【ad:tech Tokyo 2009】ソニー デジタルメディアを活用した総合型マーケティングキャンペーン事例

2009.9.15 UP

 ソニーマーケティングの広告宣伝部門宣伝企画部 宣伝プロデューサー 長島 純氏と、博報堂インタラクティブ・プロデューサーの堀 宏史氏は、9月2、3日に開催された、マーケティングとITテクノロジーに特化したカンファレンス「ad:tech Tokyo 2009」において、ビデオカメラ「ハンディカム」の拡販を目指し、インタラクティブな体験型Webプロモーションについて紹介した。

<<インタラクティブなWebプロモーションで深さと広がりのあるブランド体験を>>

 ソニーの国内戦略を担うソニーマーケティングでは主力商品であるビデオカメラ「ハンディカム」の拡販を目指し、インタラクティブな体験型Webプロモーション「Cam with me」を展開している。

 同プロモーションは、かけがえのない日常シーンを録画する大切さを疑似体験してもらうことで、ビデオカメラの利用価値をユーザーに効果的に訴求。同時にサイト自体をブログに張り付けられるように工夫したことでバイラル効果が高まり、プロモーションはブロガーを中心に大きな話題となった。

 これにより、商品ページへのアクセスが増加し、サイトの滞在時間も拡大。ハンディカム自体の売上も向上しているという。


<<疑似体験で映像に残すことの大切さや楽しさを表現>>

 新しいメディア環境の中で効率的かつ効果的なブランド体験を実現するにはどうすればよいか―。

 多くのマッケッターやクリエイターが直面している課題だ。この課題に対して、ソニー製品の国内戦略を担うソニーマーケティングでは、新たな試みにチャレンジした。それがソニーのビデオカメラ「ハンディカム」の特設サイト「Cam with me」で展開している体験型のWebプロモーションだ。

 ハンディカムは国内ビデオカメラ市場でトップシェアを誇っているが、市場はまだ伸びる余地がある。
 Cam with meはハンディカムのシェア拡大と、新規需用の掘り起こしによる市場全体の拡大を同時に目指したものだ。「特に新規需用の掘り起こしにはメッセージの出し方を考える必要があります。そもそも購入検討層以外は、ビデオカメラの必要性を強く感じていない人たちが多いからです」と長島氏は話す。

 そういう人たちに対して、ビデオカメラがどのような価値を提供できるかを訴えていくには、共感を呼ぶ深いブランド体験が必要。

 「そこでインタラクティブなインターネット活用したコミュニケーションを考えました」と同プロモーションの企画・運営をサポートする博報堂の堀氏は述べる。
 目指したのは「ココロを動かすインタラクティブ」。ブランド体験の深さと広がりを、インターネットの特性であるインタラクティブ性を使って表現することだ。

 そのためにはどのようなコンテンツが適しているか。

 「これまでの調査でビデオカメラを持っている人の中には何気ない日常のシーンでも『とりあえず撮る』という人が意外に多いことがわかりました。見るのが目的ではなく、記録として残しておきたいと考えているのです。
 そこにヒントを得てCam with meでは『毎日がスペシャル』と思えるコンテンツを目指しました」と長島氏は説明する。

 具体的には子供が赤ちゃんから大人に成長する過程を、思い出として残すという疑似体験を演出した。

 画面の中では最初ハイハイしていた赤ちゃんが少女へと成長し、思春期を過ぎ、最後は花嫁姿で背中を向けて遠ざかっていく。映像には奇抜さや大きなアクションはない。
 赤ちゃんから大人へと成長していく娘の歩いている姿を淡々ととらえたものだ。「何気ない毎日なので、同一行為の反復によって感情の揺さぶりに働きかけることを狙いました」(堀氏)。

 インタラクティブな仕掛けとしては、画面上の「REC」ボタンをクリックすれば、ビデオカメラが登場し、映像の1コマを録画できるようにした。インターフェスは録画機能のみで、早送りや巻き戻しはできない仕組み。
 録画チャンスも2秒間とし、それを越えるとそのシーンは録画できないようにした。

 堀氏は「現実でも決定的な録画チャンスは一瞬の出来事。そのリアル感を再現しました」と話す。録画されたシーンは、最後に編集され音楽とともに「エンディングムービー」として再生される。それを見れば、何気ない日常の積み重ねを思い出として振り返ることができるというわけだ。

 録画できるシーンは全部で50カ所あり、録画したシーンや回数によってエンディングムービーの内容も変わる。さらにエンディングムービーを再生する際には、50回の録画チャンスのうち、ユーザーが何カ所録画したかがわかるようになっている。

 「そうすることで、自分が撮り逃してしまったシーンがいかにたくさんあるか気づいてもらうため。撮り逃したシーンを印象づけることで撮ることの大切さや楽しさを強く訴求しています」と堀氏はその狙いを語る。


<<ブロガーが取り上げやすいバイラル戦略が奏功>>

 疑似体験という仕掛けに加え、ユーザー間のバイラル効果を促進する仕組みもつくった。「ブランド価値を広めるには個人の体験を多くの人に紹介してもらうことが重要。そのため、Cam with meではサイト自体をブログに張り付けられるようにしました。これにより、ブログ内でCam with meの動画コンテンツを再生できるようになります」(堀氏)。

 コンテンツ自体が「子供の成長」という心の琴線に触れるテーマであったことに加え、インタラクティブな仕掛けによる疑似体験、さらにバイラル効果を見込んだ斬新な機能と相まって、Cam with meはソーシャルメディアやニュースサイトでも広く取り上げられ、大きな話題を呼んだ。

 Cam with meのページビューは1カ月で25万、ユニークユーザー数は20万に達し、アクセス数は前年比183%アップしたという。

 長島氏は「商品ページへのアクセスが増加し、サイトの滞在時間も拡大。ブログから他メディアへの広がりも見られ、ハンディカム自体の売上も向上しています」とその効果を強調する。

 こうした経験を活かし、ソニーマーケティングでは新たな体験型Webプロモーション「水のない水族館をつくろう」プロジェクトを展開中だ。これはブラウザがファインダーとなり、水族館の様子を撮影できるというもの。撮影したシーンはスクリーンセーバーとして楽しめる。自分が水族館にいるかのような疑似体験を演出したものだ。
 「今後は体験価値を指標化し、集客数だけではない新たな評価軸を確立することを目指しています。メディアの特性に応じたコンテンツの最適化も考える必要があるでしょう」と話す長島氏。

 効率的かつ効果的なブランド体験を実現するには、ユーザーに強いエンゲージメントを感じてもらうことが大切。

 それには自分のことと思えるようなパーソナルな深い体験を演出し、その後の広がりを見据えたバイラル戦略が重要なポイントになる。「心を動かし、行動を促すこと。それがつながりをより強固なものにしていきます。人のココロが動いてこそ広告といえるのではないでしょうか」。最後に堀氏はこのように述べ、心の琴線に触れるコンテンツの重要性を訴えた。

#interbee2019

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