【SIGGRAPH 2011】SIGGRAPHにおける注目論文(4)ディズニーがCGで皮膚の接触もリアルに表現 〜12月 香港開催のSIGGRAPH ASIAへ向け〜

2011.10.29 UP

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■論文セッション“Contact & Constraints”でディスニーが皮膚同士の接触をモデル化
 ダイナミック・シミュレーションでは、物体同士の干渉をいかに正確に効率よく計算するかということが鍵となる。論文セッション“Contact & Constraints”では様々な視点からこの問題に取り組んだ手法が発表された。

 プロダクションワークに直結した手法と理論的に一歩踏み込んだ手法がバランスよく発表されていた点が印象的だった。たとえばディズニー社が発表したのは、キャラクターの皮膚同士が接触している部分の形状をうまくモデリングする手法。その一方でフランスのINRIAからは、細長い繊維が互いに干渉してつくりだす動きを、繊維同士の摩擦の影響をより物理的に正確に考慮して生成する手法が発表された。将来的には、よりリアルな毛のアニメーションなどに生かせそうだ。


■コーネル大学が”干渉音”のサウンドレンダリング発表に聴講者から拍手
 そしてこのセッションにおいても一際インパクトが強かったのが、コーネル大学から発表された“干渉音”のサウンドレンダリング。”干渉音”に関していえば、これまでサウンドレンダリングの分野で用いられてきたのは剛体シミュレーションのみをベースにした単純なものであったのに対して、今回は干渉が引き起こす物体表面の微妙な変形まで考慮してより精度の高い干渉音を汎用性の高いアルゴリズムによって作り出すことに成功している。
 そのために、これまでCGの分野では用いられたことのない新たなソルバーを改良・導入している点や、必要とされる精度のレベルに応じて計算を効率化できるようにしている点も大きな特徴だ。プレゼンの最後には、これでもかといわんばかりに複雑な干渉を伴った長いアニメーションと完璧にシンクロナイズした音で構成されたビデオ映像が流され、聴講者の大きな拍手で幕を閉じた。

【画像説明1】(1段目=画像(a)-(c)、2段目=画像(d)(e))
 この手法では、骨格の構造(a)と皮膚全体の形状をあらわすメッショ(b)を与えると、皮膚同士が接触している部分に対してボリュームメトリックな弾性体のシミュレーションをおこなって、その部分の形状をより正確に算出する。従来のリグを用いたメッシュの生成(d)と比較して遥かにリアルな形状が生成できる(e)。シミュレーション速度をインタラクティブに近い速度にまで高速化している点もプロダクション使用に向けた大きな利点となっている。
(c)20011 ACM, Inc.
論文“Efficient elasticity for character skinning with contact and collisions”(Aleka McAdams et al. , Walt Disney Animation Studios)より

【画像説明2】(3段目=(f)、4段目=(g))
 髪の毛のような細長い繊維が互いに干渉してつくりだす動きを正確に算出するためには、繊維同士の間の摩擦力の作用を考慮する必要がある。これまでのCGの分野でも近似的に摩擦力の影響は考慮されていたが、ここではより物理的に正確に摩擦力の影響を反映させて効率的な計算をおこなうための新しいソルバーを提案している。(f)(g)ともに、上段はこれまでの手法、下段な今回の手法でより正確に摩擦力の影響を考慮して算出した結果を示している。髪の毛の場合であれば、この手法を用いることによって、より正確に髪のボリュームの広がりや(左列)、髪の毛が肩にかかる様子(右列)を表現することができる。

(c)20011 ACM, Inc.
論文“A Nonsmooth Newton Solver for Capturing Exact Coulomb Friction in Fiber Assemblies”(Florence Bertails-Descoubes et al., INRIA, Grenoble)より

【画像説明3】(5段目=(h))
 昨年のSIGGRAPHで“破壊音”の生成を発表した著者が今年発表したのは、より物理的に正確な“干渉音”を生成するため手法。破壊音の生成では、物体を“剛体”と考えてCGシミュレーションをおこないその結果をもとにして音を生成していたが、この方法では物体同士の干渉が引き起こす物体表面の変形を考慮することができないため、たとえば(a)のように、ウサギの模型がテーブルにぶつかってテーブルの表面が変形しその上に乗っている食器を振動させてつくりだされる音といったようなものを物理的に正確につくりだすことができなかった。そこで今回の手法では、衝突による物体表面の微妙な変形まで考慮できるような新たなソルバーをうまく効率化してCGシミュレーションのプロセスに導入し、その結果算出された物体表面の振動をベースにしてより物理的に正確な干渉音の生成をおこなっている。
 物体同士の複雑な干渉が生み出す音をCGシミュレーションと完璧にシンクロナイズさせたビデオ映像も、高い評価を得ていた。

(c)20011 ACM, Inc.
論文”Toward High-Quality Modal Contact Sound”
(Changxi Zheng and Doug L. James, Cornel University)より

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#interbee2019

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