IBC 2008現地取材レポート 第2弾

2008.10.21 UP

IBC 2008 topics, Vol.1

■IBC 2008で、スーパーハイビジョン国際伝送実験に成功
NHK/英BBC/伊RAI

 NHKは、英国BBC、イタリアRAI、EBU(欧州放送連合)とスーパーハイビジョンについて共同研究を進めており、その一環として、IBC 2008の展示において、世界初のスーパーハイビジョン信号の国際伝送実験を共同で行い成功したが、この実験の成功に対してIBC委員会から、この実験に協力したSiemens、SIS、Cable & Wireless、Eutelsat(欧州衛星通信機構)とともに特別賞を受賞、9月14日、IBC会場において授賞式が行われた。
 今回行われた国際伝送実験では、イギリスおよびイタリアから別々の方式でアムステルダムのIBC会場まで伝送を実施した。イギリスからは、BBCと共同で、ロンドンに設置したNHKのスーパーハイビジョンカメラの映像をMPEG-2で圧縮し、Siemens、SIS、Cable & Wirelessの協力により、超ワイドバンド光ファイバを経由してIBC会場にIP伝送、生中継を行った。
 一方、イタリアからは、RAIと共同で、日本で撮影したスーパーハイビジョン番組をトリノにおいて再生し、これをH.264で圧縮し、Eutelsatの協力により衛星中継して、IBC会場に設置したアンテナで受信した。
 いずれも、世界初のスーパーハイビジョン国際伝送実験となり、中継映像は、IBC 2008のNHKのスーパーハイビジョンシアターにおいて、7680×4320 画素のスーパーハイビジョンプロジェクタと22.2マルチチャンネル音響システムを用いて上映された。また、これらの映像をダウンコンバートの上、EBUのブースのBBC、RAIのコーナーにおいて、それぞれ3840×2160 画素の液晶ディスプレイで表示した。
 IBC 2008開幕直前の、12日午前10時から行われたプレスコンファレンスは、用意された席が足りなくなるほどの盛況で、ロンドンからのライブ映像が映し出され、IBC会場内のスーパーハイビジョンシアターとの間で、掛け合いが始まると、その高画質と迫力ある映像に参加した記者から大きな拍手が贈られた。
 NHKでは、今後とも内外の放送事業者、研究機関などと協力し、連携してスーパーハイビジョンの実用化を目指す研究を推進していく意向である。


■ソニーがビクターにXDCAM EXライセンス提供
ソニー/ビクター(JVC)

 ソニーは、9月12日に開催されたIBC 2008の同社プレスコンファレンスにおいて、日本ビクター(JVC)に対して、『“S×S”(エス・バイ・エス)メモリカード』への記録に対応した業務用ハンディタイプカムコーダ“XDCAM EX”ファイル形式のライセンス提供を開始すると発表した。
 今回のライセンスにより日本ビクターは、“XDCAM EX”と互換性のある製品の開発および販売が可能となる。今回のライセンス提供について、日本ビクター常務取締役プロシステム事業部長の武倉弘幸氏は『日本ビクターは、プロビデオ分野において、ユーザにより良い環境を提供するために、グローバルなパートナーと協力することが非常に重要だと考えている。その観点から、今回の“XDCAM EX”ファイル形式と“S×S”メモリカードの採用という、ソニーとのアライアンスは、当社にとって大変有意義なものであり、またユーザの多様なニーズに応えるものであると確信している』と、またソニー業務執行役員SVPの尾上善憲氏は『このたび、長年にわたり業務用映像機器の分野において友好な協力関係を築いてきた日本ビクターへ“XDCAM EX”ファイル形式のライセンスが実現したことを大変光栄に思う。これまで映像制作の市場発展に努めてきた両社の今回の協力は、“XDCAM EX”の継続的な成長にも繋がるものと確信している。』とそれぞれコメントした。


■ビクター、来春KA-MR100G発売…

 同発表に基づき、日本ビクターはIBC 2008会場でドッカブルS×Sメモリカードレコーダ『KA-MR100G』のモックアップを参考出展した。KA-MR100Gは、同社のプロ用HDVカメラProHD GY-HD200/250のカメラレコーダの後部に取り付けるドッカブルタイプのメモリカードレコーダで発売は2009年3月、価格は3000ドル・2000ユーロ以下を予定している。記録フォーマットにはXDCAM EXのファィルフォーマットを採用し、同機との互換性を備えている。


