KDDI研究所、世界初の4Kデジタルシネマ対応H.264リアルタイムエンコーダソフトを開発

2007.11.22 UP

KDDI研究所(ブース番号:8303)は、このほど4Kデジタルシネマ映像に対応したH.264エンコーダソフトウェアを世界で初めて開発し、Inter BEE 2007のブースでデモ展示を行っています。このソフトウェアでは、同社の独自技術である、高速・高性能なH.264エンコーダエンジンとPCベースの並列実装アーキテクチャを応用し、4KデジタルシネマのH.264エンコード処理をリアルタイムに実現します。映像通信グループの内藤整研究主査(2枚目の写真)にお話を伺いました。


■4Kデジタルシネマのリアルタイム配信をPCソフトベースで実現

 現在、H.264によるリアルタイムエンコーダの解像度は、ハイビジョンが上限となっており、4Kデジタルシネマをはじめとした、より高精細な映像への対応が課題となっていました。また、従来のリアルタイムエンコーダシステムは、専用LSIを用いたハードウェア実装によるものが一般的で、より高精細な映像を扱うためには、新規LSIの開発が必要になるなど、膨大な開発コストと時間が費やされるのが現状です。
 こうした背景の中、KDDI研究所では、同社のもつ高速・高性能なH.264エンコーダエンジン、ビデオ並列処理アーキテクチャ、および並列符号化アーキテクチャなどの独自技術を駆使することで、世界で初めて4Kデジタルシネマ相当(4096画素×2160ライン、HDTVの4倍の解像度)のリアルタイムH.264映像配信をPCソフトウェアで実現しました。ブースのデモでは、AMD Opteron 2.4GHzを搭載したCPU8台構成のプラットフォーム環境を用意し、実際に4Kデジタルシネマ映像を送受信するデモを行っています。


■他社に先駆けて家庭への4Kデジタルシネマ配信をリード

 今回開発したH.264エンコーダソフトウェアの大きな特徴は、エンコード処理の高速化を図るとともに、エンコーダエンジンを複数のPCで並列的に協調動作させることで、4Kデジタルシネマに対するリアルタイム処理を可能にした点。また、モバイルからデジタルシネマまで幅広い映像フォーマットに対応するほか、4Kデジタルシネマからスーパーハイビジョン(ハイビジョンの約16倍の解像度)への移行についても、新たにハードウェアを開発することなく、PCの増設やアプリケーションの更新を行うことで柔軟に対応できる点も特徴となっています。
 さらに、デジタル放送やFTTHによる4Kデジタルシネマの配信を視野に入れ、超高圧縮符号化によって20~30Mbpsの低ビットレートを実現。これにより、家庭向けにも4Kデジタルシネマの配信が可能となり、映画館と同等のクオリティによる超高精細画像に対応したホームシアターを楽しめるようになります。「地デジが広く普及し、いまや家庭用AV機器はフルハイビジョン対応が当たり前になりつつあります。そして、フルハイビジョンが普及した次の時代は、4Kデジタルシネマに注目が集まってくるはずです。今回のエンコーダソフトウェアは、そうした時代に先駆けて提案するもので、家庭への4Kデジタルシネマ配信をリードしていきたいと思っています」。


■実用化に向けてさらなる機能強化にチャレンジ

 今回開発のH.264エンコーダソフトウェアの応用例としては、スポーツやコンサートなどのライブ映像を4Kデジタルシネマフォーマットでエンコードしてリアルタイムで配信し、大スクリーンで観戦・鑑賞したり、すでに撮影済みのフィルム映像をデジタル化し、4Kデジタルシネマフォーマットでエンコードした後、編集・オーサリング処理を行って、パッケージ化して販売したり、シアター向けにネットワーク配信するなどが想定されます。
 「現在、4Kデジタルシネマは、ハリウッドを中心に映画撮影などで採用されはじめていますが、業界全体でもこれから本格的に普及が始まると見ています。今回開発したH.264エンコーダソフトウェアについても、実用化は2~3年後で、普及段階に入るのは4~5年後を見込んでいます」。
 同社では今後、さらなる高圧縮化(デジタル放送と同等のビットレート)、およびスーパーハイビジョンをはじめとした高解像度対応などに取り組み、ブロードバンド映像配信サービスにおける実用化に向けた開発を進めていく予定です。

【ニュースセンター】

#interbee2019

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