【NAB Show 2012】NABに見る映像技術・映像ビジネスの新潮流(1)セカンドスクリーンとハイフレームレート

2012.5.31 UP

セカンドスクリーンは大きなビジネスチャンスであることを示すピーター・ウィルソン氏(EDCF)のスライド
モバイルTVの業界団体による「ながら視聴」のポスター

モバイルTVの業界団体による「ながら視聴」のポスター

マーク・シュビーン氏(右)は、”ながら”を描いたパンフレットを示し「映画で成立するか」と疑問を呈した

マーク・シュビーン氏(右)は、”ながら”を描いたパンフレットを示し「映画で成立するか」と疑問を呈した

満席となったHFRのセッションでは、HFRの先駆者ダグラス・トランブル監督も質問に立った

満席となったHFRのセッションでは、HFRの先駆者ダグラス・トランブル監督も質問に立った

■「セカンドスクリーン」映画の世界にも登場

 4月14日から19日までの6日間、米ネバダ州ラスベガスで開催されたNAB Show2012では、放送、映画におけるさまざまな新製品、新技術が登場した。今後の放送、映画業界のトレンドとも言える動きを4回にわたって紹介する。
 一回目の今回は、映画業界でこれまでに語られることのなかった新たな用語として、「セカンドスクリーン」という言葉が登場したことを紹介する。「セカンドスクリーン」は、テレビの世界で使われてきた用語であったが、今回は映画におけるセカンドスクリーンのあり方で、活発な議論がなされた。
 このセカンドスクリーンとともに、近い将来の映画技術という位置づけでHFR(ハイフレームレート)も紹介された。映画の画質を劇的に改善すると期待されるHFRの原理と実装が語られた。

 映画業界における、この二つの新たな用語が登場したのは、NABの会期の最も早い時期に開催される催しの一つ『Technology Summit on Cinema』においてであった。同サミットは、4月14日、15日の2日間にわたってS222会議室で開催された。昨年まで「Digital Cinema Summit」との名称であったが、映画のディジタル化に限らず、より広範な技術を追求するとの意図で名称変更がなされた。映画界の先端技術について報告、討議を行う場として、映画業界のみならず、世界の映像技術者が注目する催しだ。S222会議室には、約600名の専門家が集まり、活発な意見交換がなされた。


■「マルチスクリーン」ならぬ「セカンドスクリーン」とは

 今年のNABで、セッション(講演会)会場を席巻していた言葉が「セカンドスクリーン」だ。これは、これまで語られていた「マルチスクリーン」とは全く異なる概念である。
 マルチスクリーンは、同じコンテンツを複数種類の装置(デバイス)上で消費することを指している。典型的な例としては、テレビ、PC、携帯電話(スマートフォン)といった組み合わせだ。これまで、テレビだけに送っていたコンテンツを、PCや携帯電話にも送ることで、収益の拡大を図る動きはかなり前からあった。しかし、本格化したのは最近である。

 セカンドスクリーンは、主スクリーン(「メインスクリーン」または「プライマリ・スクリーン」と呼ばれている)と関連はするが、異なる内容が示される。このような方式の背景には、「マルチタスキング(”ながら”の意)」が若い世代で当たり前の行動となっていることにある。彼らは電話で話しながらSMS、テレビを見ながらネットで検索、食事をしながらメール、など複数のことを並行して行う。

 この世代を対象に、メインスクリーンのコンテンツに関連した情報をタブレット等に送り、関連した行動(例:SMS、SNS)へ誘引すると同時に広告も送ろうとする動きが急激に広がっている。今回のNABで、広告分野から技術分野のセッションに至るまで、横串的に貫いた話題が「タブレット等に情報を送り、コンテンツ価値を高めること」であり、これがセカンドスクリーンだ。

 これまで、感覚的に「マルチタスキング」が多いことは言われていたが、NAB直前に数字で示された。米国の調査会社ニールセンが「テレビ視聴中にタブレット、スマートフォンを使っている人の率」を報告したのだ。この率は米国で45%(一日一度以上使用する人)、最も低いドイツでも28%(同)となった。母集団の年齢層は全域にわたっており、デジタル機器へ感性が鋭い世代で測れば、より効率になると容易に推測される。


