【企業における映像マーケティング活用最前線】フォーシーズ ニコニコ動画に「@ピザーラチャンネル」を開設「コンテンツへのコメントは重要なユーザー接点」

2009.10.6 UP

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金曜昼に生放送している山本Uの「今日のごはん何にしよう!?」

金曜昼に生放送している山本Uの「今日のごはん何にしよう!?」

<<ニコ動に公式チャンネル開設 ピザの実食生放送など多彩な企画>>

 全国で宅配ピザチェーン「ピザーラ」を540店舗以上展開するフォーシーズ。同社では2009年4月より、動画コミュニティサービス「ニコニコ動画」において公式チャンネル「@ピザーラチャンネル」を開設している。

 ユーザーからのコメントを参考に新しいピザ作りにチャレンジしていくメイン企画やピザの実食生放送、他の番組とのコラボ企画などを展開している。

 狙いはユーザーとの接点を深めていくこと。メイン企画ではユーザーから様々なコメントを募り、通常のメニューにはない“コラボピザ”を商品化した。

 今後は根付きつつあるユーザー接点をどう販売促進につなげていくかが課題だという。


<<ネットのプロモを重視 手作りの素人らしさが好評>>

 宅配ピザ業界ではテレビCMや折込チラシといった従来の宣伝方法に加え、ネットを活用したプロモーションを重視する動きが高まっている。

 若年層を中心としたテレビや活字離れが加速する一方、生活の中でネットが深く浸透し、接触時間も拡大を続けているからだ。店舗へのオーダーもネットを利用するケースが増えつつあるという。

 そうした中、フォーシーズでもネット戦略を重視。2009年4月に動画コミュニティサービス「ニコニコ動画」において、コメント欄に「@ピザ」と書き込むと、ピザーラのインターネット注文ページが開くサービスを開始した。

 ニコニコ動画は配信されている動画に対して、ユーザーが感想や突っ込みなど様々なコメントを投稿できるのが特徴。
 コメントの投稿によってユーザー同士が交流し、盛り上がれるところが人気のポイントだ。同社がキーワードに「@ピザ」を押さえた理由にはネットでのオーダーを喚起する狙いがあった。

 しかし、そもそもピザを食べたいという気にさせなければ、キーワードの入力も見込めない。

 そこで同社はユーザーとの接点をつくり、コミュニケーションを促進する手段としてニコニコ動画に公式チャンネル「@ピザーラチャンネル」を開局。「@ピザ」によるキーワード展開と並行して、手作り感のある動画コンテンツの配信を開始した。

 「4月1日に配信した開局の挨拶はまさに手作りコンテンツ。出演者は山本U、福崎という社員二人を@ピザーラチャンネル局員に仕立て、撮影はロジクール製のWebカメラで行いました」
 「映像に関してはまったくの素人なので音割れしている上、編集の仕方がわからず、8分もある映像をそのまま公開しました」とフォーシーズ マーケティング本部 常務執行役員 副本部長の竹内 伸介氏は振り返る。

 案の定、コメントには「編集しろw」「目立ちすぎて目障り」「うんざり動画」など辛辣なコメントが投げつけられた。
 その一方、視聴回数は延べ1万回以上に及んだ。竹内氏は「突っ込みどころ満載の情けなさ加減が受けたのかもしれません」と苦笑する。

 映像そのものはチープでも、コメントを介してユーザーと接点を持つことができ、コメントによってコンテンツがさらに面白いものになっていく―。最初の経験でそんな感覚を実感できたという。

 その後、何作か制作会社にコンテンツ制作を委託したが、コスト的な負担が大きいことから、原点に立ち返り、自社制作に切り替えた。
 コンテンツの更新は視聴者に飽きられないようにと週2回を目標に、ユーザーからのコメントをもとに新しいピザ作りにチャレンジしていくメイン企画「ニコニコラボピザを作ろう」を中心に、著名人などが実際にピザを食べる実食生放送、他の番組とのコラボ企画などを展開していった。


<<面白く、正直なコンテンツが受ける>>

 特に「ニコニコラボピザを作ろう」の企画は4月の開局からユーザーのコメントを募り、試行錯誤を繰り返してきた。なかには商品化できない失敗作もあったが、そこに至るプロセスもコンテンツとして公開。

