私が見た"NAB SHOW 2010"における技術動向(その3、カメラ・ディスプレイ編)

2010.5.10 UP

P2HDカメラニューモデル(パナソニック)
HDCAM ニューモデル(ソニー)

HDCAM ニューモデル(ソニー)

ALEXA(アリフレックス)

ALEXA(アリフレックス)

一眼レフカメラ(キャノン)

一眼レフカメラ(キャノン)

液晶型映像モニター(池上通信機)

液晶型映像モニター(池上通信機)

(その2)では、今回のNAB最大のトピックスだった3D関連の動向について記した。本号では3D用も含めますます性能・機能アップするカメラおよび映像モニター関連の技術動向について見てみたい。

 世界各国で定着しているテープレスカメラ、デジタルシネマ・3D用や特殊用途に使う高速度カメラなど、カメラは例年ながらNAB展示の華であり、各社から様々なモデルが出展されどこのブースでも見学者の関心を集めていた。
 パナソニックは世界的に高い納入実績を上げているP2HDシリーズカメラレコーダのラインナップを拡充した。従来、撮像素子にCCDを使っていたが、今回、新開発の1/3"型フルHDのMOSセンサーを採用したニューモデルを出した。1/3"と小形素子ながら従来のハイエンド機種に迫る高感度、高画質を実現した。コーデックとしてAVC-Intraを採用、1080、720のマルチフォーマットに対応し、機動性も向上し利用範囲が広がる。また、業務用のポストHDVモデルとして、デジタル一眼カメラ規格のマイクロフォーサイズに対応する大判の4/3"イメージセンサーを搭載したAVCCAMも参考展示し注目を集めた。多様なカメラレンズが使え、35mmフィルムカメラ同様の被写界深度と画角を低コストで実現できる。前号に記した3D用2眼式カメラは、撮像素子として1/4.1"、約207万画素、3MOSをL/R用に2基、記録メディアに2枚のSDメモリーカードを搭載、1080、720両フォーマットに対応し、レンズ、カメラヘッド、レコーダが一体化され、約2.8Kgと軽量で機動性が高く、世界各国から3Dコンテンツ制作用に引き合いが高いそうだ。
 ソニーはハイエンドのカムコーダHDCAM-SR(テープメディア)にS-35mm相当単板CCDを搭載し、PLレンズマウントに対応するバージョンアップモデルを出展した。シネカメラ並みの被写界深度(ボケ味)が実現でき、多様なシネマ用レンズが使え、一層利用範囲が広がる。また記録メディアに"SxS"メモリーカードを使う小型カムコーダXDCAN EXのニューモデルとして、ハンディ型に加えショルダー型を出し、スタジオカメラ用にも使えるように周辺装置も整備し、同シリーズのラインナップはますます充実されることになった。さらに小板CMOSセンサーを搭載した小型ハンディ型の業務用カムコーダもでていたが、センサーの構造を工夫し低照度下でも低ノイズの高画質で、独自開発の小形レンズながら高性能で広角撮影ができ、手ブレ防止機能も有し、様々な分野での利用が期待できそうだ。
 池上通信機は従来モデルより性能アップしたハイエンドのHDTVカメラに加え、着実に実績を上げているフラッシュメモリーを使うGFシリーズ、さらにニューモデルとして撮像素子に3CMOSを搭載したワンピースモデルおよび超小型フルHDカメラを出展した。またGFカムを並行に2台並べた3Dカメラ、超小型カメラをハーフミラーで合成する3Dカメラも並べていた。日立国際電気は、主力のドッカブル構造(カメラヘッドと記録部・インタフェース部を柔軟に組み合わせ可能)のスタジオ用カメラ、新製品の業務用低価格モデルおよびボックス型小型カメラなどを出展した。また、スポーツ中継などのワイヤレスカメラにも使え、コーデックにH.264を使い超低遅延のデジタルFPUも展示していた。

