私が見たInter BEE 2010技術動向(その2、カメラ関係)

2010.12.6 UP

ハイエンドカムコーダ(ソニー)
P2 HDカメラレコーダ(パナソニック)

P2 HDカメラレコーダ(パナソニック)

フィルムライクなカメラ「ALEXA」(ナック)

フィルムライクなカメラ「ALEXA」(ナック)

高速度カメラ「Phantom」(ノビテック)

高速度カメラ「Phantom」(ノビテック)

一眼レフムービーカメラ(キャノン)

一眼レフムービーカメラ(キャノン)

 (その1)では、今大会の全体状況、併催行事の各種イベントの概要について述べた。本号ではInter BEEの華ともいえ、成長やまないテレビカメラの動向について見てみたい。

 ハイビジョンをベースにするデジタル放送、映画界に起きているデジタルシネマの進展に伴い、高画質、高機能のハイエンドカメラへの要求が高まる一方で、ファイルベース化が進む制作環境と親和性が高いテープレスカメラ、また厳しい経済状況に応えるような低コストで小型コンパクトなモデル、さらにはデジタル一眼レフカメラによるムービーと言うように、テレビカメラは多様化が進んでいる。さらに3D元年が標榜され、映画界だけでなく放送界、産業界においても3Dコンテンツの制作が盛んになり、3D対応のカメラ開発も急速に進んでいる。このような映像メディア環境、状況に応えるように、今回のInter BEEにおいても国内外の多数のメーカーから多種多様なカメラが出展されていた。それらの中から主な出展モデルについて概要を紹介してみよう。

 ソニーは、今回、テレビドラマやCM、映画制作に使うハイエンドカメラとして、スーパー35mm相当の単板ストライプ構造CCDを搭載し、シネカメラレンズも使えるニューモデル(HDCAM-SR)を出展した。フィルムカメラ並みのボケ味と暗部からハイライトまでの優れた階調再現性、広いダイナミックレンジ、その上、1~50コマの可変速撮影もできる。既に高い実績を上げているメモリーカムコーダも、一層性能を向上させた。フルHDのCCD3板式で、SxSメモリーカードにMPEG HD422で記録でき、増えつつあるMXFファイルベースの制作環境とそのままリンクすることができる。さらに、低価格小型軽量のデジタルシネマカムコーダも出展した。新開発のスーパー35mmサイズのC MOS単板を使い、PLマウント構造で、高感度、低ノイズのため低照度下での撮影も可能となり、小型軽量、低消費電力で機動性も高い。従来のハイエンドモデル(F35)に比べ、低予算での映画、ドラマやミュージックビデオの制作などに活躍しそうだ。

 パナソニックは、豊富なラインナップに、今回ミドルクラスのP2メモリーカードカメラレコーダを新登場させた。ハイエンド機と同じ2/3"CCDを使い、AVC Intra 100で10ビット・4:2:2、高感度と高SN比を実現した。重量、消費電力も軽減され、高機動性で利用範囲が広がる。またAVCCAMシリーズとして、デジタル一眼レフカメラ規格(マイクロフォーサーズ)準拠の4/3"単板MOSセンサーを搭載したカメラレコーダを出展し評判になっていた。従来のCMOSに比べ、光利用率が高く、低ノイズで広いダイナミックレンジと自然な階調再現性が得られる。35mmフィルムカメラ同等の被写界深度と画角を実現し、豊富なレンズが使用でき、記録素子にSDメモリーカードを採用し、H.264コーデックで、HD、SD、映画の24pのマルチフォーマットに対応する。さらにフルハイビジョンムービーが可能な一眼レフカメラ・ルミックスも出展された。1600万画素MOSセンサーを使い、約0.1"の高速AFで60iおよび24pでの撮影、記録ができる。多彩な交換レンズが使え、写真とビデオの境界がますます低くなりそうだ。

 テープレスカメラの老舗の池上通信機は、今回も記録メディアにフラッシュメモリーを使うテープレスカメラGFCAMを出展した。2/3"230万画素CCD3板を使い、MPEG2 422P@HLコーデックを採用し、記録メディアのGFPAKは16、32、64GBが用意されている。高感度、高画質な上、本体重量は4.5kgで機動性、運用性が高く、ドラマ制作やENG用に適している。また今回は、新製品の16ビットフルHDのハイエンドモデルと小型コンパクトなボックス型モデルなども展示していた。

