【NAB SHOW 2011】デジタルシネマサミット報告 (1)

2011.4.12 UP

映画「Yogi Bear」の制作陣
ソニー・エレクトロニクスのAndrew Stuck

ソニー・エレクトロニクスのAndrew Stuck

 デジタルシネマの報告会として知られるデジタルシネマサミットが、今年も展示会開催前の週末である4月9日、10日に開催された。今年のサミットは、初日に3D関連の話題を集め、2日目(10日)はデジタルシネマの今後に向けた報告がなされた。


★3D映画「Yogi Bear」の制作担当者が講演

 初日の午前中、3D映画制作側からの報告として2010年12月公開の「Yogi Bear」(邦題:ヨギ&ブーブー わんぱく大作戦:東日本大震災のため公開中止)の制作技法が監督のEric Brevig氏、VFXスーパーバイザーのBetsy Paterson氏、Head of Digital ProductionのJohn Nicolard氏から解説された。実写とCGを組み合わせた同作品について、Brevig監督は「3Dでやってはいけないと言われているルールのすべてに従う必要は無かった」「ルールを破った方が、実在感を増すこともある」「3Dは難しかった。しかし、3Dにより観客はヨギとブーブーがそこにいると信じられる」と制作の感想を語った。


★厳密さが求められる立体映像撮影

 Paterson氏は「カメラが生成するメタデータは信頼が置けず、別途データを取る必要があった」として「(特撮時に作成する)3Dモデルは、2Dの際よりも厳密に作る必要があった」と制作の苦労を明かした。Nicolard氏は、撮影やデータ蓄積はHDCAM SRが使われたことを明かし、一昨年撮影の映画でも信頼性が高いテープが使われていることを証言した。


★昨年末までに7万人の加入を記録した英Skyの立体テレビ「Sky 3D」 

 テレビ番組については、3Dチャンネルを持つ英SkyのチーフエンジニアであるChris Johns氏が番組構成などを説明した。2010年4月3日にパブ向けにスポーツ番組を対象に始まったSky 3Dは、同年10月1日に一般向けの放送が始まり、昨年末の段階で7万加入を得ているという。Sky HDの加入者は無料でSky 3Dを視聴できる。

 Sky 3Dでは、一日15時間の放送が行われ、これまでに150時間以上のスポーツ番組を流した。また、100以上の3D中継を行っている。これらの経験に基づく、制作上の要点をJohns氏は示した。

 3Dの収録とポストプロダクションについては、ドキュメンタリー作品の制作経験を持つPLF社のPhil Streather氏が解説した。屋外でのライティング、カメラの移動など現場経験者ならではの詳細な解説が行われた。


★バーチャル・プレビズにより3D映画制作を効率化

 初日、午後のセッションでは、VFXスーパーバイザーにして監督でもあるRob Legarto氏が基調講演を行い、バーチャル・プレビズによる効率化が語られた。同氏は、「見かけ倒しでない3D、遊園地用ではない3Dが増えている」と3D映画の状況に支持を示した。

 この後、標準化の進展状況報告、家庭用3Dテレビに関するパネルディスカッションなどが行われた。家庭用3Dテレビは当初予測ほどは売れていないが、家電各社は楽観的な姿勢を見せた。現在の問題点は、高価で会社間で互換性がない3Dメガネ(シャッター方式)にあるとして、この点の改良が話題となっていた。いずれも、道筋が見えているといい、今年はメガネ価格が低下すると見られる。((2)に続く)

(写真キャプション:上から)
Yogi Bearの制作陣(左からEric Brevig監督、 Betsy Paterson氏(VFXスーパーバイザー)、John Nicolard氏(Head of Digital Production))

スポンサー企業のソニー・エレクトロニクスから挨拶したAndrew Stucker氏はCine Alta Nightのプロデューサーとしても知られている.スポンサー挨拶として、同社がスポンサーとして5年目になることが明かされた後、震災、津波、そして原発事故に苦しむ日本への見舞いの言葉が述べられた。

ソニー・エレクトロニクスのAndrew Stuck

ソニー・エレクトロニクスのAndrew Stuck

#interbee2019

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