 デジタルシネマが定着しつつある状況下、様々な用途に使える特殊スペックのカメラも数多く見られた。アストロデザインは昨年のInterBEEに参考出品した4Kカメラの実機を展示し、JVCは以前より小型、コンパクト化した4KカメラをKDDIのブースで4Kライブ中継用信号源として使っていた。また産業・学術分野で実績あるVISION RESEARCH(米)は、フルHDの超高速カメラと解像度が4Kの可変速撮影可能なデジタルシネマカメラなどを出展していた。例年、デジタルシネマ関係で話題を呼んでいる"RED Digital"は、今回NABには出展せず別会場のホテルで特別セミナーをやった。会場は人の波であふれ、お目当ての4K"RED One"カメラなどの見学もままならないほどの盛況さで、さすがレッドの集客力はすごいなと感じいった。レッドの機器は本会場でも幾つかのブースで見られたが、セミナー会場では機器だけでなく、それらを使った制作の実演やコンテンツも公開されていた。
 シネカメラの老舗ARRI(独)は、これまで独自路線でフィルムカメラライクなデジタルカメラを出していたが、今回、ニューモデル"ALEXA"を出展した。同社にとって久方ぶりの新機種のデビューと言うことで連日セミナーを開き、ブースでの実機の展示も大変評判になっていた。撮像素子には新開発の35mmフィルムと同等サイズのCMOSセンサンーを搭載し、シネマチックな浅い被写界深度が得られ、レンズマウントはPL方式で多くのシネカメラ用レンズが使え、解像度は3.5KでHD/2K/DI(Digital Intermediate)に対応し、低ノイズでダイナミックレンジが広くフィルムルックの映像が得られると言った特徴を持っている。このような機能、性能を持つ上に、小型軽量、堅牢な構造で、映画、テレビを問わず大いに活躍しそうだ。
 最近、新たな映像表現法として一眼レフデジタルカメラで動画を撮影することが増えている。今回のNABでもムービー機能を持つモデルやそれらに使う様々なカメラリグやアクセサリーが"RED Rock Micro"や "Abel Cine"など多くのブースで展示されていた。また一眼レフカメラやHDTVカメラ用レンズなどで世界的に高い実績を持つキャノンも、大判で高精細度のイメージセンサーCMOSを搭載し、解像度がHDTV/SDTVに、フレーム数が30/24コマに対応するEOS Markシリーズのカメラとそれらに装てんする多彩なレンズ、リグ類を出展した。さらに今回は、ファイルベースのデジタルムービーカメラも出展したが、撮像素子に約207万画素、1/3"型3板CMOSを使い、フルHD映像をMPEG2でCFカードに記録し、高画質、高機能ながら小型・低価格のカメラで、業務用途での幅広い利用が期待される。同社のシアターでは、これらのムービーカメラと一眼レフカメラで撮った動画を編集した映像を上映していたが、どのショットがどちらのカメラで撮られたのか判別しにくいほどのできだった。このようにデジタルカメラで動画像を撮る動きはプロの間にも広がっており、静止画と動画撮影の境目が低くなっている流れが感じられた。

 高精細、高画質時代になり、番組制作、送出段階において映像品質をしっかり管理する映像モニターはますます重要になっている。従来から使われてきた高画質のCRTは既に製造中止になっており、制作現場では在庫品を延命使用している状況で、今回のNABでも多くの企業から後継映像モニターとして数々の液晶型モデルなどが出展されていた。
 映像モニター老舗の池上通信機は、豊富なランナップにマルチフォーマットで従来以上の高画質を実現した中型の液晶マスターモニターを加え、さらに優れた動画応答と色再現性の良い高精細液晶パネルを搭載した大型の型映像モニターも並べた。最近、InterBEEなどにも映像モニターを出展しているJVCは、今回、IPSパネルを搭載し高画質化したニューモデルの中型液晶モニターを並べたが、制作現場で使いやすいように、画面内に映像だけでなくベクトルスコープや映像波形も表示できるものである。
 ソニーは映像モニターとして、従来モデルに加え3D対応の大型業務用モニターを展示した。さらにシーテックに出展し評判になった有機EL型について、民生用モデルの製造は中止したと伝えられているが、今回、7.4"モニターを展示し、同サイズのCRT、液晶型と並べ、暗部の再現性、コントラストなど有機ELの画質の優位性を強調していた。有機ELは薄くて軽量、自発光型で輝度が高く明るい環境下でも視認性が良いため、カメラのビューファインダーに向いており、カメラコーナーではスタジオカメラやポータブルカメラに実装し公開していた。また、広視野の5"液晶を使い小型、軽量、低消費電力で操作性も良いビューファインダーを実装したカメラも一緒に並んでいた。
 ドルビーは最近発表され評判になっているプロ用液晶型リファレンスモニターを、3Dシアター横の小部屋で他社モデルと並べ見せていた。大型で全色域にわたり高いカラーコントラストと深い黒レベルを実現し、厳密な色再現作業を必要とする制作現場での利用を想定しているそうだ。"TV logic"(韓)はブースいっぱいに高画質大型4K LCDを筆頭に中型の高画質LCDモニター、ソニー製よりひと回り大きい有機ELモニター、さらに3D対応の有機ELモニターなどを並べていた。

(映像技術ジャーナリスト 石田武久)

HDCAM ニューモデル(ソニー)

HDCAM ニューモデル(ソニー)

ALEXA(アリフレックス)

ALEXA(アリフレックス)

一眼レフカメラ(キャノン)

一眼レフカメラ(キャノン)

液晶型映像モニター(池上通信機)

液晶型映像モニター(池上通信機)

#interbee2019

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