【NEWS】ドキュメンタリー映像に関するビジネスマッチング・セッション「アジアン サイド オブ ザ ドック」が開催

2012.3.23 UP

会場となった電通ホール
北海道テレビ放送編成局の沼田博光氏

北海道テレビ放送編成局の沼田博光氏

 ドキュメンタリー映像に関するビジネスマッチングのためのセッション(ピッチセッション)「アジアン サイド オブ ザ ドック」(運営:バンプロダクション)が、3月17、18日、東京・汐留の電通ホールで開催された。映像業界関係者約500人が集まり、メディアの売買に関するさまざまな討議が行われた。今年で三回目の開催となる。


■米国のドキュメンタリー映像市場は16億ドル

 初日は、ドキュメンタリー映像の国際共同製作のための実務を習得するプロデューサー向けのマスタコースが開催された。同イベントの運営を行っている制作会社でシンガポールに拠点を置くバンプロダクションの代表バン・ケイコ氏は開会の挨拶に立ち「日本には大変すばらしいドキュメンタリー映像が数多く製作されている
我々は、これを世界に輸出する手助けをしたい」と述べた。

 アジアン サイド オブ ザ ドックスは、世界のドキュメンタリー映像に関するセッションである「サニー サイド オブ ザ ドック」のアジア版。今回は、サニー サイド オブ ザ ドックスのジェネラル・マネージャー、イブ・ジャヌー(Yves Jeanneau)氏も来日した。ジャヌー氏は、ドキュメンタリー映像製作の全体像を示し、「常にストーリーとストーリーテリングこそが最重要である」ことを何度も強調した。また、エピソードとして、同氏がかつてノーマン・メイラー氏に自身のドキュメンタリー映像製作を申し出をしたことを披露。そのときジャヌー氏は、ノーマン・メイラー氏に「私はあなたの映像を撮りたいわけではありません、あなたと一緒に映像を作りたいのです」として了承してもらった事を紹介した。
 コンサルタントのピーター・ハミルトン(Peter Hamilton)氏は、米国のドキュメンタリー映像は16億ドルの市場規模にあり、国際共同製作に積極的ないくつかのチャンネルの予算枠や考え方を具体的に例示した。また映像には、目立つキャラクター、高い問題意識、珍しい人物や物へのアクセスそして課題の解決という4つの柱が必要と語った。
 米国サンダンス基金のブルーニ・ブレス(Buruni Burres)氏は、世界中にある政府系以外のドキュメンタリー製作向けファンドの紹介を行った。同氏もまた国際的に共通のテーマを持って力強さを備えたストーリーテリングの重要性を強調し、資金を得るためのピッチクリップの事例として、コンゴで性犯罪に立ち向かうため法律家を目指す女性姿を描くオランダ人の作家のクリップと、中国内陸部での子供と両親の間にある家族の葛藤を描いたカナダ系中国人作家のクリップの二例を紹介した。


■NHK 日韓共同製作のドキュメンタリーを披露

 NHKのBS世界のドキュメンタリーでチーフプロデューサを務める今村研一氏は日韓共同製作のドキュメンタリー作品で、韓国在住の生まれながらにして目と耳が不自由な男性とその男性を支える健常者の女性を描いた「僕はカタツムリ」の作家との出会いや資金調達、両国でのポストプロダクションに至る製作の過程を紹介した。
 翌18日は同じくプレイベントとして総務省の震災復興政策の一環で世界に向けて日本の風評被害を払拭する目的で発信されるドキュメンタリー映像の「東北ピッチセッション」が行われた。本製作は必ず国際共同で製作されることが条件であり、午前中はすでに国外提携先が決定している6社のピッチが行われた。会場前部に座る国外プロデューサから、製作の視点や作品の結末、ローカライズの可否、尺変更の可否など盛んな質問が飛んだ。この中で、北海道テレビ放送編成局の沼田博光氏は、日韓の国際結婚夫婦で韓国の夫または妻だけが災害で生き残った2家族の悲しみとそれに打ち勝つ力強さを表現した In The Westlandという作品のピッチを行った。これは悲劇を知った韓国在住の映像作家が震災直後に来日して同社と共同し120日にも及ぶ取材を45分にまとめる予定とのこと。
 

■震災復興の現場を映像化する事例が紹介

 午後はまだ提携先が見つかっていない国内10社の制作会社によるプレゼンテーションが行われた。
 この中で、CBCクリエーションは被災し主人を失ったり避難所に連れて行けない犬を軸に震災の悲劇と生き残った犬の生命力を映像化する「Abandoned-Beloved Pets After Disaster」を紹介した。
 きさくや社は震災発生から家族の安否を確認する間の無く震災報道という仕事に邁進したテレビの報道記者や支局長、新聞社の記者などの活躍をサイドストーリーと共に映像化する予定である、と語った。
 仙台放送は震災復興に際した建造物を著名な建築家と一緒になって復旧ステージから実行するArchi+Aidと呼ばれる活動のパイロット事業を映像化の予定とした。
また仙台放送エンタープライズは甚大な被害を蒙った三陸沿岸の養殖牡蠣とフランス牡蠣との関係を軸に、日本オイスター協会を立ち上げた佐藤智也氏をメインキャラクターにした復興の活動を取り上げる予定と語った。
 テレビ東京は、千葉で農業を営む農家兼ロックミュージシャンの脇氏を取り上げ、彼が東北の農業再生に向けて活躍する姿を映像化する予定とのこと。

北海道テレビ放送編成局の沼田博光氏

北海道テレビ放送編成局の沼田博光氏

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