【映像制作の現場から】プロジェクション・マッピング手法による アート表現の新たな可能性 —奥 秀太郎 作 :「白夜-BYAKUYA-」—

2011.11.2 UP

 
 

 

「白夜」より

「白夜」より

バックステージの装置

バックステージの装置

バックステージの装置

バックステージの装置

 奥 秀太郎 監督の最新作であり、映像とダンスによるパフォーマンスイベント「白夜-BYAKUYA-」が、東京・品川にある原美術館で、10月1日(土)、2日(日)に上演された。
 この作品は原美術館内の中庭部分を舞台として、改めて造作された舞台装置をほとんど用いずに、美術館の建物自体に映像を直接投映する「プロジェクション・マッピング」の手法により、原美術館の中庭全体が舞台として演出された屋外上演の作品だ。
 奥秀太郎氏は先進的な映像テクノロジーをいち早く取り入れて、斬新な手法で現代を切り取る映画監督。これまでも映画「赤線」(2004年、出演:中村獅童ほか)では、720/24P撮影可能なHDVカメラでの撮影に挑戦したり、映画「カインの末裔」ではベルリン国際映画祭に正式出品され、世界的にもその評価を受けている注目の映像作家だが、実は舞台演出における映像作品でも、その演出と技術的手法においては日本における第一人者でもある。(石川幸宏)


■舞台映像演出の先駆者

 奥氏が手がけてきた作品の中でも、以前から舞台美術における映像活用には定評があり、宝塚歌劇団や野田秀樹氏率いる「NODA・MAP」、松尾スズキ氏の『大人計画』など、著名な劇団の舞台でも数々の映像演出を手がけて来ており、また自身が演出を手がけた作品でも、2008年に新国立劇場で上演された「KURONEKO」などもほぼ全ての舞台装置が映像演出によるもので構成されている。その他2005年の愛・地球博での大型映像の機材構築設計など、現在頻繁に活用されるようになった、大型映像プロジェクションによるイベント演出や、舞台上の造形物に映像を映し出して様々な演出をする、この“プロジェクション・マッピング”的な手法による舞台演出でも先駆者的な存在だ。
 事実いま現在活躍しているプロジェクション・マッピングのアーティスト/クリエイターも、奥氏の門下生出身という人材も少なくない。

 そんな彼が今回挑んだのは、横20m×高さ5.53mの美術館の壁面を全面スクリーンに見立てて、そこにほとんどモノクロに近い映像だけによる手掛ける映像を投影。そして黒田育世氏のダンスを中心にした出演者の構成と、松本じろ氏の生演奏によるギターと共に、ストーリーが紡がれるという、斬新な手法による作品だ。
 プロジェクション機材には、SANYO 製の高輝度液晶プロジェクター「LP-XF47」と「LP-XF45」を用いて、舞台照明用コントロールコンソールのMAライティング社製のgrand MA on PCで映像出力をコントロール。演者の生の動きに合わせてマニュアル操作でコントロールする。さらにMIDIコントローラーにはベリンガー社のBCF2000 B-CONTROL FADERを用いて、スペインのチームが特別に開発したgrand MAとの連携使用が可能になるソフトウエアを採用、コンパクトながらも技術的にもオリジナルな構成で、かつ高性能なパフォーマンスを発揮できる工夫が随所に活かされている。


■芸術作品の表現手法としてのプロジェクション・マッピング

 その作品性という部分でもレベルの高い演出で観客の注目を浴びた「白夜-BYAKUYA-」のプロデューサーである、奥村千之介氏に今回の試みについて語って頂いた。
「『プロジェクション・マッピング』という単語は徐々にメジャー化しつつありますが、それが広告手段としての一過性の流行ではなく、文化として、芸術作品として成立することを示す為に今回の『白夜』を企画致しました。美術館の白い外壁と、芝生の美しい中庭がパン工場にも教会の墓地にもなる、同じ空間を一瞬で塗り替える映像表現は『壁』という1つの素材に多面性を与えるというプロジェクション・マッピングの本質を表現できたのではないでしょうか。御来場いただいた御客様の中からは『涙が止まらなかった』という最高の褒め言葉をいただきました。今回の企画に参加していただいた黒田育世さんを始めとするすばらしいアーティストの皆様のおかげで、また何より原美術館の多大なる御厚意の元にプロジェクション・マッピングの未来を見せることができたと思います」

 「たった1回の『白夜』という公演によって世の中が変わる訳ではありませんし、文化ができあがる訳ではありません。このような企画を粛々と続けてワークショップや公演作品のパッケージ化などを通して現在の広告手法のみならず映像文化、または様々な興行に対して一石を投じることができたらと思っております。」

Projection Mapping+Performance Vol.1
『白夜-BYAKUYA-』

2011年10月1日(土)、2日(日)18:00開場、19:00開演
会場:原美術館 中庭
作・演出・映像:奥秀太郎
振付・主演:黒田育世
音楽:松本じろ
出演:チャド・マレーン/亜矢乃/畠山勇樹/續木淳平/幸田尚恵/鈴木雄大/
あらいまい/中本昂佑/森一生/青木伸仁/富樫実生/馬屋原彩咲/賀本航
主催:原美術館
企画・制作:株式会社NEGA


なお、11月19日に「白夜-BYAKUYA-」をテーマにしたプロジェクションマッピングワークショップが原美術館で開催される。

★プロジェクションマッピングワークショップ@原美術館 
「The Making of 〝BYAKUYA〟」
2011年11月19日(土)15:00-19:30
(第一部15:00-17:00講義、第二部17:30-19:30実践) 
講師:奥秀太郎(映画監督・映像作家) 原美術館 ザ・ホール
「10月1日、2日に開催し好評を博した「白夜」は、欧米で生まれたプロジェクション・マッピングの手法をさらに進化させ、ダンサーなどの動きに合わせリアルタイムに映像を変化させる、よりインタラクティブなマッピングの進化形でした。
今回のワークショップは、「白夜」を題材にプロジェクションマッピングの基本的な作り方から実践的な手法までを実際に原美術館の中庭に投影しながら実践します。
専門的でありながら小学生からでも参加可能な、興味のある方ならどなたでも楽しめる奥監督の特別講義です!」
参加費:一般3,800円、大高生1,500円、小中生1,000円
学生の方は当日受付にて学生証をご提示ください。
*お申込み→03-3445-0669/info@haramuseum.or.jp
 ①お名前 ②ご同伴者氏名 ③年齢 ④お電話番号 ⑤メールアドレス をお知らせください。
原美術館 http://www.haramuseum.or.jp

 

 

「白夜」より

「白夜」より

バックステージの装置

バックステージの装置

バックステージの装置

バックステージの装置

#interbee2019

  • Twetter
  • Facebook
  • Instagram
  • Youtube