私が見た"NAB SHOW 2011"における技術動向(その3、カメラ、映像モニター編)

2011.5.2 UP

フルHDプログレッシブカメラ(日立国際電気)
フルHD高速度カメラ(ナック、池上)

フルHD高速度カメラ(ナック、池上)

デジタルシネマカメラALEXA Plus(ARRI)

デジタルシネマカメラALEXA Plus(ARRI)

高画質25”有機ELモニター(ソニー)

高画質25”有機ELモニター(ソニー)

24”、32”LCDモニター(池上通信機)

24”、32”LCDモニター(池上通信機)

(その2)では最近の映像メディアとして進展めざましいデジタルシネマや3D関連について記した。本号では、NABと共に成長し最近のデジタル化にあわせますます画質や機能がアップしているカメラや映像モニター関連の技術動向について見てみたい。

 池上通信機は、記録メディアにフラッシュメモリーを使いファイルベースのテープレスカメラGFCAMをメインに展示した。その中で、ハイエンドのHDTVカメラは、新開発のAIT型CCDと16bitA/Dを搭載し、独自映像処理により高感度、高S/N、優れた階調再現性を実現した。またAVCやATW(自動白バランス調整)機能を標準装備し、情報カメラやお天気カメラなどに向いている小形ボックス型HDTVニューモデルも並んでいた。さらに最近増えている大判のフォーサーズイメージセンサーを使い、PLマウントのGFCAMカメラも公開されていた。日立国際電気は特有のドッカブル構造(カメラヘッドと記録部・インターフェース部を組み合わせることができる)のフラッグシップモデルとして、220万画素CCDと新開発の1チップDSPを搭載したスタジオ用フルHDプログレッシブタイプのスタジオカメラと小型ボックス型モデルを展示していた。

 ソニーは、前述したデジタルシネマ、3D用カメラをメインに展示していたが、カメラコーナーには世界中で高い実績を上げているテープメディアを使うハイエンドモデルのHDCAM-SR、SxSメモリーカードを使うミドルエンドのXDCAM-EXなど各種モデルを数多く並べていた。さらにコーナー横にはわざと水をかけ防水効果がある小型カメラもPRしていた。パナソニックは前号で述べた3Dカメラと共に、同社主力のP2-HDカメラの豊富なラインアップを公開していた。220万画素、2/3型CCDを搭載しフルHD、AVC-Intraで10bit、4:2:2のハイエンドモデル"P2Varicam"や"P2cam"カメラレコーダなどに加え、ミドルクラス、さらに小型低価格モデルまで多数のカメラを公開していた。

 テレビカメラレンズや一眼レフカメラなどで世界的に高い実績を持つキャノンは、今回、前2社に匹敵するひときわ大きなブースを開設した。テレビカメラコーナーにはソニーや池上通信機など各社のテレビに装填したレンズを、シネコーナーではフィルムシネカメラ用各種レンズ類を、そしてシアターの所ではプロジェクター用レンズなどを公開していた。また3Dコーナーでは、3D撮影用レンズやコントローラ、ブリッジケーブルなどを展示していた。さらに画素数200万の1/3"CMOSを使い、CFカードにMXFファイルのまま記録する小型のフルHDムービーカメラも展示していた。F1.8の10倍ズームレンズで、小型低価格ながら高画質、高機能で幅広い利用が期待される。フジノンはHDTVレンズの新製品や放送用レンズの遠隔操作を可能とするワイヤレスレンズアダプターを展示していた。

 テレビや映画機材で実績あるナックは、従来の高速度カメラ"Hi-Motion"(NHKと共同開発でエミー賞受賞)を性能、機能アップした"Hi-MotionⅡ"を出展した。2/3"220万画素3板式CMOSを搭載し、フルHD対応で最大600コマ/秒の高速撮影が可能で、プログレッシブ走査のため映画やテレビドラマ、CGとの合成でも高品質のスロー映像が得られる。感度は4倍向上し、特別の映像処理(池上通信機と開発協力)により画質向上とフリッカーレスにした。メモリーは従来機の2倍の96GBで600fpsの場合約44秒の録画が可能、またスロー映像再生中でも同時高速収録ができ、2CH同期撮影、収録・再生でき3D対応も可能である。CCU無しでも運用でき操作性も向上し、オリンピックなどのスポーツ番組だけでなく、様々な利用が期待される。フォトロンは、単板CMOSで画素数2048×2048で2000fpsのフルHDハイスピードカメラ"FASTCAM"とそれで撮影したスロー映像を見せていた。