■「メイン」と「セカンド」の同期に認識技術を使用

 タブレットに番組関連サービスを実施させるためには、タブレット側が現在流れている番組が何であるかを知る必要がある。単に番組名のみならず、何分何秒目であるかの把握も必要だ。これで、番組に同期したサービスを行える。
 同期のために複数の方式が考えられているが、テレビ放送側に何ら設備負担を求めずに行えるのが、「自動コンテンツ認識(ACI)」だ。これは、番組の音響を数秒分採取し、フィンガープリンティング技術で同期を取る。
 フレーム単位での番組位置が分かれば、タブレット側では番組内容に同期した広告や、情報提供が容易に行える。テレビ業界は、この機構により番組の視聴率を高め、同時に広告価値を高めることを狙っている。
 映画の場合、上映時に無線LAN等でフレーム情報を放送すれば、ACIを用いずとも同期は容易に行える。ただし、観客の持ち込んだ無線LAN機器との干渉が起きないかといった安定性の検証が必要になる。どの方式で同期を取るかは未定であるが、同期は技術的な問題とならない。


■セカンドスクリーンが生み出す「新たな広告スペース」 FOX、ユニバーサルが映画対応コンテンツを提供

 セッション「エンハンスド・シネマ:セカンドスクリーンとその先」では、ブルーレイ・ディスクでセカンドスクリーンを実現した「ポケットBLU」について、米デラックス・デジタルスタジオのサプシュ・ショリンガプラム氏が実装状況を解説した。FOX、ユニバーサルから対応コンテンツが登場しているという。

 米メディアシステムズ・コンサルティングのアル・コバリック氏による同期技術の解説に続き、英EDCF(欧州デジタルシネマ協議会)のピーター・ウィルソン氏がセカンドスクリーンで実現可能なサービスを示した。同氏は、プロダクト・プレースメントとの連携は当然のこと、地元企業・商店の広告機会も増えると指摘し、映画館の地域密着性を活用することが考えられるとした。また、タブレット画面に「タクシーを呼ぶ」といったボタンが登場することも考えられると述べ、従来に無かったサービスの実現可能性を示した。

 ただし、セカンドスクリーンの映画への適用には懐疑的見方もある。パネルディスカッションに参加した米シュビーン・カフェのマーク・シュビーン氏は、特別な環境を求めて入場する映画館で”ながら”を行えるか疑問を呈していた。


■画質改善効果を持つハイフレームレート

 劇場映画は、長年24fpsで上映されてきた。一部には「これこそ、映画の味だ」という主張もあるが、サミットではより高画質を求めてHFR化が真剣に議論されている。昨年は、ダグラス・トランブル監督が、60fps以上の可能性について言及した。
 今年は、まずフレームレートと視覚の関係を米カリフォルニア大学バークレー校のマーティ・バンクス教授が解説した。同教授は、3Dの認知を含む視覚研究で知られている。ここでは、HFRの利点と、3D上映時の左右同時投射が望ましいことが示された。

 HFR(48fps)のワークフローを完成させたニュージーランドのパーク・ロード・ポストプロダクションのフィル・オートリー氏は、同社内で行ったフレーム数とシャッター開角度のテストシーケンスを上映し、最良点を探るプロセスを紹介した。同氏は、48fps/270度を最良としている。同氏は、大量のデータと格闘している様子であったが、その扱いには自信を持っていた。同社は「HFR時代に完全に対応する」としている。なお、パーク・ロード・ポストプロダクションは、VFXで知られるウェタ’デジタルなどとグループを形成している。

 米テクニカラー・クリエイティブサービスのニック・ミッチェル氏は、現在でもスクリーンでの照度によって異なるバージョンのDCP(デジタルシネマ・パッケージ:映画館送付用ファイル)が作られており、HFR化で更に複雑化する懸念を示した。
 独フラウンフォーファー研究所のジークフリード・フォッセル博士は、フレーム数、シャッター開角度、HFR撮影と通常再生の互換性、3Dの視感などの関係を調べる実験について説明した。この講演には会場からいくつもの質問が出るなど関心の高さをうかがわせた。
(映像新聞 論説委員 杉沼浩司)

モバイルTVの業界団体による「ながら視聴」のポスター

モバイルTVの業界団体による「ながら視聴」のポスター

マーク・シュビーン氏(右)は、”ながら”を描いたパンフレットを示し「映画で成立するか」と疑問を呈した

マーク・シュビーン氏(右)は、”ながら”を描いたパンフレットを示し「映画で成立するか」と疑問を呈した

満席となったHFRのセッションでは、HFRの先駆者ダグラス・トランブル監督も質問に立った

満席となったHFRのセッションでは、HFRの先駆者ダグラス・トランブル監督も質問に立った

#interbee2019

  • Twetter
  • Facebook
  • Instagram
  • Youtube