【ニュース】GDC2011 基調講演に任天堂 岩田社長が登壇                 3DSの「Netflix」対応で、1600万加入者に3Dコンテンツを配信可能に

2011.3.7 UP

基調講演で熱く語る任天堂 岩田社長
基調講演の会場は早くから多くの人が詰めかけた

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ゲームシェアの推移を紹介。wiiが圧倒的なシェアを持つ

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AT&Tとの提携でWiFi接続も拡大

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「不可能を可能にしよう」という熱いメッセージが発せられた

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 世界最大規模のゲーム開発者会議「Game Developers Conference 2011(GDC)」が米国サンフランシスコのMoscone Centerにて開催された。 会期は現地時間の2011年2月28日〜3月4日(展示会は3月2日から)。GDCは今年で25回目となり、約2万人近い来場者を迎える規模まで成長した。GDCでは650を超えるセッションが5日間の会期中に繰り広げられる。(山下香欧)


■拡大する「モバイル市場」 ゲームも「クラウド」の時代に

 今年の大きな変化といえば、今までモバイルという分野で括っていたものが、スマートフォンゲームやソーシャルゲーム、ブラウザゲームなどに形を変えて、一斉に展開されたことだろう。 スマートフォン向けのゲームコンテンツを扱った「GDC Smartphone Summit」、ソーシャルゲームを扱った「Social & Online Summit」、そしてIT界の巨人Googleがスポンサーするクラウドゲーミング、ブラウザゲーミングを焦点とした「Google Developers Day」、GoogleのAndroid OSベースの開発者向け「Android Developers Day」など。 最近はソーシャル系ネットワークゲームやスマートフォン向けアプリケーションが隆盛し、クラウドやブラウザ、ネットワークに関連するものがキープレイヤーとなりつつある。 


■通信機能を強化した「ニンテンドー3DS」 プッシュ形式の情報配信が可能に

 ネットワークといえば、通信機能の強化が図られた3D対応新型ゲーム機「ニンテンドー3DS(3DS)」の米国発売が迫ってきた。 3DSには、本体だけで最大12タイトル分のデータを交換できる「StreetPass(すれちがい通信)」とWi-Fiのアクセスポイントに近づくだけで勝手に情報が得られる「SpotPass(いつの間に通信)」が実装されている。後者はプッシュ形式情報配信を持ち込んだもので、「朝起きたら3D映画のトレーラーが届いていたらわくわくするはず」と、任天堂 総合開発本部、プロデューサー紺野秀樹氏が魅力を語っている。(3月4日の講演「Development Process of Nintendo 3DS(ニンテンドー3DSの開発プロセス)」より)。 3DSの米国発売は3月27日で、価格は249.99ドル。


■注目を集めた任天堂 岩田社長による基調講演 Appleの発表会と同時期に

 GDCのハイライトでもある基調講演に、今年は任天堂の岩田聡代表取締役社長が招かれた。
 岩田氏の基調講演は今回で4度目、2009年以来の2年ぶりとなる。 任天堂がステージに立つ基調講演では、発売前の製品についての最新情報が公開されることが多い。 今回は、裸眼立体視ディスプレイを実装した3DSが、日本で発売された直後、かつ北米で発売を控えているだけに、この3DS関連の発表がおおいに期待され、会場の前には開始1時間前から長い行列ができた。
 実は岩田氏の基調講演は米Apple社の新製品発表会(発表会のアナウンス当時はiPad2とは公表されていなかった)と重なっており、皮肉にもApple社側はGDC会場と隣接したYerba Buena Centerで行われた。こちらも開始2時間前から会場外に多くの中継車が詰めかけていた。


■「ビデオゲーム25周年」

 基調講演のテーマは、 “Video Games Turn25: A Historical Perspective and Vision for the Future(ビデオゲーム25周年:歴史的な視点と未来への展望)”。 任天堂でも、昨年は「スーパーマリオブラザーズ」の登場から25周年、そして今年は「ゼルダ」の25周年である。
 ビデオゲームの歴史を振り返りつつ今後のゲーム作りの課題について、今後の方向性、そして業界を成長させるには何が不可欠であるかを、テレビゲーム業界をリードしてきた任天堂からの独特の視点が語られることになっていた。岩田氏のスピーチは当社の公式サイトで日本語化されて掲載されている。また、公式サイトにてライブ中継も実施された。
 

