私が見たInter BEE 2008技術動向(その4、符号化技術、デジタルシネマ、3D関係)

2008.12.26 UP

 ここまでカメラ、制作システム、映像モニターなどの動向を紹介してきた。本号では符号化・ネットワーク関連技術、進展目覚しいデジタルシネマや3D技術などの動向を見てみよう。
 テープレスカメラやファイルベース制作系の進展、さらに放送と通信の連携・融合、IP技術の進展にとってキーになるのが符号化・ネットワーク技術で、それらに関する多種多様な出展が見られた。

 NTTグループ(NTT EL、NTT AT)は同じブースにて、映像配信に関する様々なソリューションを公開した。
放送局の素材伝送やCATV配信などに使える4:2:2対応のハイエンドのH.264 HD/SDリアルタイムエンコーダ/デコーダ、4:2:0対応のミドルクラス機、さらに病院や公共施設など既存の館内共聴網のデジタル化に使えるHD/SD MPEG2エンコーダや小型タイプのMPEG2 IPエンコーダ/デコーダなどを並べていた。また超高精細の4K映像をJPEG2000によりリアルタイムでエンコード/デコーダし、IPネットワークで配信する方式も公開したが、商用化したのは世界でも始めてだそうだ。同方式は多様なフォーマット(4096/3840画素、24P/30P)に対応する高画質なだけでなく、フレーム単位での編集が可能で素材伝送に適しており、耐障害性が高く、運用管理が容易で、デジタルシネマのみならず高精細映像制作のコラボレーション、オペラやコンサート、スポーツイベントのライブ中継、アミューズメント施設での高精細映像の上映さらに遠隔医療診断と言うように多方面で使えるそうだ。

 KDDI研究所はNTTとはスタンスを変え、IPによるコンテンツ制作や配信を支援する様々な技術を実演を交え公開したが、プロだけでなく一般ユーザーにとっても興味があるテーマで来場者も多かった。時代の要請に適うソリューションとして、ハイビジョンのライブ伝送やサーバの映像素材など様々な映像コンテンツを1本の回線で、優先度に合わせ最適品質で伝送、監視できるIP映像伝送システムを公開した。またIPの進展にとって映像品質を高精度に評価することは重要で、人間の主観評価と高い相関性を持つツールを開発した。MPEG2やH.264による圧縮符号化の前後でファイルを解析することで、経験や知識が少なくても従来の画質評価と同程度の判定が可能となり、映像品質管理がやりやすくなると期待される。面白かったのはプロアマ動画自動判別技術で、撮影カメラの違い、撮影技術の力量の差、制作行程の違いなどにより現れる映像の特徴を解析し、高い精度でプロアマの判別をするものだ。来場者がトライし撮影した映像からカメラ操作や画面の安定性などに相当する評価値を計算し独自アルゴリズムを用いてプロ度のスコアを出していた。この仕組みはネット上に氾濫する違法コンテンツの検出にも役立つそうだ。自動的な映像品質評価法についてはテクトロニクスやニコンシステムからもやや似たようなアルゴリズム技術が公開されていた。

機器メーカーやキャリアに加え、ユーザーでもある放送局からの出展も注目を集めていた。フジテレビはInter BEE出展が4回目となり今回も様々な自社開発成果を公開した。同局は以前からテープによるストリームベースからファイルベースワークフローへの移行を進めているが、今回、さらに拡張し系列局との間の集配信のためのシステムとして開発した"MXF Cast"を公開した。これについては民放技術報告会でも報告されていた。またNTT、NHKと共同開発した120GHz帯を用いたFPUも公開したが、最大伝送速度は11.1Gbpsで非圧縮のHD映像信号を遅延無しで最大6ch多重伝送可能だが、120Ghz帯は降雨減衰が大きいためその対策にNHKの誤り訂正技術を使っているそうだ。このFPUはこれまでIBC、NAB、BIRTVなどで公開デモがなされ、北京オリンピックの中継現場でトライアルされたそうだ。IBEネットタイムブースで展示された「MXF局間IP伝送システム」はHD映像に制作者や日時などのメタデータやプロキシ映像を合わせファイル化しIP回線で伝送するもので日本テレビとで共同開発されたものだそうだ。
 
NABでも見られたように世界的なデジタルシネマの進展を反映し、Inter BEEにおいても4k超高精細映像に関連する機器やシステムの展示がかなり増えている。
 米国で評判の"RED Digital"は国内でもアライアンスを構築しつつあり、今回、主力機の4Kカメラ"RED One"を西華産業とヒビノのブースで公開していた。カメラマンがスタビライザーにカメラを装填しブース近辺を動き回り、機動性の良さと画質の高さを見せていた。ノビテックのブースには"Vision Research"(米)の 可変速撮影(1~125fps)可能なデジタルシネマカメラ"Phantom 65"が、NACにはオリンパス製の4Kカメラが出ていた。デジタルシネマ信号を記録する大容量レコーダについては、計測技研の4K対応の非圧縮ディスクレコーダーと軽量で4.3"LCDモニター付でカメラマウント対応のモデル、"dremi"のデジタルシネマ非圧縮ビデオレコーダなどが目についた。
 アストロデザインは4K超高精細映像技術コーナーを設けていたが、ブース壁面にはクリスティの108"スクリーンに背面からJVCのDILAディスプレイで4K映像を表示していた。NHKのスーパーハイビジョン作品やJVCの4Kカメラで撮影した「沖縄美ら海」など大変美しい迫力ある超高精細映像は来場者を魅了していた。ブース内にも4K液晶ディスプレイを数台並べ、グーグルアースの超高精細写真画像や"DALSA"の4Kカメラで撮影した映像を"dremi"のビデオレコーダから再生し映像を見せていた。

デジタルシネマと同様に最近の映像動向で大きなトレンドになっているのが3D関連技術で、今回もかなり出展がありどれも注目を集めていた。
 クオンテルはバージョンアップしたステレオスコピック映像を中央シアターの大画面を使い公開した。ブース横では3D制作専門家集団"3ality Digital"との連携による3D制作システムの実演と3Dカメラ2モデルを展示した。アストロデザインは超小型フルHDカメラ2台で撮影した右目用、左目用の映像信号を特別の合成器を通さずに直接3Dモニターに入力するだけで3D映像を表示できるシステムを公開した。FAシステムズ(松山市)は会場内の情景映像をフルHD画質で立体表示するシステムを公開した。立体カメラはキャノン製、L/R用2CHのHD-SDI信号はLRコンポーザー(NHK-MT製)を経てXpol式液晶ハイビジョンモニターに映し出していた。同社は先のシーテックの際NICTブースにてNHK-MTと共同で、松山道後温泉からギガネット回線を経由し、立体ハイビジョンIP伝送実験を行っている。エルグベンチャーズは医療分野での応用を想定した簡易な3Dシステムを展示した。1台の小型HDカメラで光学的に分割したL/R 2CH映像信号を合成し、前述のモニターの項に記した6.5”小型液晶モニター画面に左右の映像を表示させ、簡易な光学系を通して立体映像を見る仕組みである。

【映像技術ジャーナリスト 石田武久】

◎写真1枚目
リアルタイムH.264コーデック(NTTグループ)

◎写真2枚目
プロアマ判別映像ソフト(KDDI研究所)

◎写真3枚目
フジテレビの技術成果公開

◎写真4枚目
レッドデジタルの"RED One"カメラ(西華産業)

◎写真5枚目
3D制作系、立体カメラ(クオンテル)

#interbee2019

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