【ニュース】東宝 新ポストプロセンターが完成

2010.10.22 UP

  

 東宝は東京都世田谷区砧の東宝スタジオ内に、「ポストプロダクションセンター1」および撮影スタジオ「No.5/6ステージ」を新たに開設し、9月末に竣工内覧会を開催した。

 新しいポストプロセンターは、同社が2003年から進めてきた「スタジオ改造計画」の中核となる設備。「スタジオ改造計画」には、総工費約100億円を投じている。

 新機材の装備とともに、予算と時間を効率的に活用できる環境を提案している。内部には、ダビングステージと試写室、アフレコおよびフォーリーステージ、サウンドデザインルーム3室、ノンリニア編集室6室などが設置されている。既存の「ポストプロダクションセンター2」(旧ポストプロダクションセンター)と合わせて、年間約40本の映画制作に対応する。同スタジオが1年間に手掛ける作品のほぼすべてを、撮影から仕上げまで作業できることになるという。


音響環境を重視

 ポストプロセンターは、仕上げ空間として音響環境を重視した。ワーナー・ブラザース(WB)およびスタジオ設計のコンサルティング会社、チャールズ・M・ソルター・アソシエイツの協力を得て、3重天井のプラークシーリングと、さまざまな吸音・拡散システムを設置。マルチチャンネル用の躯体設計を行った。

 ダビングステージは広さ284平方メートル、高さ7.2メートル。ゲレッツ社製の10.8×4.5メートルマイクロパーフォスクリーンを使用する。「WBのNo.9、10ステージをお手本に」(同氏)、明確な音の定位と分離のよさを目指して、一般劇場を上回る遮音性能NC10を実現した。コンソールは、AMS/NEVE製「DFCジェミニ」を導入。72フェーダー128フレーム、96kHzで500シグナルパスという大規模な処理能力を持つ。

 音響軸はミキサー席と監督席に設定。スクリーン正面にコンソールを、その両側に、録音や効果などのスタッフが作業するDAWをハの字型に配置した。

 フロントスピーカーは5式を設置し、既存フォーマットのほか、7.1chなど規格が複雑なサラウンド制作に対応できる。サラウンドスピーカーは、左右両側壁に各4式、背面に4式の特注スピーカーを設置した。また、スクリーン下部にはソフトウエアを新開発した液晶VUメーターを設置し、視認性と作業性を向上。広々としたテラスやラウンジを併設するなど、アメニティーにも気を配った。


その他設備

 試写室は、広さ188平方メートル、高さ5.5メートルに座席100席を備えた。スチュワート製の「ウルトラマット130」8.3×3.4メートルスクリーンに、クリスティ製2kDLPシネマプロジェクターと、35ミリ映写機で水平投影するため、ゆがみのない高画質を保つ。音響設計はダビングステージ同様で、「フィルムおよび今後のデジタル検定にふさわしい環境」(同社)という。XpanD式による3D上映にも対応し、4kへの拡張が可能。

 サウンドデザインルームも同様に、ソルター社の設計でダビングステージに近い環境を作り、精度の高い作業を行える。アフレコステージは、20人が入れるブースを備えた。セリフのきっかけを知らせる5秒間のカウントダウンを表示することで、「映像に合わせるよりも、俳優が演技に集中できる」(説明員)システムとした。

 フォーリーステージは、床面や壁面にさまざまな素材を装備。日本で始めてという残響制御用つい立てや、叩き割る音を安全に収録できる破損音ピット、重量物の打撃音を録るためのフレームを用意。マッチをするなどの微細な音を録音するためのブースも構築した。

 また、6室の編集室のうち4室には、アビッド製「メディアコンポーザーナイトリスDX」とHDCAM VTRを設置した。「現在はSD解像度での作業が多いが、まずはオフライン編集をHD化することを提案したい」(東宝スタジオ経営部の村川円吾氏)という。
 個人の編集機を持ち込んで作業できる2室は、より手軽な価格で利用することが可能で、デジタイズ専用室も設置した。


社内外にネットワーク接続を拡大

 構内には、映像用ネットワークとして4Gbpsファイバーチャネルと1ギガビットイーサネットを敷設し、ファシリステクノロジー社製SANシステム「テラブロック」(96テラバイト)をセンターストレージに設置した。撮影データを迅速に試写室に送ったり、編集のリズムを170インチスクリーンを備える小試写室で確認できる柔軟な体制をつくることで、制作効率の向上を求める声に応えていく。

 社外とも、早稲田大学国際情報通信センターと共同管理するNGN回線を利用した閉域ネットワーク網でデータをやりとりできる。
 早稲田芸術科学センターから始まり、現在はIMAGICAや東京現像所、オムニバス・ジャパン、マリンポスト、モーターライズなどと接続。DIやCGデータのやりとりに活用することで、監督やプロデューサーがスタジオ間を行き来する時間や費用を抑制できる。村川氏は、「一般回線のため、料金はさほど高額でない。積極的に訴求していきたい」と話している。


主な機材

【ダビングステージ】▽ミキサー=DFCジェミニ▽DAW=プロツールスHD3×5(ビデオサテライト)▽スピーカー=バリプレックス㈼EX(L/C/R)、TL9040(LC/RC)、TL880D(サブウーハー)など▽映写機=2kシネマDLP CP2220

【試写室】▽スクリーン=8.3×3.4メートルウルトラマット130▽映写機=2kシネマDLP CP2220/35ミリFP30E-S

【サウンドデザインルーム】▽DAW=プロツールスHD3▽操作卓=Dコマンド▽スピーカー=8250A

【フォーリーステージ/アフレコステージ】▽DAW=ピラミックス▽操作卓=タンゴ

#interbee2019

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