 実際にコメントを参考にしたピザ作りが行われていることを訴求し続けた。
 そうした中から、実際に商品化にこぎつけたコラボピザが「夏のスパイシーカレー ~激辛ハバネロソース付き~」だ。
 「ユーザーのコメントはトータルで500件ほど寄せられました。なかでも目立ったのが夏に向けて味付けに辛さを求める声でした」(竹内氏)。

 それをもとに社内で検討を重ねた上、同企画に登場していた夏野剛氏とひろゆき氏のアドバイスをもとに考案。
 コラボピザは実際に6月6日から全国で発売を開始した。それに合わせて同日18時には夏野剛氏とひろゆき氏が出演する実食生放送を実施した。

 どんなピザが登場するか、両氏からどんな感想が飛び出すかといった期待感も手伝い、生放送では1万5000人以上が視聴した。

 また「@ピザ」と入力してネットから注文してくれたユーザーの中には新規顧客の割合が高かったという。興味や関心が実際の購買に結び付いたケースも少なくなかったようだ。

 ただし、コラボピザはあくまで話題づくりの一環。定番メニューの1つに加えるつもりはないという。実際、販売は9月1日までの期間限定で終了した。

 「重要なのは、ユーザー参加型のコンテンツを継続して提供していき、飽きさせない工夫」と竹内氏は語る。またやらせではなく、正直にやることが大切だという。「企業の理屈で押し付けてくるコンテンツやメッセージは見透かされ、ユーザーに抵抗感を抱かせてしまうようです」と竹内氏は分析する。

 人気があるのは、生放送やピザ作りにチャレンジするコンテンツ。
 これらはユーザーの反応も良く、多くのコメントが寄せられるが、キャンペーンの告知などにはあまり反応がないという。

 「ニコニコ動画の特性から、突っ込みを入れたくなるようなコメントしやすいコンテンツが受け入れられやすいようです。キャンペーンの告知ではコメントのしようがないのでしょう。その意味で、辛辣であろうとコメントがあるのはうれしいこと。コメントはそのコンテンツに対する愛情の表れなのだと思います」と竹内氏は話す。


<<自然発生的なコラボ企画も>>

 一方、ニコニコ動画に公式チャンネルを持ったことで、自然発生的なコラボ企画も広がりを見せている。

 「例えば、タレントの臼田あさ美さんがVJをしているスペースシャワーTVの生放送『スペチャ!』の番組内でピザーラをデリバリーするという企画が立ち上がり、@ピザーラチャンネルの出演スタッフが同番組に進出。人気タレントにピザをお届けする模様を@ピザーラチャンネルのコンテンツとして配信しました」(竹内氏)。

 そこで見られる素人ならではのリアクションがユーザーの関心を呼んでいる。他の番組とコラボレーションすることで、コンテンツの幅が広がり、プロモーション効果も期待できそうだ。

 現在「@ピザーラチャンネル」では合計50本以上のコンテンツがアップされ、延べ視聴回数は約23万3000回、寄せられたコメント数は約2万1000件に上る。

 これまでのところ、売上の拡大につながる目立った効果は表れていないというが、@ピザーラチャンネル自体はユーザー接点を目的として継続していく予定。
 特にユーザーの反応が良い生放送ものを強化していく計画だ。その一環として、9月2日に@ピザーラチャンネルをリニューアルし、毎週金曜の昼に様々な企画を織り交ぜながらピザーラの宣伝を行う、山本Uの「今日のごはん何にしよう!?」の放送を開始した。

 「さらに将来的には『@ピザ』というコメントでインターネット注文ページに誘導するだけでなく、会員制サービスや電子クーポンの導入なども考えています」と話す竹内氏。
 継続的なコンテンツ提供でユーザーとの接点をより深めるとともに、それを販売促進にどうつなげていくかが今後の課題といえそうだ。

金曜昼に生放送している山本Uの「今日のごはん何にしよう!?」

金曜昼に生放送している山本Uの「今日のごはん何にしよう!?」

#interbee2019

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