■ネットで映画のトレーラーや音楽PVなどの3D映像を配信予定

 基調講演では、まず岩田氏から、ゲームプログラマーであった若きし頃の自身の体験を始め、現在の高い開発コストを支えるゲームプレイヤー人口の増加のことや、ソーシャルネットワークゲームについて言及された。 
 ゲームプレイヤーからの視点で「MUST-HAVE(必需品)」を過去から4つほど並べ、それらを生む要素として「誰にでもアピールできる普遍的な魅力」が重要であるとし、次のMUST-HAVEになるだろう3DSの話へとつなげた。また、3DS対応タイトルを紹介する中で、現在開発中の3D版『スーパーマリオ』のショットも初公開した。
 3DSの詳細については、Nintendo of AmericaのReginald "Reggie" Fils-Aime(レジナルド・フィサメイ)社長が登壇して行われた。その中で一番注目されるべき特長は、オンラインVODサービスのNetflixに対応する事だろう。
  
 任天堂は、3DS への動画コンテンツ提供についてNetflix社と提携したことを発表、米国において今夏にも3Dコンテンツが観賞できるようになるという。事実、昨年のE3エキスポで当社が3DSについて初めて公にした際、Netflix側でも3DSにて3Dコンテンツを提供することを事前予告として報道発表しており、今回は任天堂から公式に発表したことになる。 
 開始当初は映画のトレーラーやミュージックビデオなどの配信を予定しており、DCコミックの映画化「GREEN LANTERN」といった、3D映画のトレーラーを3D映像で配信する。近い将来、家電としての裸眼立体テレビも登場してくるだろうが、3DSは現状、米国において3D映画を観賞するのに専用眼鏡無しで可能な、最初の身近なデバイスとなる。 


■テレビ番組や映画を配信するNetflix ユーザー数は1600万人超

 Netflixは膨大な映画作品やテレビ番組を好きなだけストリーミング視聴できる定額制VODサービス。 月額7.99ドルで、会員は1600万人を超える。昨年のNBC Universal 、Disney-ABC Television Groupとの契約に引き続き、先月には米CBSとも非独占的契約を結んでおり、米国4大放送ネットワークと主要CATV局で放送されている番組コンテンツをオンラインで提供できる唯一のサービスとなった。

 Netflixのアカウントには6デバイスまでの制限があるが、これで米国ではパソコン、iPhone、Blu-ray、テレビ、ゲーム機、そして3DSのすべてを使ってサービスが楽しめるようになる。 日本国内では、5月末には動画コンテンツをダウンロードできる「ニンテンドーeShop」に対応予定。 ショップではソフトの販売のほか、日本テレビとフジテレビとの提携で行なう3D動画を毎日配信するサービスが予定されている。


■AT&Tとの提携で全米1万カ所のWiFiに接続へ

 そのほかの仕様として、フィサメイ社長から、米通信大手AT&Tとの提携についても語られた。これにより1万カ所以上あるAT&TのWi Fiアクセスポイントを通じ、3DSから自動的にインターネットに接続できるようになる。また、現在3DSは3D静止画の撮影に対応しているが、将来的には3D映像の撮影機能を追加する予定も明らかにされた。 ただし、具体的なアップデート時期は公表されなかった。

 講演のエピローグには、ゲーム業界の展望について話が戻され、岩田氏より開発者に向けて、「自らの情熱を信頼し、自らの夢を信じてほしい」と、ゲーム開発マインドが語られた。

 任天堂は、不可能なものを可能にしてきた事実として、過去に比類ないデュアルディスプレイを実装させたニンテンドーDSを挙げ、ゲーム開発者が市場発展のためにすべきこととして、ゲームの原点である「イノベーション」と「誰もが体験したことのない驚きを提供すること」に戻らなければならないと語った。 そして最後に1つのメッセージを残した。
 「この25年間、ゲーム開発者は不可能を可能にし続けてきた。 ではなぜ今、止まろうとするのですか?」。 職人魂を取り戻し、情熱を信じ、夢を信じることが、今のゲーム業界の危機を打破する唯一の道ではないか、と岩田氏は語り、幕が閉じられた。 

基調講演の会場は早くから多くの人が詰めかけた

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ゲームシェアの推移を紹介。wiiが圧倒的なシェアを持つ

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AT&Tとの提携でWiFi接続も拡大

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「不可能を可能にしよう」という熱いメッセージが発せられた

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#interbee2019

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