CEATEC JAPAN 2007に見るデジタル放送視聴・記録技術動向

2007.10.19 UP

エレクトロニクス業界最大のイベント「シーテックジャパン」が10月2日~6日、幕張メッセで開催された。放送と通信、パソコンとAV機器がボーダーレスとなる中「見える、感じる、デジタルコンバージェンス最前線」をテーマに、多種多彩な最新技術が公開された。来場者の大きな関心を呼んでいたのは、デジタル放送の進展にあわせ、進展目覚しい薄型テレビFPDや次世代DVD、ユビキタス社会に向けたモバイル端末や次世代ネットワーク(NGN)などだった。

FPDについてはプラズマ、液晶テレビ両タイプともフルハイビジョン化が主流になり高精細・高画質になっている。従来、50インチ以上はプラズマ、それ以下は液晶と大まかに棲み分けされていたが、昨今の技術進歩に伴いいずれのタイプも大型化へのシフトが進んでいる。各社の出展状況を見るとシャープの液晶テレビの108インチ、ソニーの液晶型70インチ、東芝の液晶型57インチ、三菱電機の液晶型52インチ、松下電器産業はPDPの103インチ、日立製作所のPDPの60インチ、日本ビクターはDILA(液晶リア型)110インチと言うように従来よりも大型機種の展示が目立っていた。

液晶テレビの問題点だった動画ぼけを改善した機種が増えている。ソニー、日本ビクター、日立製作所、三菱電機、東芝などから、パネル素材・構造の改良、120コマ倍速駆動、フィールド間動き補正の導入などにより動画像の画質を向上したモデルが出展されていた。また毎秒24コマで撮影された映画フイルムも滑らかな動画像として表現するようにした機種も多く、3倍速駆動を導入したモデルも見られた。またバックライトをLED化し、RGBの他に深紅を加え4色にするなど、色域を広げるなど色再現性を一層改善した機種も多い。さらに映像にあわせたバックライトの明るさ制御、画素単位でのγ補正、10ビット化、映像処理回路の高度化などの新技術を投入し、黒から白ピークまで階調再現性を改善し、高輝度で高コントラスト化し、一層画質を向上した機種が目立った。

また今回、大きな評判になったのは超超薄型・軽量モデルの登場である。シャープの超薄型液晶テレビは52インチと大型ながら表示部の厚さが2cm、最厚部でも2.9cmしかなく、重量25Kgと軽量だ。ディスプレイ正面から側面、背面まで見えるように展示されていたが、画面の大きさとその薄さを実感することができた。日本ビクターの液晶テレビは42インチサイズで表示部の厚さは3.7cm、チューナやスピーカも含めて7.2cmだそうだ。日立製作所の液晶テレビは32インチとやや小型で、表示部の厚さは1.9cm、電気スタンドのような架台にのっていて軽量の壁掛けテレビのようだった。3社とも年度内販売を目指すそうだ。

ソニーは超薄型有機ELテレビを出展した。11インチサイズ、厚さわずか3mmの超薄型モデルをステージ上に多数台並べ、その横には参考出品ながら27インチモデルも展示していた。有機ELは電流を流すと発光する自発光型ディスプレイで、構造的に薄型・軽量化でき、高輝度、高コントラスト、広色域、速い応答性と優れた特徴を持っている。市場価格20万円で年内に販売開始すると報じられ、液晶テレビと棲み分けつつ市場動向を見ながら一層の大型化を進めて行くと聞いた。

21インチ型FED(Field Emission Display)がエフ・イー・テクノロジーから出展された。ピクセル毎に電子放出源を持ち、電子で蛍光体を励起し発光させる平面ディスプレイである。暗部の再現性が良くピーク輝度も高く、インパルス駆動で短残光のため応答性が良く動画ぼけがなく高フレームレートにも対応でき、消費電力も低い。制作現場でのマスターモニターとして大いに期待できそうだ。

フルハイビジョンが主流の中、デジタルシネマやスーパーハイビジョンの進展も見え始める状況を受け、超高精細4Kディスプレイの出展も見られた。シャープは画素数885万(4K×2K)、毎秒コマ数が30と24に対応する超高精細液晶ディスプレイ64型を出した。日本ビクターはブースで4Kリア投射映像を公開し、2FのシアターではDILA型New4Kフロント投射プロジェクターで200インチサイズの大画面に「美ら島沖縄」の美しい高精細映像を公開した。4Kカメラも展示されていたが、3CMOS(3840×2048画素)を採用し従来機種1/3の約10Kgと軽量化された。情報通信研究機構(NICT)の「超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム」(URCF)は、イベントホールで4K超高精細映像を公開していた。日本ビクターの4Kカメラ、アストロデザインの56インチ液晶モニター、計測技術研究所のHDDレコーダを使い、ライブ映像とNHKのスーパーハイビジョンをダウンコンした映像を見せていた。

今回のシーテックのもうひとつの技術的トピックスは急速に進展、普及している次世代DVDである。Blu-ray Disc、HD-DVDと二つの方式に別れ、ソフト業界を巻き込みつつ主導権争いを演じている。Blu-ray Discグループはブースをブルー調に彩り、ソニー、松下電器産業、日立製作所、三菱電機、パイオニア、シャープ、フィリップス、サムスン電子などが最新機種を並べ、映画ソフトなどを見せていた。日立製作所は8cmφブルーレイディスク(BD)を搭載した世界で初のBDカムを出展した。フルハイビジョン映像がBD1枚に約1時間、記録・保存可能だそうだ。HD-DVDグループはイメージカラーとして対照的な赤色で彩り、出展社は東芝、NEC、三洋電機、報映産業、オンキョー、マイクロソフトなどで、各社の機器展示に加えブース内シアターの大画面で映画ソフトを上映し陣営のPRに努めていた。

デジタル時代の牽引役「デジタル放送」に関連する展示も大人気だった。JEITAと NHKは「体感!デジタル放送わくわく生活館」で、放送の歴史やライフスタイルの変化とメディアの進化、全国展開中の「地デジキャラバン隊」の活動、ケーブルでのデジタル放送受信、さらにFPDや録画機器、PC、モバイルなど各種デジタル機器の接続法や使い方の実演などデジタル完全移行へ向けたPRに努めていた。

シーテックは民生用、業務用機器・システムの展示会だが、Inter BEEと密接に関連しています。ここで紹介したディスプレイや記録機器の動向が放送技術とどのようにリンクしているのか、ぜひとも来るべきInter BEEに足を運び体感されますよう期待しています。

映像技術評論家 石田武久(Inter BEEアドバイザー)

#interbee2019

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