中継スタイルを変えるソニーの「ロケーションポーター」 レンタルサービスも魅力

2007.11.9 UP

ソニーから魅力的なシステムがリリースされた。FOMAやブロードバンド回線がつながるエリアならどこからでもテレビ中継ができる「ロケーションポーター」というものである。この新しい中継システム、数年後にはテレビ局などには欠かせないものになるという予感がする。

 それはFOMAやブロードバンド回線がつながるエリアならどこからでもテレビ中継ができる「ロケーションポーター」というシステムである。この新しい中継システムは、数年後にはテレビ局などには欠かせないものになるという予感がする。
 このシステム、簡単に言うと、FOMAや有線、無線のLANを使って今までにないクオリティの高い映像や音声を、現場から直接送ることができるものである。さらに魅力なのが、携帯性のよさである。ノートサイズのパソコンとカメラさえあれば、現場からすぐに映像と音声を送ることができる。
 テレビのニュースで現場からの中継映像が流れるが、実はこの「中継」というのが、テレビ局で働くスタッフたちの頭を悩ませるシロモノなのである。通常テレビで中継を行う際、まず現場に中継車を運ばなければならない。この中継車から中継受信設備のあるポイントまで電波を飛ばす(FPU)か、衛星に電波を飛ばす(SNG)のどちらかが必要になる。

 この時の問題が、人員の確保である。

 どんなに少ない人数で中継をこなそうとしても、記者やカメラマンなど最低でも6、7人のスタッフが必要で、スポーツイベントなど規模が大きくなれば、100人単位で人員が必要になる。また、災害現場からの中継ともなると、途中道路が寸断されていることも多く、現場まで100kg近い荷物をマンパワーだけで運ばなければならないこともある。都会で起きた事件などは現場からすぐに中継を行うことができても、人口が密集していないエリアや、「阪神・淡路大地震」「新潟中越大地震」などのライフラインが切断された場合など、どうしても最初の数時間はヘリコプターからの空の映像に頼るしかなかった。(もちろん空からの映像の利点もかなりあるが……)

「いかに早く現場に到着し、今、そこで起きている現実を視聴者に伝えていくか」が命題の放送界で働く我々にとって、「ロケーションポーター」は、その問題を解決してくれる大きな手助けになろうとしている。

「ロケーションポーター」の優れているところは、とにかく機動性を重視した設計である。現場に持っていくものは、DVカメラと送受信映像を処理する専用のソフトが内蔵されたポータブルパソコン、そしてあとはLANケーブルかFOMAが2台。これだけで現場から映像や音声を送ることができる。これなら、記者が一人で現場に行っても中継を行うこともできなくはない。

 また、FOMAが2台接続できるのもミソで、回線が不安定になりがちな状況でも、2回線を同時に使用するため、バックアップ体制をとることができる。また、ソニー独自のクオリティ・オブ・サービスによって、独自のアルゴリズムで最適な伝送レートを自動で選択し、一部データが欠落した場合でも、あらかじめ送信側がパリティデータを付加することにより、欠落したデータを復元できる仕組みも組み込まれているため、実用度が高い。

 気になる映像の解像度だが、自社開発のH.264/AVCエンジンは、MPEG-2の半分以下の伝送レートで高画質化することに成功している。

 現在、放送業界で使用されているFOMAを使った中継は、解像度がお世辞にもいいとは言えない。画面の4分の1以下で放送しているが、それでも人物や建物がかろうじてわかる程度で、カメラを動かそうものなら、ストロボアクションの映像のようになってしまい、1分も見ようものなら目が疲れてしまう。それに比べて今回のソニーの技術は一目瞭然。画面いっぱいに拡大してもほとんどストレスを感じないのである。この驚きは是非ともInter BEEの現場でご覧になっていただきたい。もちろん、音に関してはソニーのオーディオ製品に搭載されている、オーディオ信号を16の帯域に分割して、各帯域に最適な状態にしてくれるATRAC3plusを搭載しているので、自然でクリアな音を伝送することができる。これだけの機能があれば、コンサートやイベントのみならず、教育現場や監視活動の分野でも活躍しそうだ。

 また、このシステムには「チャット機能」もついている。これがあると、原稿の確認や、現場の状況説明などの細かいやり取りもでき、中継をよりスムースに行える。たとえば、ニュース番組で現場から記者がレポートを行う際、記者のしゃべりが終わってもなかなかスタジオに映像が切り替わらない時があるが、これでは記者のレポートがそこで終わりなのか、まだ続くのか判断に困ってしまう。その時、このチャット機能を使って記者があらかじめレポートの最終コメントを事前に送っておけば、スタジオで操作しているスタッフもタイミングよくスイッチングができる。簡単な機能ではあるが、こういったところにも「さすが業界を知っている」と感心させられる。

 近年の放送界ではハードの技術の進歩が目まぐるしい。しかも2011年から本格的に始まる地上波デジタル放送へ向け、在京局はもちろんのこと、地方局も莫大な設備投資を行っている。そんなテレビ業界の懐具合を察してか、ソニーはありがたいサポート体制を作ってくれた。

 それはこの新製品のレンタルシステムである。プロ用の機材は当然ながら購入するにはかなりの資金が必要である。せっかくFOMAやLANを使っての伝送ができても機材を揃えるのにある程度資金が必要だと、なかなか即断で購入とはいかない。ましてや減価償却が終わらないうちに新製品や新システムが生まれる昨今においては、どうしても経営陣は慎重にならざるを得ない。しかし、「ロケーションポーター」一式を2週間149,800円(12か月レンタルだと月83,000円)でレンタルすることができるならそんなに悩むことはなくなるはず。この金額なら、ポストプロダクションでも最先端の技術を持つことが可能である。

 このレンタルシステムのサービスはソニーが提供し、ソニーファイナンスインターナショナル(以下SFI)が営業窓口となって行われるもので、万が一不具合が発生した場合、即座に代替機を納入してくれるため、いつでも安心して使用することができる。さらにSFIは電源供給など、「ロケーションポーター」の機動力をさらに高めるロケ車(ロケバス)のリースも行っている。車を維持するのはそれだけでもコストのかかるものである。それを車検などを含めたメンテナンスや、冬用タイヤの交換やジェネレーターのリースまでも含めて面倒を見てくれるので、いつでも安心して扱うことができる。

 このほか、ソニーファイナンスインターナショナルとソニープロテクノサポートの共同開催ブースでは、「ロケーションポーター」とロケ車に加え、LEDディスプレイの展示や機器導入をサポートする様々なファイナンスソリューションの紹介、またフルHDの4倍を超える解像度を持つSXRDプロジェクターによる4K映像の上映も行われる。

(現役TVディレクター)

#interbee2019

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