【ハリウッド通信】デジタルドメイン、リライアンス・メディアワークスと提携しイギリスとインドに支社スタジオ設立へ + そしてシドニーにも? 


2011.10.28 UP

米カリフォルニア州ベニスのデジタルドメイン

 ハリウッドの複数メディアが報じたところによれば、インドで最大規模のメディア・コングロマリットであるリライアンス・メディアワークス(Reliance MediaWorks)は、この程カリフォルニア州ベニスに本拠地を置くデジタルドメインとパートナーシップを締結し、ムンバイ(インド)とロンドン(イギリス)に新しいVFXスタジオをオープンする事を発表した。    

■VFX業界のグローバル化を推進
 
これにより、リライアンス・メディアワークスは米カリフォルニア州のVFX業界の更なるグローバル化を推し進める計画だという。

ロンドンとムンバイの新しいVFXスタジオは、テレビ番組やコマーシャルそして映画と、多岐に渡ったVFXを核としたポスト・プロダクションのサービスを提供していく。

これらの作業を行うプロダクション施設は、リライアンス・メディアワークスが既にロンドンとムンバイに所有しているスタジオを使用し、そのマネージメント部分をデジタルドメインが担当する事で運営を行う。

リライアンスの企業グループは以前からハリウッドに対する投資に積極的で、2008年にバーバンクにあった映画フィルム・レストレーション専門のスタジオ、ローリー・デジタル(Lowry Digital)を買収した事例がある。

また、2005年にドリームワークスSKGがパラマウント映画に買収された際、その3年後の2008年に同グループはドリームワークスに対して出資を行い、パラマウントからの独立に貢献した実績もある。

■ドリームワークスの株を所有、デジタルドメインとも提携関係に
 同グループは現在、ドリームワークスの株式を半分所有し、それ以外にもトム・ハンクス、ジョージ・クルーニー、ロン・ハワード監督らの事務所ともビジネス・パートナーシップを結ぶなど、ハリウッド・ビジネスに大きく入り込んできている。

そこに来て、今度はデジタルドメインとの提携である。

ちなみに、デジタルドメインは最近、親会社的な存在である「デジタルドメイン・メディアグループ」を立ち上げ、その専用ホームページ[http://ddmg.co/]も新登場した。

  (VFXスタジオとしてのデジタルドメインのホームページは従来通り[www.d2.com/]が継続されている)


■デジタルドメインが新作映画へ向けオーストラリアにVFXスタジオをオープン
 そして、もう1つ。デジタルドメインは2012年公開の「Paradise Lost」のVFX制作の為に、オーストラリアのシドニーにもVFXスタジオを(こちらは単独で)オープンする事を明らかにした。

 「Paradise Lost」は「アイ,ロボット」の監督を務めたアレックス・プロヤスがメガホンを取り、その映画制作作業すべてがシドニーにて行われるという。

 プリプロに20週間、撮影とモーション・キャプチャに8週間、そしてVFXを含むポスト・プロダクションに72週間が予定されており、米ドルにして$88million相当の制作費が地元に落ち、1,300のポジションが地元での雇用として見込まれる一大プロジェクトだという。

 これには、ロンドンやバンクーバーで加速するVFX産業の誘致世界大戦に競合する為、シドニーがあるニューサウスウェールズ洲政府が遂に参戦したという背景もあるようだ。

 現行のプランでは、デジタルドメイン・シドニーは「Paradise Lost」完成後も継続していく計画だという。

■国内外7カ所に制作拠点
 デジタルドメインのVFX制作拠点には、既にベニス、サンフランシスコ、バンクーバー、そして現在フロリダに準備中のアニメーション・スタジオがあるが、これにムンバイとロンドン、そしてシドニーが追加されると拠点は全7箇所(!)となる。

筆者の個人的な感想としては「ただただ、驚くばかり」というのが正直なところである。
そんなに沢山の仕事がハリウッドにあるのだろうか…と素朴な疑問が頭に浮かぶ。

ハリウッド、特にロサンゼルスでは、映画プロジェクトがVFX作業はおろか撮影までが"全て"ロンドンやバンクーバーへアウトソーシングされる例が相次いでおり、地元映像業界ではこれ以上のプロジェクト流出を心配する声も多い。

アウトソーシングを取り巻く今後の動向から、まずます目が離せない今日この頃である。
(鍋 潤太郎)

#interbee2019

  • Twetter
  • Facebook
  • Instagram
  • Youtube