米国プレビジュアライゼーション・ソサエティーが設立 ハリウッドで第１回大会が開催

■プレビズのアーチストや技術者による集まり

　５月８日、米国カリフォルニア州ハリウッド近くのホテルで、第１回年次大会が開催された。主催は、プレビジュアライゼーション・ソサエティー（以下プレビズ・ソサエティー）。
　プレビズとは、映画制作の初期工程において、複雑なシーンや重要シーンなどを低解像度のＣＧ映像で作成すること。プレビズによって、スタッフが完成映像のイメージを共有したり、必要な機材や制作工程を確認することができる。作業の効率化を図り、予算の低減や追加コストの発生を防ぐのに役立っており、ハリウッドでは映画のみならず、ゲーム制作の一環にも取り入れらている。
　ソサエティーは、プレビズ制作に携わるアーティストや技術者が主なメンバーとなり、１月に発足。プレビズに関わる知識や経験を分かち合い、世界にプレビズの概念を広めていくことを目指している。

■映画「スター・ウォーズ」プレビズで予算を低減
　大会の冒頭、ハリウッドの著名プロデューサーやプレビズ・ソサエティーの創設者らのコメントを収録したビデオが上映された。
　映画「スター・ウォーズ」シリーズのプロデューサーとして知られるリック・マカラム氏はビデオの中で、映画「スター・ウォーズ エピソード３／シスの復讐」（05年）について、「プレビズ制作に２年以上の歳月をかけた。プレビズ制作だけで百万ドル以上を費やしたが、おかげで本編の制作効率が飛躍的に向上し、１千万ドル以上のコストを低減できた」と述べた。

■会員数６００人に
　プレビズ・ソサエティーの創設者の一人で、ソサエティーの会長であるコリン・グリーン氏はソサエティーの会員はすでに６００人を超えていると報告。「20年以上前から存在していたプレビズへの理解は、まだ不十分。重要な工程なだけに今後の啓蒙活動が非常に重要である」と強調した。
　プレビズ・ソサエティーの創設者の一人であるクリス・エドワーズ氏はソサエティー内に委員会を設置する予定を明らかにした。メンバー拡大委員会、教育委員会、技術委員会、規格委員会などを作り、各委員会の委員長を募る。

■完成度の高いハリウッドのプレビズ映像
　セッションでは、映画「インクレディブル・ハルク」（08年）や、テレビゲームのプレビズ映像が紹介された。「インクレディブル・ハルク」のプレビズはスクリーンを上下に分け、プレビズ映像と完成映画の映像を比較上映した。
　映画「インクレディブル・ハルク」のプレビズ映像は完成度の高いＣＧ映像で、映像のレイアウトやカメラワークは、映画の最終映像とほとんど同じであり、本編がいかにプレビズに忠実に制作されたかが伺えた。

■映画全体の知識が要求されるプレビズ制作
　クリス・エドワーズ氏は、プレビズ専門プロダクション、ザ・サード・フロア（THE THIRD FLOOR）社の創設者である。２００４年、ルーカスフィルムのクリエイター５人で、ロサンゼルスにサード・フロア社を創立。現在は、約50人のプレビズアーティストを抱える。
　エドワーズ氏は、プレビズのクリエイターが要求される能力について、次のように説明する。
　「プレビズは動く絵コンテのような役割を持ち、制作工程に関わる人々のガイドラインとなる。プレビズアーティストやプレビズ・スーパーバイザーとなるには、アーティストとしての才能だけでなく、監督などと意思の疎通を図る高いコミュニケーション能力が要求される」という。「私たちはゼネラリストと言われることもある。映画制作のすべての工程を理解していないとプレビズアーティストにはなれない」（エドワーズ氏）。
　ダン・グレゴア氏も、プレビズ・ソサエティー創立者の一人。グレゴア氏は、ジョージ・ルーカスのもとで映画「スター・ウォーズ」などのビジュアルエフェクトアーティストの経験を持つ。２００３年に独立し、ハロン・エンターテインメント（HALON ENTERTAINMENT）社を設立した。グレゴア氏によると、プレビズは現在、比較的解像度の低いＣＧで制作されているが「近い将来、より解像度の高いプレビズ映像をリアルタイムで制作できるようになる」という。「そうなると、細かい演出までも、プレビズで共有することが可能になり、映画の制作にとってより大きな役割を担うことになる」（グレゴア氏）。

　プレビズ・ソサエティーの活動は、ウェブサイトprevissociety.comやツイッターprevissocietyを通して知ることができる。

［写真上から］
・第一回 年次大会のもよう
・創設者の一人、クリス・エドワーズ氏
・創設者の一人、ダン・グレゴア氏