【NEWS】スカパーJSAT 2回目の4K衛星伝送実験を実施

2013.4.1 UP

FC東京対柏レイソルのスタンド
FC東京対柏レイソルのスタンド

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 スカパーJSATは3月9日、サッカーJ1リーグ「FC東京対柏レイソル」の試合を4K映像で衛星伝送する実験を実施した。試合会場の味の素スタジアム(東京都調布市)から、4Kカメラによる試合の模様を、衛星経由で東京・台場のお台場シネマメディアージュに伝送。4Kプロジェクターでスクリーンに投映した。既存のHD機器をベースにシステム構成し、実際の中継に近い態勢を組んだ。同社の4K映像伝送実験は昨年10月以来2回目となる。
(映像新聞 信井文寿)

■4K60pを120Mbpsで伝送
 今回の実験は、スカパーの衛星「JSAT-5A」のKuバンド、35.8MHz幅を使用。変調方式は32APSKで、ビットレートは約120Mbps。映像は3840×2160ピクセル(4K/QFHD)/59.94p。映像コーデックはH.264、音声は5.1chサラウンドで実施した。
 大勢のサポーターを引きで見せるシーンなどで、切れの良い映像にするため、放送の4:2:0ではなく、4:2:2で送っている。
 試合会場での4K制作は、共同テレビの中継車「KR-Advance」を利用した。同車両の既存HD機器に、4K制作に必要な機材を加えている。

■キヤノンEOS C500、ソニーF55、朋栄FT-ONE、アストロデザインAH-4413で7カメ態勢
 今回の実験では、前回同様、キヤノン「EOS C500」(4台)をメインに、ソニーのシネアルタ4Kカメラ「F55」、朋栄のフル4Kバリアブルフレームレートカメラ(スローカメラ)「FT-ONE」、アストロデザインの「AH-4413」の7カメ態勢をとった。
 カメラ位置は、ピッチセンターから試合の進行、ボールの行方を追うメインにC500を使用。HDより広めに撮ってより多くの選手の動きをカバーできるようにした。縦方向から撮るカメラもC500で、これは主に選手の表情を追う。ゴール裏でサポーターやゴールに近い位置での攻防を捕らえるカメラにはF55を配置した。スロー用のFT-ONEはピッチサイドからゴール付近までをカバーしている。
 C500は、スポーツの撮影でズームのカバー範囲が広く、最も良い画質が得られるとの判断から30-300ミリレンズを採用した。
 C500からのライブ映像は、RAW信号のまま2本の3G-SDIで出力し、光伝送装置を介して中継車内のリアルタイムのRAW現像装置「HB-7513」(アストロデザイン)で処理。スイッチャー「MVS-7000X」(ソニー)に送っている。
 この工程では、4K映像をHD(1080/59.94p)4枚として3G-SDI4本で伝送。これにダウンコンバートのHD出力(ディレクターのスイッチング用)の3G-SDI1本を加えた計5本をリンクさせてスイッチャーに送っている。

■既存のHD機器の共用・互換で設備投資負担を軽減
 同実験を統括した有料多チャンネル事業部門マーケティング本部プラットフォームサービス部サービス開発チームサービス開発担当主幹の今井豊氏は、4K映像を4本のHDで伝送したことについて、「4Kの送信用インタフェースがないこともあるが、既存のHD機器を利用することを重視したため。4K専用機で設備を組むことは現実的ではない。既存のHD機器との共用・互換が図れれば、大きな負担なく4K放送が可能になる」としている。
 F55については、小型でENGタイプの4Kレンズを使ってみた。今回使用した各社のカメラは4K撮影ができるとともに、それぞれHD出力ができる。
 カメラからの4K/60pの映像信号は、3G-SDIで中継車側に送ったが、その伝送には各社の3G光伝送装置を使った。C500はテレビカメラ研究所の装置(3G-SDI2入力)、FT-ONEはカナレ電気製、F55はPFUのIP対応装置をそれぞれ組み合わせている。
 スロー/ハイライト用としてスーパーハイビジョンSSDレコーダー「SR-8422」(アストロデザイン)も使用。4Kで複数入力を使うことができる。EVS XT-3も使用した。
 上映会場への伝送は、富士通のHD用H.264エンコーダー「IP-9610」4台を使用。入力側でゲンロックをかけることで4台が協調し、4K映像を送ることができる。この映像をスカパーの衛星中継車からJSAT-5Aにアップリンクし、シネマメディアージュの屋上アンテナで受信。デコーダーを介して、4Kプロジェクターから上映している。

■素材伝送は劇場向け配信を想定したビットレートに
 今回の伝送ビットレート(120Mbps)は素材伝送用であり、劇場向け配信などのビジネスが想定できる。今井氏は実際の放送について、「例えば1トラポンでどの程度のビットレートができるのか、今後カラーサンプリングやフレームレートを含め、さまざまなコンテンツやコーデックなどで実験しなければ決められない」と述べた。
 プロジェクターは、シネマのフル4K解像度(4096×2160ピクセル)に対応したソニー「SRX-T420」を使用。前回の実験では慎重を期して劇場のスクリーンサイズから一回り小さくして上映したが、今回は前回より広い劇場を使い、スクリーンサイズも大きくなっている。
 今井氏は、「レンズの性能で解像感や4Kらしさは変わってくる。画素数だけで映像の見え方は判断できない」と話した。
 今回、送受信のパラボラアンテナを前回より小さくしている。これは、衛星伝送方式「DVB-S2」を拡張し、効率を高めた機材を採用したことで可能となった。これによって送信側は前回の1.8メートルから1.3メートルに、受信側は1.9メートルから1.4メートルと小型化している。
 

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