【NAB SHOW 2010】NAB オープニングセッション 新会長 ゴードンスミス氏が登壇 ソニー 吉岡副社長も講演

2010.4.14 UP

NAB会長のゴードン・スミス氏
ソニー 吉岡副社長

ソニー 吉岡副社長

マイケル・J・フォックス氏

マイケル・J・フォックス氏

宇宙からの挨拶もあった

宇宙からの挨拶もあった

★ゴードン・スミス会長、デビュー
 12日午前9時よりラスベガスヒルトンホテル内バロンルームにて「NAB2010オープニングセッション」が開催され、NABのゴードン・スミス会長が初めてNABショウに登場した。
 オレゴン州選出の共和党上院議員として2期国政に携わった後、昨年11月にNAB会長に就任した。会長就任後初のNABショウとなる今回の状況報告演説が注目されていた。
 NAB理事長のスティーブ・ニューベリー氏に「技術通」と紹介されたスミス会長は、上院商務委員会への所属経験に加えて、上院ハイテク・タスクフォースの委員長を務めていた。登壇したスミス会長は、法律を作る側としての経験と人脈を語り、自身がNAB会長として適任であることを強烈に印象づけた。また、同会長は共和党員ではあるが、民主党にも多くの知己を得ていることを示し、民主党政権下でも共和党員の会長であることが問題とならないことを印象づけていた。このような自己紹介の後、現在の米国放送業界が抱える問題について、ラジオにおけるレコード利用への課金問題(「パフォーマンス・タックス」(実演権料課金))、テレビの周波数返還問題、再送信問題をあげた。
 パフォーマンス・タックスについては、ラジオの慣行に反するとして、実演権料の課金に断固反対するとした。講演では、現在の提案では半額をレコード会社の収入となる点をあげ「レコード業界は、苦境に陥ると訴訟で解決しようとする」と業界のありかたを批判した。
 テレビの周波数返還問題は、FCC(連邦通信委員会)が、ブロードバンド普及のためにテレビ用に割り当てられている周波数帯域の返還を求める意向を示したことで問題化している。スミス会長は「制度改革、技術開発を尽くした上で帯域幅が不足しているのならば協力は惜しまない。しかし、テレビ放送事業者を、いくらでも周波数を渡せる存在と思って欲しくない」と政府への十分な説明を求めた。同時に「制度設計の間に技術が進歩し、制度の方が時代遅れとなる」と96年通信法に見られた問題を指摘した。今回は、初登場ということもあって、強い言葉で反対は唱えず方向性示すに留まった模様だ。

★ソニー吉岡副社長、マイケル・J・フォックス氏登壇
 スミス会長の講演に続いて、ソニーの吉岡浩執行役副社長が基調講演を行った。吉岡副社長は、これまで家電、半導体事業を担当していたが、4月から新たにプロフェッショナル(放送機器)事業も担当となった。
 吉岡氏は「ソニーはレンズからリビングルームまでお手伝いする」として、撮影から視聴まで、コンテンツの流れの各段階で3D用の製品が揃っていることを示した。3D映像は、ソニーイメージワークスが担当した「Alice in Wonderland」などの映画の他、先日ジョージア州オーガスタで開催された「マスターズ・ゴルフトーナメント」などが上映された。注意深く設計された映像は、3D映像の持つ臨場感を伝えるのに十分なものであった。
 最後に吉岡氏は、同社が米CBSと共同で一般視聴者の3Dへの反応を調査する「ソニー/CBS 3Dリサーチセンター」の開設、映像制作者向けの3D研修施設「ソニー3Dテクノロジセンター」の開設がアナウンスされ、ソニーが3Dの普及のために製品以外の分野でも努力している様子が示された。
 吉岡氏の基調講演に続いて、功労賞の贈呈が行われた。今年は、俳優で篤志家であるマイケル・J・フォックス氏に贈呈された。同氏は、自身も患者であるパーキソン病の治療法研究を支援する財団(マイケル・J・フォックス・パーキンソン研究財団)を設立し、運営している。この贈呈式にフォックス氏が出席し、病気を押して短いながらも記念演説が行われた。

★解説〜色合いを変えた開会行事〜
 NABショウの開会行事は、ゴードン・スミス新会長が就任した今回、大きく色合いを変えた。従来、午前9時ちょうどに米国国歌が流れ、来場者が起立し国歌を斉唱することでこの行事は始まっていた。また、2001年の同時多発テロ以降は、いわゆる「愛国心」を強調した演出がなされ、冒頭に従軍牧師の説教が行われたり、国旗関連の行事が行われてきた。今年は、このような国家に関する行事は一切行われなかった。
 また、冒頭に国際宇宙ステーション(ISS)からのメッセージが流されたことも従来にない種類の演出である。メッセージは、ティモシー・J・クリーマー飛行士(NASA)と野口聡一飛行士(JAXA)から送られた。内容はNABショウへ祝辞を送ると共に、NASA-TVが今秋からHD化されるというものであった。この映像の撮影は、日本のモジュールであるJEMと欧州宇宙機構のコロンブス・モジュールの間の「ハーモニー」区画で行われており、国際協調が進む様子が画面からも示された。
 このような変化が、新会長の方針であるのか、それともNABショウを国際行事として扱うためのものであるか、意図は不明である。しかし、何らかの変化がNABショウに起きていることは確実である。
 スミス会長は、放送業界のメッセージを強く政官界に伝える必要がある時期に就任した。同会長が議会での経験、議会の友人の名前などを挙げながら講演を行った背景には、自身が「正しい資質」を持っていることを開会行事出席者やNABメンバーに伝えたいという意図があったと見られる。また「廊下の反対側」(反対政党)の表現をもじった「廊下の両側」との表現で、民主、共和両党に知己があることを示し、ワシントンD.C.での活動への自信を示した。
 ただし、聴衆の反応はやや鈍く、「わき上がる拍手」や「熱狂的な反応」ではなく「思い出したように一斉になされる拍手」であった。聴衆も、新会長にどのように反応するべきか間合いを測っているかのようであった。(映像新聞 論説委員 杉沼浩司)

ソニー 吉岡副社長

ソニー 吉岡副社長

マイケル・J・フォックス氏

マイケル・J・フォックス氏

宇宙からの挨拶もあった

宇宙からの挨拶もあった

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