 日立国際電気は、(その4)で後述するスーパーハイビジョンカメラに加え、同社特有のドッカブルカメラ(カメラヘッドと記録部・インタフェース部を柔軟に組み合わせられる構造)、参考出品のフルHDプログレッシブカメラ、新製品のコンパクトなボックス型HDカメラを出展した。NECは最近標準テレビカメラの出展はあまり見られないが、220万画素3板CCDを使い軽量・ポータブルなフルHDの高感度カメラを展示した。近赤外撮影モードを装備し、自動感度調整、自動追従ホワイトバランス機能も有し、長時間の中継撮影などでもフルオートで対応できるそうだ。

 ナック・テクノロジーは、ARRIのフィルムカメラライクな"ALEXA PLUS"を中心に各種カメラ、レンズ、アクセサリーを出展した。撮像素子に35mmフィルムと同等サイズで新開発のCMOSセンサンー(解像度3.5K)を使い、シネマチックな被写界深度が得られ、PLマウントでシネカメラ用レンズが使え、HD/2K/DI(Digital Intermediate)に対応する。低ノイズでダイナミックレンジが広くフィルムルックの映像が得られ、カメラデータが記録保存でき、3D撮影用に2台のカメラをシンクロさせることもできる。小型軽量、堅牢な構造で、映画、テレビを問わず様々な分野で活躍しそうだ。またNHKと共同開発の高速度カメラ"Hi-Motion"も展示した。220万画素CMOS3板式、フルHD対応で最大600コマ/秒の高速撮影が可能で、プログレッシブ走査のため映画やテレビドラマ、CGとの合成でも高品質のスロー映像が得られる。

 ノビテックは、Inter BEE常連のVISION RESEARCH(米)の各種ハイスピードカメラ"Phantom"シリーズを出展した。世界各国でスポーツ中継や映像制作に使われており、今回エミーショーを受賞したそうだ。最新モデルは新型センサー(画素数2560×1440)を採用し、感度が約6倍アップし、フルHDで24P・30Pのノーマル速度から1/3~83倍速の可変速撮影が可能である。また高画質の33倍速モデル、さらに90倍速の高感度モデルも並べていた。また2台のPhantomカメラをハーフミラー式リグに実装し、高画質の3Dスロー映像も公開していた。

 アストロ・デザインは小型コンパクトな4K試作カメラを出展した。1.25"単板CMOS(890万画素)を搭載し、有効画素はQFGA(3840×2160)でHD-SDI Dualにも対応、今回初登場の小型・軽量の2K非圧縮のSSD(Solid State Drive)レコーダと組み合わせ、様々な映像分野での利用が期待される。また上位モデルの4KSSDレコーダを使えば、4K映像を1台で録画再生でき、4台を同機運転すれば8Kのスーパーハイビジョン映像にも対応できる。放送、映像業務分野で実績あるフォトロンは、今回も多彩な機器、システムを出展していたが、その中でカメラ関係としては、単板CMOS(画素数2048×2048)で、フルHDで33倍速の高速撮影ができるカメラを出展した。内蔵メモリーを持ち、収録後すぐに高画質のスロー映像を再生でき、スポーツ番組、CM、映画制作などで効果的映像表現が実現できる。また、このカメラを2台、3Dリグに装填した3Dカメラの実演もやっていた。

 HDTVカメラ用レンズや一眼レフカメラなどで世界的に高い実績を持つキャノンは、今回、小型コンパクトでファイルベースのデジタルムービーカメラを出展した。撮像素子として、画素数約207万、1/3"型3板CMOSを使い、MPEG2でフルHD(4:2:2)をCFカードに記録する。小型・低価格ながら高画質、高機能で、業務用カメラとして幅広い利用が期待できそうだ。また今回は大判で高精細度のイメージセンサCMOSを搭載し、解像度がHDTV、SDTVに、フレーム数が30/24コマに対応する動画撮影機能を持つ一眼レフカメラEOSムービーと多彩なレンズや様々なリグ類も並べた。上述したパナソニックからも出展されていたが、最近、新たな映像表現法として一眼レフデジタルカメラで動画を撮影するのが増えている。今後の展開が注目される。
                             
(映像技術ジャーナリスト 石田武久)

P2 HDカメラレコーダ(パナソニック)

P2 HDカメラレコーダ(パナソニック)

フィルムライクなカメラ「ALEXA」(ナック)

フィルムライクなカメラ「ALEXA」(ナック)

高速度カメラ「Phantom」(ノビテック)

高速度カメラ「Phantom」(ノビテック)

一眼レフムービーカメラ(キャノン)

一眼レフムービーカメラ(キャノン)

#interbee2019

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