【NEWS】Ooyala ビッグデータから見る動画配信の最新動向分析 スマホでも長尺コンテンツ視聴が増加

2014.6.17 UP

 
日本ではスマートフォンによる動画視聴が突出

日本ではスマートフォンによる動画視聴が突出

キース・バッジ氏

キース・バッジ氏

磯崎氏

磯崎氏

 オンライン映像配信プラットフォームを提供するOoyala(ウーヤラと発音)は5月27日、都内において、「ビッグデータから読み取る動画配信の最新動向と将来予測 動画配信でビジネスを成功に導くためのヒント」と題して記者向け説明会を実施した。
(IT・放送技術コンサルタント 隅倉正隆)


 Ooyalaは、元Googleのエンジニア3名により、ビッグデータによるビデオアナリティクス(視聴分析)に特化した企業向けのクラウド型オンラインビデオプラットフォームを開発するため、2007年アメリカカリフォルニア州マウンテンビューにて創業した。日本においては、2010年からビジネスを展開している。
 Ooyalaは現在世界130カ国6000サイトへ動画プラットフォームを提供し、日本では、Yohoo! JAPAN、NTTスマートコネクト、IIJとパートナーを組み、日本テレビやひかりTVのPC向けサービスなどで利用されていという。

■ ビックデータによるアナリスティックスが最大の武器
 Ooyalaは毎月130カ国にわたる約2億人のユーザーの匿名化された固有データから、毎日数十億に上る動画視聴イベントをリアルタイムに分析している。カントリーマネージャの磯崎 順信氏は「他の配信サービス事業者とは異なり、動画配信ビジネスの収益向上を支援するためのリアルタイムに収集したビックデータのアナリスティックスが最大の武器。視聴習慣を測定・分析したリアルタイムなアナリティクスはメディア企業や消費者ブランドの顧客増加、携帯コンテンツやマルチスクリーン放送による収益増加の手助けとなっている」とOoyalaの強みを説明した。

■ 動画視聴の形態がスマートフォンへシフト。長尺コンテンツの消費が拡大
 このOoyalaの強みでもあるデータ分析結果から、現在の全世界における動画視聴の最新動向をアジアパシフィック担当Vice Presidentであるキース・バッジ氏(Keith Budge)は次のように説明した。「全てのオンライン・ビデオの視聴スタイルは、スマートフォンやタブレットからの視聴のシェアが3年で7倍以上、オンライン・ビデオ視聴全体の1/4にまで伸びている。そして、スマートフォンによる視聴は、ユーザー投稿型の短尺コンテンツではなく、プレミアムな長尺コンテンツ視聴へと移行してきている」と説明した。
 さらに同社の調査によると、スマートフォンによる30分以上の長尺コンテンツ視聴が全体の44%。タブレットでは35%。また、スマフォによる1時間以上の長尺コンテンツの視聴も全体の31%スマートフォンによる動画コンテンツの視聴傾向が顕著になっている。特にコンサートやイベント、スポーツなどのライブ視聴もこの傾向にあるという。(上写真)

■ 日本はスマートフォンによる視聴が世界平均の2倍
 日本におけるスマートフォンによる動画視聴の傾向は、世界と比べて特出しているという。同社の調査によると、PCについて日本は73%、グローバルでは81%と視聴時間の割合がほぼ変わらないが、タブレットでは日本が3%、グローバルは9%と若干少なめだ。一方スマフォについては、グローバルが10%、日本がオンライン視聴全体の24%を占め、世界平均の2倍になっている。
 また、ライブ視聴については、スマートフォンによるライブ視聴がグローバルが4.3%に対して、日本は13.2%と世界平均の3倍になっている。さらに、スマフォについては、iPhoneとAndroidスマートフォンを比較すると、日本を含めたAPACではスマフォでの動画視聴は82%(その中で日本は76%)と依然としてiPhoneが強い。なお、北米では60%、欧州では55%のスマフォによる動画視聴はiPhoneだが、中南米ではAndriodが53&とiPhoneを若干上回っている。

■ 日本における動画配信ビジネスの課題
 加えて日本における動画配信環境は、オンライン・ビデオ・プラットフォーム(OVP)やデマンド・サイド・プラットフォーム(DSP)、サプライ・サイド・プラットフォーム(SSP)、リアルタイム・バイディング(RTB)、データ・マネージメント・プラットフォーム(DMP)など、より効率的にビデオを配信し、収益を上げるための技術環境・プラットフォームは国内でも整ってきており、また様々なデバイスでビデオを楽しく事が可能になってきている。しかし、総務省の「平成24年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、テキスト系WEBサイトが平均で24.5分。年代別では10代が44.7分、20代が50分、30代が29.3分、40代が23分、50代が14.8分、60代が5.7分となっている。一方、ネット系動画の視聴時間は全体で6.8分。年代別では10代が22.8分、20代が18.5分、30代が3.7分、40代が3.2分、50代が2.5分、60代が0.9分となっており、オンライン動画を利用する割合はテキストメディアと比較して低い。

 この中の動画視聴しているユーザーは、「主にYouTube、ニコニコ動画、FC2のフリー動画が全体の47%を占め、無料動画が多く消費されている。さらに、弊社の調査結果からもユーザーは長尺コンテンツ視聴の割合が高いことから、国内のインターネットユーザは、良いサービスを待っている状態になっていると考えられる」と磯崎順信氏は分析する。
 さらに、コンテンツの障壁もあるという。海外では広告型VODの流れがかなり主流になってきている。また、国内ユーザーは無料動画を多くみているという傾向もあるが、「国内における広告型VODに関する権利処理が海外と比べて若干遅れている。今後広告型VODコンテンツがそろってくると思っている(磯崎順信氏)」と説明した。

 オンライン動画を提供しているサイトの作り方・見せ方についても課題があると磯崎順信氏は分析する。「米国のワシントンポストが提供する動画専用サイト(PostTV)では、文字が少なく、動画を見るということを主においており、ユーザーエクスペリエンスを中心に展開している。これによりユーザーは読みにくるのではなく、動画を見にきているため、メジャーでプレミアムなコンテンツでなくとも、月間数百万以上の再生回数を稼ぐことは可能で、米国のワシントンポストのように成功している海外サイトは多い」という。また、「コンテンツをどのように見せるか、使い勝手、見やすさ、レコメンデーションなど、その時、そのユーザーにあったコンテンツを如何に手軽に見せてあげるかが重要になる」という。さらに、「コンテンツは、流動性の高い資産であり、何がウケて何がウケてないのか、リアルタイムでエンゲージメントを図ることにより、ユーザーが求めているものをより効率的に提供することにより収益性の最適化を図ることが可能」と説明した。

■ 「動画元年」はまだ先
 7年前から「動画元年」と言われ続けていることについて磯崎順信氏は、「現時点ではまだその時期に来たという認識は無い」という。無料動画が沢山あり、ユーザーは有料コンテンツよりも無料コンテンツへ動く。また、無料コンテンツを多く消費しているため動画広告は受け入れられている。しかし、動画広告市場は、米国と比べて3%しかなく、インターネット広告全体で動画広告の割合も米国の1/4。「配信コストやコンテンツのコスト、プロモーションのコストなどのコストに対して広告収入やVODの収入とか、動画単体の事業でみて、儲かっているところが少ない。そういった所が黒字になれば、初めて動画元年になると思っている」と述べた。

日本ではスマートフォンによる動画視聴が突出

日本ではスマートフォンによる動画視聴が突出

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#interbee2019

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