【NEWS】中国最大のアニメ関連イベント「中国国際アニメフェスティバル」が開催

2010.5.28 UP

 中国最大のアニメ関連イベント「中国国際アニメフェスティバル(中国国際動漫節 China International Cartoon & Animation Festival 略称CICAF)」が今年も4月28日から5月3日まで浙江省の杭州市で開催された。今年で第6回目を数えるこのイベントはアニメ産業振興を進める中国当局の姿勢とそれを支える中国経済の好調ぶりを反映し、規模も入場者数も前年をさらに上回り、中国最大のアニメ関連イベントの名にふさわしい盛り上がりを見せた。(NPO法人アジアITビジネス研究会 田所陽一)


■6年で161万人が参加する巨大イベントに成長

 CICAFがスタートしたのは2005年。国務院傘下の国家広電総局(放送と映画の管轄を行う機関)と浙江省人民政府の共催という形をとり、「中国のアニメの都」を標榜する杭州市が実質的な運営主体として、毎年メーデーをはさんだ4月末から5月初旬に約1週間開催されてきた。
 筆者は2006年の第2回目から毎年欠かさず視察を行っているが、2005年に開催された第一回大会の入場者数は、6日間の開催で約28万人。それが今年2010年は、公式発表によると161万人になり、5年前の約6倍、昨年と比べても約2倍と過去最大の入場者数を記録した。これは今年3月に開催された東京国際アニメフェアの4日間の入場者数約13万人2000人の約12倍という途方もない数字である。


■市内7カ所の関連イベント参加者を加算

 入場者倍増の直接的なきっかけとなったのは、60を超える大小さまざまなイベントを杭州市内の分会場で行ったことである。メインとなる見本市や国際フォーラムは例年どおり郊外の休博園(テーマパーク)内の動漫館やホテルで行ったが、一部のフォーラムや開会式・アワード授与式・歓迎パーティー、声優コンテストなどは市内7カ所の分会場で行われた。
 開会式は5万人を収容できる杭州市最大のスタジアムを借り切ったものであるが、その内容もアニメイベントというよりは、中国各地はもちろん台湾、シンガポールからも人気歌手を招いたスペシャルコンサートと言ったほうが正解である。161万人という数字はこういったイベントの総合計ということと考えれば納得できるであろう。


■人気を呼んだ映画「アバター」の展示ブース

 見本市は、例年どおり休博園内にある3階建て(地上2階、地下1階)の動漫館で開催された。2階の主な出展者の顔ぶれは昨年とほぼ変わらず、正面がCCTV(中央電視台)、その両サイドが地元杭州最大のアニメ制作会社で本イベントの主要スポンサーでもある中南カートンと杭州近辺の蘇州や常州、無錫、南京といった地域のアニメ基地のブースである。

 浙江電視台やSMG(上海メディアグループ)などの放送局、吉林動画学院や中国美術学院などの教育機関も例年と同じ規模のブースを出していたほか、今年はこれまでは1階に配置されていた台湾館や韓国館、マカオ館が設けられていた。
 台湾館はコミックス系出版社から構成される中華動漫出版同業協進会が台湾のマンガ家によるオリジナルコミックスを多数出展。同会理事長で尖端出版社長の黄鎮隆氏は「今回の出展は台湾コミックスの中国市場でのプロモーションが目的。台湾の狭い市場だけでオリジナルコミックを展開するのはビジネス的には難しいので、中国市場での展開を協会として本格的に考えていく」と語った。

 そのほか、今年は中国でも大ヒットした『アバター』(中国語タイトル『阿凡達』)の展示ブースが登場し、多くの来場者が足を止めて展示物に見入っていたり、写真を撮っていた。見本市全体の印象としては新作アニメの発表・展示や商談の場ではなく、キャラクターグッズなどの販売場としての色が例年以上に強く、ビジネスデー初日にも関わらず、多くのブースが一般来場者向けに販売を行っていた。


■電子出版関連のフォーラムにシャープも参加

 昨年、映画『カンフーパンダ』のマーク・オズボーン監督を招いたフォーラムが話題を読んだが、今年は前述の映画『アバター』のVFXクリエイター2名(Dylan Cole氏、Jordu Schell氏)や、ドリームワークスのVFXスーパーバイザー2名(Philippe Gluckman氏、Rodolphe Guenoden氏)を招いたセッションが人気で、立ち見も出る盛況だった。また、台湾・香港・マカオからパネラーを招いた「両岸三地文化創意フォーラム」が開催され、中国大陸とこれら三地域を合わせた大中華圏でいかに独自のアニメーション制作を行っていくか、それぞれの地域の連携やクリエイティブ力を共同でいかに高めていくかについて、活発な議論が行われた。