■プレスコンファレンスで北京での実績を発表
パナソニック

 パナソニックは、今年もIBCに本格的な展示ブースの出展はなかったが、RAIコンベンションセンターのビッグスクリーンシアターを使用してプレスコンファレンスを12日に開催した。
 プレスコンファレンスは、先の北京オリンピックのハイライト映像の上映からスタートし、各ベニューでの同社の映像・音声機器の活躍する姿が、選手の映像と共に大スクリーンで紹介された。
 北京オリンピックでは、オフィシャルレコーディングフォーマットとしてDVCPRO HDおよびP2が採用され、P2HDのカメラレコーダであるAJ-HPX3000/HPX2100を含む100台のカメラレコーダ、P2HDレコーダAJ-HPM110を含む250台のデジタルレコーダ、1,500台のモニタ、アストロビジョン、RAMSAオーディオシステムが採用され、延べ3,600時間のライブ映像が世界に向けて放送され44億人が視聴したと発表した。
 同社の放送機器への取り組みとしては、半導体メモリとH.264をキーワードに、P2カードではAVC-Intraを、SDカードではAVCHDによるシステムを展開するとして、NABで発表されたP2HD VARICAM・AJ-HPX3700/2700を欧州で初披露。マスタークォリティ、10ビット4:2:2AVC-Intra 100収録、VARICAMのフィルムライク機能を提供等の特徴が説明された。
同様に、P2HDメモリカードカメラレコーダ『AG-HPX175』、AVCCAMメモリカードカメラレコーダ『AG-HMC155』等のハンドヘルト機の実機を持ち込んで紹介した。
さらに、デジタルスイッチャの新製品AV-HS400A、HDリモコンカメラシステムAW-HE100等の製品説明が行われた。
 現在、P2システムは世界の放送局900局で10万台以上が稼働していると発表、また欧州の放送局の85% はアーカイブにテープレスシステムを検討しているという調査結果が披露された。
 さらに、P2パートナーが29社になったことが発表され、ソニーのXpriNSもP2への対応を図ったことが明らかにされた。また、AVC-Intraへの対応についてオートデスク、アドビ、アップルからのゲストが説明を行った。


■コストダウンを図った1M/E HANABI開発
朋栄

朋栄は、IBC 2008で、今年も『Imagination to Creation』をテーマに掲げビデオスイッチャやメディアマネジメントシステム、マルチビューワ、3Gbps対応モジュールなど、数多くの新製品を出展したが、ビデオスイッチャの新モデルとして、小型低価格の1M/E HANABIポータブル『HVS-300HS』を発表した。
 同社は既に、1M/E HANABIシリーズとして、HVS-1000HS、HVS-600HSをラインナップしているが、今回の新製品はHANABIシリーズを継承しながら、ユーザニーズに応えて大幅なコストダウンを図ったもの。
 本体は、1Uのコンパクト設計で、本体にオプションのコントロールパネルを装着することにより、マシンルームでラックマウントした状態でのスイッチャ操作も可能。専用のコントロールパネルに加えて、PCからのスイッチャのコントロールソフトを用意。各入力にフレームシンクロナイザと、リサイズエンジンを装備。各種オプションにより、HD/SD-SDI、DVI-D、アナログRGB、HD/SDアナログコンポーネント、アナログコンポジット等、豊富な入力に対応。16分割のマルチビューワ機能を内蔵。2チャンネルのピクチャー・イン・ピクチャー機能搭載。1キーヤと2D DVEを装備した1DSKを搭載。2Dおよび3D DVEトランジッション搭載。100種類以上のワイプパターンを内蔵。2チャンネルのスティルストアを内蔵等の特徴を備えている。
 同社は、今年のNABでHANABIシリーズのフラグシップモデルとして、2M/Eから4M/EまでカバーするHVS-5000シリーズを発表し話題となったが、IBCでは一転してローコストモデルをラインナップし、ユーザの用途に応じた選択が可能となった。なお、価格については未定としているが、本体価格は100万円以下を予定、用途に応じてPCからのコントロールソフトウェア、本体装着の制御パネル、さらに本格的なコントロールパネル等のオプションによりシステム構築が可能となった。 

【放送ジャーナル社 染矢清和】


◎写真1枚目
NHKウルトラハイビジョン

◎写真2枚目
JVCのXDCAMEX

◎写真3枚目
朋栄 低価格1M/Eデジタルスイッチャー

◎写真4枚目
パナソニックのプレスカンファレンス

#interbee2019

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