【NEWS】モバイルの4K化が始まる 年末には4KHEVC搭載のスマホ登場、来年にはスマホで4Kライブ映像送出も可能に モバイルワールドコングレス2014報告(1)

2014.3.7 UP

ソニーモバイルコミュニケーショ ンズのXperia Z2は,4K撮影が可能

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Samsung Electronicsは「GalaxyS 5」を発表。搭載しているSoCはXperia Z2と同じ

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Mediatek のSoC「MT6595」は、4K HEVCでの録画再生を実現する

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Vanguard Videoのリアルタイムソフトウェアエンコーダは、30PのHDを2ストリーム同時にエンコードできる

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 携帯電話を中心とした移動体通信の世界的展示会「モバイルワールドコングレス2014」(主催=英GSMA)が2月24日より27日までの4日間バルセロナ(スペイン・カタルーニャ州)の展示会場「フィラ・グラン・ビア」にて開催された。通信機器やサービスの事業者が移動体通信事業者に売り込みを行う場として活況を呈していた。なかでも、4KについてはシステムLSI(SoC)が登場し、携帯電話への搭載が急速に普及すると見られる。(映像新聞 論説委員/日本大学 生産工学部 講師 杉沼浩司)

■世界から「Cクラス」が集う場所
 モバイルワールドコングレス(以下、MWC)は、比較的新しい展示会である。前身となったイベントは1987年に始まったが、現在の開催地バルセロナに移ったのは2006年、この名前となったのは2008年だ。2008年当時で参加者は5万5000名というから展示会としては規模は小さな方であろう。
 しかし、その影響力は強大だ。21世紀に入るまで、携帯電話は3月にドイツで開催される「CeBIT」で見るものだった。ところが、MWCの前身である「3GSMワールド」への出展人気が高まり、CeBITからは急速に携帯電話製造事業者や移動体通信事業者が消えていった。一時は、日本のNTTドコモもCeBITに展示していた。しかし、今、CeBITに出展している通信事業者は独ドイツ・テレコムと英ボーダフォンくらいである。サムスン電子などの携帯電話製造事業者は、全く出展していない。移動体通信の重心は、ハノーファからバルセロナに完全に移動した。
 MWCは、通信事業者に機器・サービス事業者が売り込む場である。それゆえ、来場者は最高経営責任者(CEO)、最高技術責任者(CTO)といった各分野の最高責任者が多い。主催者はこのような最高責任者を、英文字の頭を取って「Cクラス」と呼んでいるが、昨年、今年とも来場者の半数以上を占めている。
 今年の来場者は8万人以上(付帯イベントと合わせて8万5000人以上)、出展企業数は1800社以上とされている。なお、昨年は来場者数7万2000名、出展企業数は1700社以上、とされていた。
 参加費は非常に高価で、展示会のみのビジター・パスが749ユーロ、コンファレンスを聴講できるシルバー・パスが2199ユーロ、最上位のプラチナ・パスは4999ユーロとなっている。この価格から見ても、「新製品目当ての一般消費者」を向いた展示会ではないことが分かる。
(上写真:エリクソンのブース。ブースは、機材調達の権限を持ったエグゼクティブ達で埋まっていた。来場者の半数以上が何らかの分野の「最高責任者(Cクラス)」であるとされている)

■進むモバイルの4K化
 今回、ソニーモバイルコミュニケーションズは、4K撮影機能搭載の「Xperia Z2」を出展して話題を呼んだ。このスマートフォンは撮影もさることながら、ディスプレイの表現力が格段に向上している。説明員によれば、「SoCの機能によるのではなく、ディスプレイドライバに画質改善回路を入れ込んだ」とのことである。同じSoCを使ってもこの色は出せない、というわけだ。
 ソニーと同時期に新型スマートフォン「GalaxyS 5」を公開した韓国のサムスン電子は、一般来場者に新型機を見せなかった。報道関係者・アナリストのみが入れる別室で公開し、滞在時間は最大1時間に限っていた。GalaxyS 5は、指紋認証が新機能として大きく示されている。4K撮影能力はないが、搭載しているSoCはXperia Z2と同じだ。次のモデルチェンジで追いつくだろう。

