【High Performance Graphics 2009】米Sony Pictures Imageworks、レイ・トレーシング全面採用へ

2009.8.3 UP

High Performance Graphics 2009が開催
基調講演でソニー・ピクチャーズイメージワークス ラリー・グリッツ氏が講演
映画のCG制作にレイ・トレーシング全面採用へ

 グラフィックス用ハードウェアと、それに関わるアルゴリズムに的を絞ったコンファレンス(学会)である「High Performance Graphics 2009」(HPG)が8月1日より3日まで、ニューオーリンズのホテル・モンテレオンで開催されている。HPGは、1984年より開催されていた学会「Graphics Hardware」と2006年より開催されていたシンポジウム「Interactive Ray Tracing」が一体化して今年よりの開催となった。主催は、ACMとEurographicsの2団体となっている。今回は、8月2日からニューオーリンズで開催されるSIGGRAPHと併催の形で行われている。
 3日間の会期のうち、話題の半分はレイ・トレーシングを占めており、レイ・トレーシングがこの学会の中心話題であることが見て取れる。ハードウェアは、実装関連の話題は少なく、「ハード化に向いた技法」の提案が多い。

 2日目の8月2日の基調講演で、米Sony Pictures Imageworks(SPI)のレンダラー・チーフ・アーキテクトを務めるLarry Gritz(ラリー・グリッツ)氏が登壇し、同社がレンダラーのアルゴリズムをレイ・トレーシングに全面的に切り替えたことを明らかにした。

 「Production Perspectives on High Performance Graphics(ハイパフォーマンス・グラフィックスに関するプロダクションの見方)」と題された基調講演で、同氏は、「SPIでは、合計すると5000以上のコアが動いている」とし、多数のマシンでの処理が常態化していることを明らかにした。そして「制作においては、ボトルネックは時に12時間に及ぶマシンタイムではなく、人的な部分が大きい」として演算時間は許容できる状態であると指摘した。
 同社は、伝統的にREYES(注:Renderer Everything You have Ever Seen - ルーカスフィルム・コンピュータ・グラフィックス部門が開発したレンダリングアーキテクチャ)を使ってきたが、グローバル・イルミネーションが「モンスター・ハウス(2006)」で必要となったためレイ・トレーシングレンダラーである「Arnord」のライセンスをたという。
 その後、採用が進み、2009年9月公開予定の「Cloudy With a Chance of Meatballs(日本未公開)」で、全面的にArnold系のレンダラーを用いたという。現在、SPIの「唯一の」レンダラーはレイ・トレーシング方式によるものとのことであった。
 レンダリングの速度は、単純比較では低下しているが、アーティストが複数種類の光源を扱い、合成等を行う時間を勘案すると、作業時間は「大幅に」(同氏)短縮されたという。
 同氏は、業界、学界への要望として、「一度ソフトを書けば、複数のプラットフォームで使えるような構造を実現して欲しい」と、現場からの要望を述べ、更にSPIのオープンソース・プロジェクトを紹介して基調講演を終えた。

#interbee2019

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