戦士「エンダー」を務めるのは、映画「ヒューゴの不思議な発明」の主役を演じたエイサ・バターフィールド。ハリソン・フォードは、エンダーの育成役として出演している。

■プロデュースの正否に注目
 具体的な出資額は非公表だが、DDは倒産騒動のかなり前からビジネス面で「エンダーのゲーム」に出資し、並行してVFX制作を進めていた。これがある種、大きな資産価値となり、倒産処理がスムースに進むことを後押ししたという経緯もあった。
 もし「エンダーのゲーム」が大ヒットすれば、DDにも収益が配分される事になり、利益率が非常に低いVFXビジネスだけに縛られず、より大きなビジネス展開が望める事になる。
 DDは2000年前半、当時CEOだったスコット・ロス氏が中心となり、ハリウッド映画のプロデュースに参入していた時期があった。実際に映画「Secondhand Lions」が制作・公開されたが、大きな成功には結びつかなかった。また、広島の原爆とラブ・ストーリーを綴った映画「千羽鶴(A Thousand Cranes)」も企画されたが、制作資金の確保等から頓挫、その経緯はスコット・ロス氏の個人ブログで詳しく綴られていた。これ以外にも、在LAの著名VFXスタジオが映画のプロデュース(出資)として参加した例は複数あるが、いずれもビジネス的には大きな成功に繋がっていない。
 今回の「エンダーのゲーム」は話題作という事もあって、ビジネス・モデルとしても大きく注目されている。(ちなみに、「エンダーのゲーム」の冒頭に登場するDigital Domainのロゴは、変更になる前のオリジナル・ロゴだった)。
  公開最初の週末のBOX OFFICEで「エンダーのゲーム」は、みごと第1位に輝いたのだが、売り上げは、制作費$110million($1=100円の場合 約110億円)に対して、$27million($1=100円の場合 約27億円)と振るわなかった。
 ただ、第1位が$27millionしか売り上げなかったということは、この週は「人が映画館へ行かなかった」といえるかもしれない。ハリウッド映画の売り上げとして、最初の週末$27millionは「かなり低い数字」で、ビジネス的にはあまり喜ばしいことではない。来週月曜のベテランズ・デー(退役軍人の日)の連休、そして11月末の感謝祭の連休と併せて、どこまで売り上げるか注目される。
(鍋 潤太郎)








 

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