【コラム】1年で市場急拡大のプロジェクションマッピング 2年後に国内市場規模3000億円へ TDLが予算20億円でシンデレラ城に常設PMも 拡大契機はTOKYO STATION VISION

2013.12.5 UP

「TOKYO STATION VISION」(2012年9月)

「TOKYO STATION VISION」(2012年9月)

「TOKYO HIKARI VISON」(2012年12月)

「TOKYO HIKARI VISON」(2012年12月)

NECDS 小林氏

NECDS 小林氏

世界で初めてレーザー光源を採用したDLPシネマ・プロジェクター「NC1100L」

世界で初めてレーザー光源を採用したDLPシネマ・プロジェクター「NC1100L」

 情報ディスプレイ技術研究委員会の「第164回定例会」(委員長=小林駿介・山口東京理科大学液晶研究所所長)が去る11月1日、東京都新宿区の東京理科大学森戸記念会館で開かれた。今回はプロジェクションマッピング(PM)やデジタルサイネージ、レーザープロジェクターなどの大型映像ビジネスを中心に第一線の論客が登壇した。その中からNECディスプレイソリューションズ(NECDS)知的財産部シニアエキスパートの小林玲一氏および筆者の講演内容を紹介する。 (川田宏之)
(上写真は2012年9月末に実施した「TOKYO STATION VISION」)

 このコラムを担当する私自身、同委員会の主査を10年近く務めている。定例会では、ライターとしての活動で得た内容から、年間ごとにトピックとなるような情報をまとめて報告している。この1年間では、なんといってもPMが最も注目された。筆者が取材したPMの現場は20カ所以上を超えるだろう。そこで今回の定例会では、PMの現場取材で得た内容を中心に紹介した。

●1年で市場が急拡大 きっかけはTOKYO STATION VISION
 わが国のPMがこれほどまでに注目と人気を集めるきっかけとなったのは、2012年9月末に実施されたJR東京駅丸の内駅舎の復元記念イベント「TOKYO STATION VISION」である。東京駅を使っては、同年12月末にも「TOKYO HIKARI VISON」と題するPMイベントが開かれた。この2つのPMを混同している人もいるが、多くの関係者が「東京駅のPMをきっかけに市場が拡大した」と話すイベントは前者を指している。
 このPMはNHKエンタープライズが制作。プロデューサーの森内大輔氏は、PM業界でその名を知らぬものはいないほどの存在となった。2万ルーメンクラスの大型プロジェクターを46台も使用したPMイベントは、国内では「TOKYO STATION VISION」しかなく、世界的にも最大級規模であった。そこでこのPMイベントは、伝説的に語り継がれている。
 対して後者のPMイベントでは、プロジェクターを十数台使用。規模的には前者PMの1/3といったところだろう。予算規模も1/3以下と推測される。前者が東京駅駅舎のほぼ全体の壁面を使用したのに対して、後者は駅舎中央部分のごく一部の使用で、規模的にはごく一般的なPMと言ってよい。
 ただし前者の印象があまりにも衝撃的だったため、後者のイベントにも多くの人が押し寄せた。その結果、会期途中で中止を余儀なくされたという点では、その後のPM人気を象徴するイベントではあったと言えよう。
 この「TOKYO HIKARI VISION」を演出した映像作家の村松亮太郎氏も時代の寵児(ちょうじ)となり、今年10月に実施された東京国立博物館のPMで起用されている。村松作品のクオリティーの高さも森内作品に負けず劣らず高評価を得ている。
 このような経緯で注目を集めたわが国のPMは、1年余りで市場が急拡大した。12月のクリスマスシーズンには全国各地で10件以上の大規模なPMイベントの実施が予定されており、プロジェクターが足りなくなるほどの大人気だ。
 そして来年には東京ディズニーランドが20億円の予算をかけてシンデレラ城に常設PMを予定するなど、16年までには国内でも3000億円を超える市場規模に成長するものとして期待されている。

●NECDS レーザー式で10万ルーメンへ PMのコスト削減に貢献
 NECDSの小林氏は、PM上映を支えるプロジェクターメーカーの立場から講演した。発言の要旨は次の通りである。
 一般的に屋外のPMでは2万ルーメンを超える高輝度のプロジェクターが必要とされている。この高輝度を実現するためにはキセノンランプが主力であるが、高圧水銀ランプを使用した製品も昨年から登場している。現在、キセノンランプを使ったプロジェクターでは4万ルーメンまでの明るさの製品が実用化されている。さらにそれ以上の高輝度を実現するためには、レーザープロジェクターが有望とされており、10万ルーメンを超える明るさも可能である。
 「TOKYO STATION VISION」では、2万ルーメンのプロジェクター46台を使い事前の調整が大変だったが、10万ルーメンクラスの高輝度プロジェクターが実用化すれば、おそらく10台以下の台数で東京駅クラスの大規模PMを実現する。調整時間の大幅な短縮が可能となり、コストの大幅削減が期待できる。
 高輝度レーザープロジェクターの課題としては、レーザー製品の安全性が問われている。レーザー光を直視した場合、目にダメージを与える可能性が大きく、安全規格が現在国際的に論議されている。またレーザー光の映像を長い時間見た場合に目の疲労といった問題も指摘されている。

■NABで5000ルーメンを披露 各所に納入実績も
 今のところ5000ルーメンクラスまでであれば、大きな危険性はないとされており、ソニーからは4000ルーメンのレーザープロジェクターが主に大学をターゲットにした商品として今年の夏に発売された。
 NECDSでは、5000ルーメンの4K解像度のレーザープロジェクターを業界に先駆けて開発。4月のNABショーで披露した。既に国内出荷も一部市場向けに開始しており、バーチャルリアリティーシステムなどで導入実績がある。高解像度、広色域、ランプの長寿命などが高い評価を受けており、特殊な業務用途であれば十分に市場性があることが立証された。

■米プリズム社はスキャンレーザー方式のリアプロを商品化 低消費電力がうり
 また、米プリズム社が発売しているスキャンレーザー方式のリアプロジェクターも商品化されている。この製品は25型のレーザー光源使用リアプロジェクターを1ユニットとしてマルチ配列して大型映像化したもので、消費電力の低さが売り物だ。
 同様な製品としては米クリスティ・デジタル・システムズが製品化している「マイクロタイル」があるが、こちらはレーザー光源ではなくLED光源を使用した製品である。
 いずれにしてもレーザー光源を使用したプロジェクターは、水銀レスで低消費電力であることから『エコの時代』を象徴した製品としても期待されており、今後の市場拡大が大いに期待されている。
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「TOKYO STATION VISION」(2012年9月)

「TOKYO STATION VISION」(2012年9月)

「TOKYO HIKARI VISON」(2012年12月)

「TOKYO HIKARI VISON」(2012年12月)

NECDS 小林氏

NECDS 小林氏

世界で初めてレーザー光源を採用したDLPシネマ・プロジェクター「NC1100L」

世界で初めてレーザー光源を採用したDLPシネマ・プロジェクター「NC1100L」

#interbee2019

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