【NEWS】テレビ朝日 公衆IP網で4K/60pライブ伝送 H.264で約82Mbpsを実現 高性能コンバーターと伝送路の最適化が奏功

2014.2.6 UP

左から長谷川功氏、長谷川裕氏

左から長谷川功氏、長谷川裕氏

左から近藤氏、胡子氏

左から近藤氏、胡子氏

左から藤田氏、小野田氏

左から藤田氏、小野田氏

 テレビ朝日(東京都港区)は昨年11月半ばから月末にかけて、4K/60p映像のIP伝送実験を実施した。一般的なインターネット網を利用したことが特徴。H.264符号化により約82Mbpsの映像レートで4K/60pのIP伝送を実現した。IP伝送は、費用やオペレーションの面で負担が大きい専用回線に対して、安価、容易に4Kの伝送やパブリックビューイングなどが実施できる。実験のポイントは、高性能のTS/IPコンバーター、伝送路を最適化できるロードバランサーという機器を採用した点だ。(映像新聞 信井文寿)
※上写真はテレビ朝日のウェブサイト

■TS/IPコンバーターの高度な誤り訂正機能が効果
 実験は、テレビ朝日アーク放送センター内に4Kカメラ、エンコーダーをはじめとする送信システムを構築。ここからのライブ映像をインターネット回線でテレビ朝日本社に設置した受信システムに送り、同7階に設置した4Kモニターに表示した。
 4Kカメラ「PVM-F55」を主に再生機として使用。内蔵のプロSxSカードから、これまで4K収録したスポーツなどの映像素材を、3G-SDI(1080/59.94p)4本で、H.264エンコーダー「IP9610」(富士通)2台に、各2本を入力してTS信号に切り替える。
 この2本のTSをマルチプレクサー(4ch-MUX/日立)で1本のTSに多重化。これをTS/IPコンバーター「IF-7800」(NEC)でIPに変換した。
 技術局制作技術センターの長谷川功氏は、同コンバーターが実験のポイントの一つとしたうえで、「公衆網を使うことを前提に高性能のコンバーターを選んだ」と話す。ARQやFECといった高度な誤り訂正機能が使えることから選択したという。

■ロードバランサーが回線の不安定さを補完
 同機で変換したIPはロードバランサー「Peplink balance1350」(Peplink)で、2本のインターネット回線で伝送した。4K/60p映像は基本的に1本の回線で送るが、ロードバランサーがデータを計測し、2本の内の1本の回線が不安定になった場合、瞬時にもう1本の回線に切り替わる。不安定な公衆回線を補完するための技術で、同実験の特徴の一つである。
 インターネット回線はフレッツ光ネクストビジネスタイプを使用。回線は、KDDIのイーサエコノミー光ネクストビジネスと、NTTコミュニケーションズのOCN光。同サービスは最大1Gbpsとなっているが、実際は100Mbpsほどである。
 同回線によって、IPの4K/60p映像は回線が接続されているテレビ朝日本社内のVT室に伝送した。ロードバランサーからTS/IPコンバーターを介してTSに戻し、電気・光コンバーターで光信号に変換。7階食堂に設置した光・電気コンバーターでTSにし、デマルチプレクサーからTS2本をそれぞれH.264デコーダー「IP9610」(富士通)に伝送している。
 デコーダーからは各2本計4本の3G-SDI信号が出力され、SDIディスプレーポート変換器「SD-7068」2台を介して4Kモニター「FDH3601」(EIZO)に表示した。
 映像の解像度は3840×2160ピクセル/59.94p。H.264符号化で映像レートは約82Mbpsだった。映像レートは、コンバーター、マルチプレクサーの制約によるものだという。「93Mbpsも試したが、パケットロスや映像の安定性の点から82Mbpsを選択した」(長谷川氏)

■当面はPVやサイネージに利用 「安価なコストがネットのメリット」
 総務省の検討会では、H.264の約2倍の効率を持つHEVC(H.265)によって4K映像を30-40Mbpsで伝送することが検討されている。それと同等の画質になることも82Mbpsを試した理由だ。
 今回の実験について長谷川氏は、「現時点ではIP伝送をBSやCSの4K放送本線に使うことは難しい。当面はイベントやライブ会場などのパブリックビューイング、サイネージといった比較的リスクの小さいシーンで試していくのが現実的」と話す。
 今回の回線は、半月単位で契約しているが、その間はフルに回線を利用できる。衛星などと比較して圧倒的に費用が安いこともメリットだ。
 回線構築を担当した技術局放送技術センターの長谷川裕氏は、「公衆網、ロードバランサーを使ってどの程度速度が出るか、不安な面があったが、システムレートでは約100Mbpsと、思った以上に速度が出た。IP伝送もいろいろな手段として検討できると思う」と話す。

■エラーの解消が今後の改善点
 TSのエンコード・デコードを担当した技術局制作技術センターの近藤佑輔氏は、「これまでのHDの延長上で4Kに対応できる部分がかなりある。公衆網はくせがあるので、どう安全に使えるか、工夫の必要も感じた」と述べた。
 同制作技術センターの胡子裕之氏は、インターネット回線を束ね、大容量伝送を実現するためのロードバランサー部分をメインに担当した。「回線を束ねて速度は上がったが、構成上エラーが増えてしまう。この辺は今後の改善点」という。
 同実験について、技術局内で4Kなどの技術を検討するグループ事務局を務める藤田和義氏は、「4Kコンテンツの収録を進めている中で、パブリックビューイングに期待する声も出てきた。その可能性を探ることも今回の実験の狙い」と説明。
 同グループに所属する技術局技術統括部の小野田晴康氏は、「ビットレートがポイントと考えていた。まだ画質の評価はしきれていないが、ハードルの低い部分で実際に使いながら可能性を見ていきたい」と述べている。

左から長谷川功氏、長谷川裕氏

左から長谷川功氏、長谷川裕氏

左から近藤氏、胡子氏

左から近藤氏、胡子氏

左から藤田氏、小野田氏

左から藤田氏、小野田氏

#interbee2019

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