【NEWS】エレメンタル社による次世代放送サービスに向けた4K/60p HEVCリアルタイムエンコード技術

2014.2.18 UP

個別デモ会場では4K/30p@20Mbps/HEVCのストリーミングを、ブロードコム社製のSoCを実装したテレビ向けセッ
大阪マラソンのイベントで使用された試作機 (エンコーダーは積まれた機材の一番下)

大阪マラソンのイベントで使用された試作機 (エンコーダーは積まれた機材の一番下)

 今年の1月に開催されたCES2014は、家電の見本市でありながらも次世代放送を可能にするための受信機、サービス業者に加えて、それらを実現するための先進的テクノロジーが登場し、次なる米国放送トレンドの黎明期がうかがえるイベントでもあった。 
 国内で予定されている4K試験放送では、映像は4K(3,840×2,160) /60p、そしてこの映像情報量を伝送するために必須な高圧縮コーデックとしてH.265/HEVCが採用される見込みだ。
これらを実現すべく技術開発は進められており、NexTV-Fでも昨年末には、実際の衛星放送に近い形で4K/60p@35MbpsのHEVC映像ストリームをリアルタイム伝送するデモンストレーションを行なっている。 実際のストリームのビットレートは、BSの1トランスポンダ(中継器)で3番組を伝送できる25Mbps程度が目標だという。
 4K/60pのHEVCリアルタイムエンコードを可能にするハードウェア(LSI)の早期開発が望まれている中、映像プロセッシング技術を開発する米エレメンタル・テクノロジーズ社()から、ソフトウェアベースで実現するシステムがCESで紹介された。同社は会場外にて4K放送サービスを検討している潜在事業者へ個別にデモを行っていたが、このデモ内容は、昨年12月初旬に既に英ロンドンにて実施したもの。 


※(上写真) 個別デモ会場では4K/30p@20Mbps/HEVCのストリーミングを、Breadcom社製のSoCを実装したテレビ向けセット・トップ・ボックスを介してディスプレイに再生するデモも行なわれた。

 エレメンタル社といえば、昨年10月にケイ・オプティコム社が協賛している「大阪マラソン2013」において、HEVCリアルタイムエンコードによる4K映像伝送およびパブリックビューイングを、世界で初めて実現させたエンコーダー提供者として知られている。当時は1台(2RU)の試作機で4K/30pのリアルタイムエンコードを実現させたが、その数か月後には2台で並行処理をさせることで4K/60pまで実現させた。これはCPUそしてGPUのパワーを使う独自の映像処理技術によるもの。汎用のハードウェアを活用することで、最速ペースで処理パフォーマンスを向上させられるとしている。

 デモ会場では、Planner社製の84型ディスプレイに4K/60p@14Mbps(VBR)ストリームの再生が行われていた。中継放送で利用するためにも、本来は4Kカメラなどによるライブソースをベースバンドで入力してエンコード処理を行うが、今回はあらかじめREDカメラで収めた映像をH.264@80Mbpsに変換しておき、ネットワーク経由でエンコーダー側に取り込みリアルタイムに映像処理をし、PCベースのHEVCソフトウェアデコーダー(フラウンフォーファー社製)からディスプレイポート経由でスクリーンに再生している。3G-SDI系統からの映像信号入力については現在、3月時期のハードウェア(ボード)ドライバの更新を待っているところだという。入力からディスプレイへ再生されるまでの遅延は7秒程度。復元側がハードウェアベースになることで、このタイムラグは減少するとしている。

 デモは84クラスの大型ディスプレイにサッカー試合のコンテンツで疑似中継放送的に見せていたが、スローモーションで見られる煙、試合会場の観客、芝生や被写体アップでの髪の毛や皮膚などでも、圧縮による画像のにじみやブロックノイズといった肉眼で不快感として感じられるものは全く見られなかった。25Mbps程度にビットレートを上げれば色の奥行き感はより表現できるという。今回の個別デモは2日間、各30分程度で行われ、米国、南米、ヨーロッパでの有数放送局やコンテンツ配信業者たちの来場で全く空き時間がなかったという。 
 CESのブース展示会場でも同社のエンコーダーを使って生成した4Kコンテンツのストリーミングが様々な企業ブースで見られた。Samsung社ブースでは、ComcastのXfinityサービスによる4K VOD、隣接コーナーのDirecTVからは次世代4Kテレビサービスとしてライブストリーミング、またはアクションカメラGoPro社ブースでの4Kストリーミング、Qualcomm社ブースではSnapdragon 850を搭載したタブレットよりリアルタイム4Kコンテンツ再生、STMicroelectronics社やBroadcom社といったハードウェアチップメーカーからのプロトタイプのデモなど。

 今春のNABでは、ハードウェアベースの4K/60p/HEVCリアルタイムデコーダーも各メーカーから登場し、ライブカメラからのベースバンド入力対応で実用性ある4K/60p映像のリアルタイムエンコーディングが紹介できるとしている。 


ビデオ:http://youtu.be/2SC4j7OS92U
(昨年12月にロンドンで発表した際のデモ。 84型ディスプレイ上の再生の模様をHDカメラでそのまま撮影してYouTubeにアップロードしたもの)

大阪マラソンのイベントで使用された試作機 (エンコーダーは積まれた機材の一番下)

大阪マラソンのイベントで使用された試作機 (エンコーダーは積まれた機材の一番下)

#interbee2019

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