私が見た "Inter BEE2007" ―その1・テープレス化の動向

2007.11.30 UP

デジタル化完全移行まで余すところ3年半、放送局の設備整備は順調で高品質のハイビジョン番組制作も増え、デジタル放送サービスエリアは広がりデジタル対応薄型テレビの売れゆきも盛んなようだ。このような状況下、"Inter BEE 2007"が20日から22日まで幕張メッセで盛大に開催され、出展企業数、来場者数とも新記録を達成した。
映像・放送機器関連とプロオーディオ部門に分かれ、最先端の技術・システムやソリューションが展示され、どのブースも見学者が溢れるほど盛況だった。映像系の技術動向について概略を紹介してみたい。

全体動向として、デジタル化により基幹メディアがハイビジョンになり放送と通信の連携が進む状況を反映し、ほとんどの機器・システムがSDTVからHDTV化され、さらにはデジタルシネマからスーパーハイビジョンまで、より高品質映像システムへの展開が見られ始めている。

まず目立ったポイントは急速に進むテープレス化の動きで、各社から多種多様なテープレスカメラや制作システムが出展され、高い関心を呼んでいた。テープレス化は機器が小型・軽量化されるだけでなく信頼性、アクセス性も向上し、取材から制作、送出からアーカイブまでシームレスにリンクされ、番組素材の共用ができ、高い作業性、効率的で低コストと多くの特徴を持っている。従来のテープベースによるワークフローを一新する勢いである。

ソニーは2003年、記録メディアにBD(ブルーレイディスク)を使うXDCAMカムコーダを出し、世界中で大きな販売実績を上げている。今回、一層高性能化したXDCAM HD422シリーズを出展した。撮像素子は1/2"3CCD(画素数1920×1080)を使い、MPEG-2 422P@HLに準拠し記録ビットレート50Mbpsで、1080/60i, 50i,30p,25p、720p各フォーマットに対応する。報道用だけでなく番組制作から映画利用まで想定し、来春販売すると報じている。さらに今回は記録メディアに半導体メモリーを使ったXDCAM-EXも出展した。同機は1/2"3CMOSを搭載し、パソコンにも使われるSxSメモリーカードを使っている。HD、SDの全フォーマットに対応し、早回し、遅回し機能も持ち、映像クリエータでも使いやすい小型、軽量のハンディタイプで、同じ時期に売り出すそうだ。(右端の写真一番上)

松下電器は販売後3年で実績を上げているP2-HDの豊富なラインナップを並べた。記録メディアのP2カードはデジカメなどにも使われるSDカードをパッケージ化したもので、耐振動・衝撃性、メンテナンス性に優れアクセススピードも高く、薄型・軽量のメリットを活かしたテープレスカメラだ。今回出展のハイエンドモデルは撮像素子に2/3"3CCD(1920×1080)を、14ビット量子化で圧縮方式にAVC-Intraを採用し、1080/60i, 50i,30p, 25p、480p各フォーマットに対応し、P2カード5基装備し約80分記録できる。1/3"3CCDを使ったハンディモデルは、P2カード2基実装し約30分記録可能だ。本体重量2.5kgと軽量で、報道取材や映画・CMのクリップ制作などにも使えるそうだ。(右端の写真上から2番目)

池上通信機は10年位前、HDDを用いたカメラを出展したテープレスカメラの老舗である。今回も記録容量100GB(約90分)のHDDを搭載し、編集系とのリンクを考えAvid DNxHDコーデックを採用したエディカムを出展した。撮像素子には2/3"3CMOS(250万画素)を使い、1080/60i, 50i, 24pのマルチフォーマットに対応し、ドラマ番組など高画質向きモデルである。また今回は東芝が開発した半導体メモリーのフラッシュメモリーを記録メディアに使うテープレスカメラGFCAMも出展した。今年のNABで両社共同発表したが、Inter BEEには初出展で大いに関心を集めていた。GF PAKと呼ぶ記録メディアの容量は16・32・64GB(記録時間長:30、60、120分)の3タイプが用意され、撮像素子は、2/3"3CCD(画素数1920×1080)を搭載し、1080/60i, 50i,24pに対応する。(右端の写真上から3番目)

撮影・取材系のテープレス化に対応し、制作から送出までシームレスなテープレスワークフローの提案が各社からなされていた。ソニーはXDCAM-HDやEXでの取材にあわせ、編集、送出からアーカイブまでを統合するニュース制作システムSonaps(Network Production Systems for News & Sports)をメインステージいっぱいで公開していた。(右端の写真上から4番目)
一方、松下電器は取材、編集、送出からアーカイブまでをP2-HDで通す"P2-HD Real Workflow"テープレスソリューションを展示した。

東芝はGFシリーズを使う"Workflow Innovation"を展示した。同社の"VIDEOS"技術を応用した"GF STATION"を核に、取材現場、回線センター、ニュースセンター、送出マスターからアーカイブまでをIP網、ネットワークでリンクする大きな構想である。(右端の写真一番下)
池上も"GF STATION"を核に、映像制作における作業の効率化と品質向上を目指すシームレスなソリューションを提案した。編集系ではアビッドやカノープスのノンリニア装置、オムネオンのビデオサーバなど各社システムとの連携を想定しているようだ。

グラスバレー・カノープスは"K2 EDIUS Share"を核にした報道編集システムを中心に、映像取込から編集、配信までの様々なソリューションを公開していた。その他、テープレス制作システムについては、クオンテル、アビッド、アップル、オートデスク、三友などもコンテンツ制作の実演を交えて公開していたが、複雑高度な映像加工・編集・処理が見る間になされる様子に多くの見学者が熱心に見入っていた。今や放送局やプロダクションの制作現場は、VTRテープによるリニア系からディスクや半導体メモリーなどによるノンリニア系へとシフトしつつあることを実感させてくれた。

次号では高画質カメラや特殊カメラ、映像モニターなどについて動向を紹介したい。

【映像技術評論家 石田武久】

#interbee2019

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