【コラム】スーパーハイビジョンはハイフレームレート化するか

2010.6.21 UP

 5月27日から29日までNHK放送技術研究所の一般公開が行われた.技研が10年後の試験放送を開始を目指すスーパーハイビジョン(SHV)の研究開発も順調に進展している様子が見てとれた.今年は,3300万画素のSHV用カメラヘッドとCCUが既存のハイビジョン用カメラケーブルで結ばれるなど,着実な進歩が見られた.映像公開では,フィギュアスケートやマラソンといった種々の条件下での映像が用意されており,SHVの可能性を見せるのに役立っていた.


■近距離から視聴するように設計したSHV

 その公開された映像であるが,今後のSHV規格に向けて重大な示唆をのぞかせていた.SHVは視距離が0.75H(Hは画面の高さ。ハイビジョンの場合は3H)という極めて近距離から視聴するように設計されているが,これでは「動画ボケ」が非常に目立つのである.動画ボケとは,液晶のように次のフレームまで同じ光量で画像を表示(投射)し続けるデバイスによる画像を見た場合,網膜への蓄積効果が生じることで画像のぼけを感じる現象である.昨今のハイフレームレートTV(120Hzまたは240Hz)はこの現象を抑えるためのものだ.


■フレームレート向上で動画ボケ回避

 昨年までの研究年報では,このぼけの回避のためにシャッター速度を高めることと,その際の副作用無き撮影手法の研究が行われていることが示されていた.今年の研究年報では,これら撮影時のテクニックによる回避ではなく,フレームレートを高めるという根本的な解決策が示されている.

 SHVでは,これまで毎秒60フレーム(順次走査)が用いられてきた.長らく放送界で用いられて来た飛び越し走査から順次走査に転換することだけでも大きな変化であるが,加えて『60』からも解放される方向が見えてきた.映像関係機材は長らく『60』と『フィールド』の2つのキーワードの周りを回っていたが,いよいよ新しい次元に突入することになりそうだ.

(映像新聞 論説委員 杉沼浩司)

【写真 上から】
 1:カメラヘッドとCCUを光ケーブル1本で結んだ今年のモデル.CCUには収差補正,フォーカスアシストなどの機能が内蔵されている.
2:SHVは,Dシネマよりも広い色域を採用する

#interbee2019

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