 シネカメラの老舗でNAB常連のARRIは、昨年より機能アップしたフィルムカメラライクなデジタルカメラ"ALEXA PLUS"を出展し評判を呼んでいた。35mmフィルムサイズのCMOS(解像度3.5K)を搭載し、PLマウントでシネカメラレンズが使えシネマ並みの被写界深度が得られ、低ノイズでダイナミックレンジが広くフィルムルックの映像が得られる。フルHD、2K、DI(Digital Intermediate)に対応し、LDA(Lens Data Archive)によりカメラデータを記録保存し3D撮影用に2台のカメラの同期をとることができる。無線/有線でのリモコン可能で、小型軽量、堅牢な構造で、映画、テレビを問わず様々な分野で活躍しそうだ。
 最近NABの常連になっているVision RESEARCHは、各種ハイスピードカメラ"Phantom"シリーズを出展した。新型センサー(画素数2560×1440)を採用し感度を約6倍アップし、フルHD、2500fpsの最新型モデル"FLEX"(エミー賞受賞)をメインに、高画質のフルHD、1000fpsの"HD GOLD"、スポーツ中継向きのフルHD、2700fpのV640、小型コンパクトの720p、3400fpsの"V310"などを公開した。またこれらのカメラ2台をハーフミラー式リグに装着した3Dカメラによる高精細のスロー映像も公開し評判になっていた。"I-Movix"は同社のカメラを実装した超高速度カメラ"SprintCam"を公開した。3Dカメラリグで実績あるP+S Technikの高速度カメラ"Weisscam HS-2"は単板CMOSを使い、画素数2016×2016で1080P(720P)に対応し高画質の高速度(1~2000fps)カメラで、撮影後にすぐ再生可能でスポーツ中継などに適している。

 映像メディアはデジタル化が進み、高画質、高精細になり、画質を管理する映像モニター、家庭やシアターにおいてコンテンツを表示・映写するディスプレイは非常に重要になっている。従来から使われてきたCRTは製造中止になっており、映像モニターは液晶やPDP、有機ELへ、大画面ディスプレイは大型PDPやLED、DLPやDILAなどへと変わりつつある。

 ソニーは、CRT後継機を視野にいれ、応答性が良く黒の再現性に優れ正確な色再現性といった特徴を有している有機ELモニターを出展した。RGB10bit、フルHDの有機ELパネルを採用し、画面サイズは17"と25"型である。同型サイズのLCD、CRTと有機ELとの画質の比較と共に、動きぼけや文字スクロールのリーダビリティ、応答性の良さ、また優れた黒再現性や白つぶれの少なさ、色再現性を示す実演もやっていた。放送局などへ納入実績の高い池上通信機は、主にLCD型モニターを展示した。広視野角、高輝度・高コントラスト、優れた応答性と色再現性の高精細液晶パネルを採用したフルHDの32"型と24"型のモニターを並べていた。また参考出品として、"FED"(Field Emission Display)も展示した。ピクセル毎に電子で蛍光体を励起し発光させる薄型平面ディスプレイで、暗部の再現性が良くピーク輝度も高く、応答性が良く動画ぼけも無いなど優れた特徴を持ちCRT後継のマスターモニターとして期待されている。画面サイズ約20"、解像度はSXGA(画素数1280×960)である。JVCもIPSパネルを使い広視野角で、10bit、4:4:4、3G/dual linkと高画質化した17"、24"型液晶モニターを並べていた。制作現場で使いやすいように、画面内に映像だけでなくベクトルスコープや映像波形も表示できる機能を持っている。

 デジタルシネマの進展に伴い、シアター用大画面ディスプレイの高品質化が進んでいる。バーコは3チップDMDを搭載し、輝度は13500ANSIルーメン、解像度WUXGA(1920×1200)、コントラスト比1700:1と高スペックのDLPを出展した。クリスティは、HD、フルHD、2Kなど各種解像度に対応し、3チップまたは1チップDLPの数多くの機種を使い、ブース壁面に設置した様々なサイズのスクリーンに映画やアニメ、さらに今回は3D映像も上映していた。<right>映像技術ジャーナリスト 石田武久(学術博士)</right>

フルHD高速度カメラ(ナック、池上)

フルHD高速度カメラ(ナック、池上)

デジタルシネマカメラALEXA Plus(ARRI)

デジタルシネマカメラALEXA Plus(ARRI)

高画質25”有機ELモニター(ソニー)

高画質25”有機ELモニター(ソニー)

24”、32”LCDモニター(池上通信機)

24”、32”LCDモニター(池上通信機)

#interbee2019

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