【NAB SHOW 2010】「3D元年」の動き、NAB SHOW 2010でも放送機器需要は2010年、プラスに転じる

2010.4.22 UP

パナソニックのツインレンズ搭載3Dカムコーダー

NAB SHOW 2010の入場者数は、主催者によると8万8000人に達した。08年に10万人をヒットしたものの、09年に不況の影響で8万3千人に落ち込んだ。しかし、今年は景気回復を先取りし、入場者が再び増加に転じたのは、うれしいニュースだ。

会場も活気にあふれていた。その活気をけん引していたのが、「3D」だったのは間違いない。
昨年10月、千葉・幕張のCEATECで、パナソニック、ソニーなど日本メーカーが、家庭で楽しめる3Dシステムを一斉に発表。追って今年1月、ラスベガスのコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)では、日本勢に加えて、サムスン電子、LGエレクトロニクスなど、北米への最大のテレビ供給者である韓国勢も大々的に3Dテレビを展示した。
同時に、テレビ局側も、3Dをサポートする発表を次々に打ち出した。ディスカバリー・コミュニケーションズは、「ディスカバリー・チャンネル」が、カナダの3D映画事業会社IMAXと提携し、2011年にも3D放送を始める。また、北米で圧倒的な人気を誇るスポーツ専門チャンネル「ESPN」も、3Dチャンネルを立ち上げ、今年6月開催されるサッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会を中継する計画を明らかにした。
これを受けて、NAB SHOW 2010では、3Dの映像制作をサポートする機器やシステムが一斉に紹介された。

パナソニックは、CESでは天井からつるして来場者の映像を撮影していたツインレンズ搭載の3Dカムコーダーを、今回のNAB SHOWでは、仮設スタジオの前にずらりと並べ、来場者が実際に撮影して見られるようにしていた。実際に撮った映像は、3Dになるため、モニターを見るために3D用のグラスをかけて確認しているカメラマンたちが、後を絶たなかった。

ソニーは、3ality Digital(スリーアリティ)社と提携し、中継車として大型トレーラーを会場に設置。車内で、撮影した3D映像を収録し、どう中継するのか、プロセスをすべてみせた。
このほか、NHKコスモ・メディア・アメリカ(本社ニューヨーク)とNHKメディアテクノロジーの「3DHDプロダクション・サービス」の展示も話題を呼んでいた。特別に開発した2台の3Dカメラを並べ、ニューヨークの風景を映したビデオをみせていた。

メディアテクノロジーは、3DHD撮影用の中継車も日本で発表。3Dカメラの開発は1985年から続けているという。両社は、プロダクション関係者に、独自開発したテレビ番組・映画撮影サービスの提供を提案していた。

ラスベガス・コンベンション・センターの一部には3Dコーナーが設けられ、関連のサービスや企業が小さなブースを並べていた。
ユニークだったのは、Blufocus(ブルーフォーカス)社。「3D」映像制作者に対し、視聴者に悪影響を及ぼさない3D映像の作り方をガイド、コンサルする会社だ。同社が展示していた3D映像は、手前に樹木がある、通りの風景で、宣伝文句が3行書かれている。これは、3Dグラスをかけて見た途端にくらくらと眩暈がするような「悪い例」。なぜかというと、手前の樹木があまりにも浮き出ているほか、3行に渡る宣伝文句が、それぞれ異なる奥行きを持っているためだという。
昨年大ヒットした3D映画「アバター」をみて、気分が悪くなる観客もいたという。医療関係者によると、人間の目が3D映像をみて、脳に伝わるプロセスというのは、今までの日常生活ではなかったために、3D映像を長くみると、具合が悪くなるケースはあるという。
映像業界としては、不測の事故を防ぎ、3Dの定着を図るためにも、こうした教育やガイドラインは不可欠だ。

最後に、放送機器業界の今年の見通しについて触れる。
会期中にアナリスト説明会を行った米D・I・Sコンサルティング社によると、放送機器関連メーカーの売上高は09年、前年比で14%減少。しかし、10年は4.8%増に転じると予測している。2けた増ではないものの、放送事業者が新たな投資を始めるとみている。
また、10年の人気商品はカムコーダー、サーバーなどで小型化、低価格化が進み、スタジオ用カメラなど大型なものの需要は伸び悩むとみる。

放送事業者の機材に対する投資が復活するという根拠は、スポット収入が増加に転じるという予測が出ているためだ。テレビジョン・ビューロー・オブ・アドバタイジング(TBA)によると、米国ローカル局のスポットは前年比1-3%増、ネットワーク局では6-12%増、ローカル・ネットワーク合わせた業界全体では3.6-6.1%増に転じる。
こうした業界全体の状況が、縮小したとはいえ、今年のNABショーが活気を取り戻した背景だ。

ジャーナリスト 津山恵子

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津山恵子(つやま けいこ)
東京生まれ、ニューヨーク在住。元共同通信社経済部記者。現在、『AERA』『週刊ダイヤモンド』に執筆するほか、『ウォール・ストリート・ジャーナル日本版』にコラム「ワシントン雑記帳」を連載。日中は、CNBCとCNN、夜はケーブル局のドラマチャンネル「TNT」「USA」を横目で視聴。
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