■4K HEVCエンコーダもスマホに搭載へ
 次世代符号化方式として知られるHEVCは、エンコードの処理が複雑でエンコーダが作りにくいことが知られている。そのため、4KのカムコーダでHEVCを搭載したものはない。
 しかし、スマートフォン用SoCで4Kエンコーダを搭載したものが現れた。台湾のメディアテックが開発したSoC「MT6595」は4Kのエンコーダ、デコーダを双方を搭載している。デモでは、50Mbps程度の動画を再生して見せた。エンコードは見せていない。このSoCは、LTE(リリース9)対応のモデムを搭載し、GNSS(GPSやガリレオといった衛星ナビゲーションシステムの総称)受信機能、5種の無線LAN機能(802.11a/b/g/n/ac)も備えている。CPUはARMコーテックス17によるコアを8コア備えている。同一のARMコアで8つを備えたのは世界初と同社は述べている。これまでの8コアは「ビッグ・ミニ」と呼ばれる方式で、強力なコア4つと、中庸な性能だが消費電力が低いコア4つを組み合わせていた。そして、基本的には強力コア4つか低消費コア4つかのどちらかの組しか動作しない。メディアテックは、8コア全部が動作するところが異なる。MT6595を搭載したスマートフォンは、今年年末頃までには出荷される見込みだ。
 クアルコムとメディアテックは、スマートフォン用SoC市場を二分する勢力である。その双方が4K対応を果たした。更にHEVCでの記録再生も始まったことから、4KとHEVCが一気に普及しそうだ。

■HEVCのソフトエンコードも進展 60P対応も登場
 HEVCのソフトウェア・エンコーダも進展した。米インテルのブースにおいて米バンガード・ビデオは、インテルのコアi7プロセッサを用いたソフトウェア・エンコーダを技術展示した。会場では、2ストリームのHD(1920×1080@30P)をエンコードしてストリーミング出力していた。同社のTJノバック氏によれば「ソフトウェアは60Pに対応しているが、ソース映像が手許に無かったため30P 2ストリームをデモしている。ソフト自体は60Pに対応する」とのことだった。製品化は今年後半の予定という。
 同社は、これまでコアi7にFPGAを組み合わせたリアルタイム・エンコーダや、最上位のサーバ用Xeonプロセッサを複数用いたリアルタイム・エンコーダを開発している。今回は、コアi7プロセッサが内蔵するGPUを活用することで、外付けのFPGAや複数CPUを用いなくてもソフトウェア実装が可能となった。GPU利用部分は、業界標準のAPIである「OpenCL」を用いて記述している。このため可搬性に優れ、今後GPUの並列度合いが異なるハードウェアが登場しても、容易に対応できる。もう少し強力なハードウェアが登場すれば、4Kのリアルタイム処理も可能になるだろう。この種のソフトウェア・エンコーダが普及すれば、インターネットへのアップロードやストリーミングがかなり容易に行えるものとなるだろう。ライブ4K送出は、スマートフォンやPCでも行えるようになり、参入障壁はますます低下する。同時に「放送用エンコーダの完成を待って」などと言っていては何もできない。世界は、非常に速く動いている。

■「モバイルワールドコングレス2014 緊急セミナー」開催
 【日時】2014年3月18日14時30分開場、15時開始(終了17時30分予定)
 【会場】フクラシア東京ステーション 会議室L
東京都千代田区大手町2-6-1 朝日生命大手町ビル5F,6F ・JR[東京]駅・地下鉄[大手町]駅 地下直結 ・JR[東京]駅・日本橋口徒歩1分 ・JR地下鉄[大手町]駅 B6出口直結
 【講演内容】(敬称略)
 「MWC2014から見えてきたモバイル/ワイヤレス業界の新たな胎動」(リックテレコム取締役/「月刊テレコミュニケーション」編集長 土谷宜弘) 50分 資料付き
 「IoT、新興市場、高性能化:対応急ぐ通信機器業界」(映像新聞社 論説委員/日本大学 生産工学部 非常勤講師 杉沼浩司)50分 資料付き
 「MWCインサイダー」(SalesGate International 日本代表 トム・サトウ)
 【事前申し込み】会場の収容人数に限りがあるため、参加の際は事前に申し込み
 【参加費用】ツアーご参加者:無料、ツアーご参加者以外の方:5,000円(税込み)
 【支払い方法】申込みされた方へ請求書を送付。※3月17日までに振込み
 【申込先】(電話またはメールで申込み)JTBコーポレートセールス 本社営業部 第五事業部 日賀野(ひがの)
  電話/(03)5909-8119 メール/g_higano792@bwt.jtb.jp
 

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#interbee2019

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