 このフォーラムの中国代表のパネラーは「美しすぎるマンガ家」として日本でも知られている夏達(かたつ、シャア・タア)さんで、彼女が入場するとカメラマンや一般参加者のフラッシュがいっせいにたかれるといった一幕もあった。

 そのほか、「国際デジタル出版フォーラム」では日本からもパネラーが2人参加。シャープ執行役員の千葉徹氏が自社の閲覧ソフトXMDFの紹介を行ったほか、ケータイ小説で知られる魔法のiらんど執行役員の草野亜紀夫氏が自社のUGC戦略や代表作『恋空』がケータイ小説から書籍化、劇場映画化されて大ヒットした経緯を紹介した。
 草野氏はフォーラム中で、「『恋空』の書籍版は中国でも翻訳されて上下巻それぞれ10万部売れており、手応えを感じている」と中国市場の開拓に意欲を見せた。


■日中合作の新作「三国演義」で発表会

 フォーラム以外に例年行われるのが中国の有力アニメ制作プロダクション各社による新作発表会である。2年前に鳴り物入りで発表された日中合作の『三国演義』(日本でも本年4月より『最強武将伝 三国演義』のタイトルで放送開始)は中国側のCCTV傘下の輝煌動画公司と日本側のタカラトミーによる共同報告会が開催された。

 日本からは経済産業省メディアコンテンツ課の長谷川俊夫氏やタカラトミー取締役副社長の佐藤慶太氏らが、中国側は国家広電総局の金徳龍氏や輝煌動画公司総経理の周鳳英氏らが登壇し、現時点におけるで同作のビジネス展開の状況報告、中国アニメ史における同作の位置づけなどを語った。


■ハイティーン向けの中国産アニメも登場

 また、本格的3D武侠アニメとして人気の高い『秦時明月』も第三シリーズ「諸子百家」の制作発表を行った。同作品は、オーソドックスな作りの『三国演義』とは異なり、秦の時代が舞台にもかかわらずロボット兵器が登場するなどのユニークなアイディアを盛り込んだ作品。

 制作会社の玄機科技信息技術有限公司総経理でシリーズの監督でもある沈楽平氏は「ファンの意見やアイディアも盛り込んでストーリーを作っている」とコメント。同作品はコスプレファンも多く、また本編とは別に可愛らしい二等身キャラによるパロディ版も同時に作られており、幼児向けが圧倒的に多い中国アニメの中でハイティーン向けに作られビジネス的にも成功している貴重な例である。


■アニメ産業の人脈構築に最適の場

 以上、今回の中国国際アニメフェスティバルの一部を簡単にレポートした。昨年はフジテレビをはじめ日本の関連企業6社が出展を行いフォーラムも行われて、いよいよ本格的な日本企業の進出と思われたが、今年は前述の企業の出展はなく、新たな出展も集英社がブースというよりは展示コーナーのみであった。

 個人単位では前述の国際デジタル出版フォーラムの2名のほか、人気マンガ家の藤島康介氏の作品展示やサイン会が開かれ、またアワードである美猴奨の最終審査員にASIAGRAPHの喜多見康氏が招かれるなど、日本はそれなりの存在を示した。

 しかし、世界動画協会やイタリア、ロシア、カナダ、オーストラリア、韓国など世界の主要アニメイベント関係者を集めたフォーラムにも日本の関係者は参加しておらず、世界のアニメ産業における日本の存在感を考えれば一抹の寂しさを感じずにはいられなかった。

 確かにこの中国国際アニメフェスティバルは年々ビジネスショーとしての色は薄れ、「アニメ大国・中国」を演出するためのお祭りショー的な色彩が強くなっている。「行ってもビジネスにならない」「中身がない」「一度行けばたくさん」とはこれまで出展や視察に訪れた関係者の言葉である。それでも「中国最大のアニメ関連イベント」として、中国各地を代表する制作会社、教育機関、関係機関のリーダー、世界のアニメ関係者が毎年この時期に杭州に一堂に集まることは事実であり、パイプを構築するには最適な場とも言える。今すぐビジネスにはならないとしても、長期的な中国戦略の場としてこのイベントを見直してみたらいかがだろうか。

【写真・上から】
h175 見本市会場
h078 サインを求めるファンでにぎわう『アバター』のブース
h117 商談コーナーに並べられた新作中国アニメのパネル
h159 日中合作『三国演義』フォーラムの日中登壇者
h186『秦時明月』第三シリーズの制作発表を行う沈楽平氏

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