私が見た“NAB SHOW 2012”における技術動向(その3、カメラ、映像モニター編)

2012.5.14 UP

フルHDプログレッシブスローモーションカメラ(日立国際電気)
評判のデジタル一眼レフカメラ(キヤノン)

評判のデジタル一眼レフカメラ(キヤノン)

デジタルシネマカメラALEXA Plus(ARRI)

デジタルシネマカメラALEXA Plus(ARRI)

注目の高画質25"有機ELモニター(ソニー)

注目の高画質25"有機ELモニター(ソニー)

オープンスペースに並べられたLCDモニター(池上通信機)

オープンスペースに並べられたLCDモニター(池上通信機)

 (その2)では最近の映像メディアとして進展めざましいデジタルシネマや3D関連の技術動向について紹介した。本号では展示会場の中でもひときわ華やかで人目につきやすく、多くのブースで多種多様な機種が展示されているカメラや映像モニター関連の技術動向について見てみたい。

 テレビカメラは、デジタル時代のニーズにあわせ、画質や性能・機能がアップする一方で、様々な用途に合わせて小型・コンパクト化し経済性の良い低価格のモデルも増え、多様化、多極化している。
 放送局などへのカメラの納入実績が高い池上通信機は、今回も多くの機種を展示していた。その中で、最上位の“Unicam HD”モデルは、3G-SDI対応、1080i/119.88フォーマットで2倍速スローモーションも可能で、シーンにあわせ自由にガンマカーブを設定できる「カスタムガンマ」機能も持つ高機能・高画質カメラである。また従来からのマルチフォーマット対応のHDTVカメラは、画質の高さは維持しつつ欧米等でいまだに要望の強いトライアクシャル対応可能の機種もあった。その他に様々な環境、用途で使われる多目的小型のHDTVカメラも並べていた。日立国際電気も各種カメラを出展していたが、注目された機種は昨年のInter BEEでデビューしたプログレッシブ走査のフルHDカメラと新製品の軽量・低消費電力ながら16ビットの高画質で3倍速のハイスピードHDカメラである。その他に低価格化されたスタジオ/フィールド用の標準モデル、さらに様々な用途向きで高画質の小型ボックスモデルも展示されていた。
 ソニーは前述のF65や一体型3Dカメラ以外にも様々なスペックのカメラを出展していた。3Gbpsの光ファイバー伝送系を標準装備し、16ビット、順次走査またはインタレース(2倍速も可能)の高画質のスタジオカメラ、35mmサイズの大判センサーを搭載しフルHD 60P化し最大10倍速の超スロー可能な小型コンパクトで機動性の高い新機種のカムコーダ、SxSメモリーカードを搭載しMPEG2 HD422対応のハンディ型モデル、手ぶれ補正機能つきの業務用小型カムコーダなど各種モデルを数多く並べていた。パナソニックは前述の各種3Dカメラと共に、同社主力のP2-HDカメラの豊富なラインナップを公開していた。220万画素、2/3型CCDを搭載しフルHD、AVC-Intraで10bit、4:2:2のハイエンドモデルの“P2Varicam”や新コーデックのAVC Ultraフォーマットに対応する小型、低消費電力の“P2cam”カメラレコーダ、さらに小型低価格のAVC CAMなど多数のカメラを公開していた。
 キヤノンは前述のデジタルシネマカメラの他にも、比較的廉価だがシネマやドラマなど画質重視の番組制作にも使えるファイルベース(MPEG2 LongG)CFカードに記録する小型コンパクトなムービーカメラを出展し評判になっていた。また最近、急速に増えている動画撮影機能を持つデジタル一眼レフカメラとして、センサーが35mmフルサイズでボケ味が良く夜間撮影にも向いている最新モデルも展示していた。もちろん主力製品であるテレビ・シネカメラ用の各種レンズ類、防振機能も強化したワイドと高倍率を両立したズームレンズのニューモデルも並んでいた。これらのレンズ系もカメラ本体と同じようにハイエンドとローエンドの多様化が進んでいる。
 テレビや映画機材で実績あるナックイメージテクノロジーは、従来機種の性能、機能をアップしたウルトラスローモーションカメラHi-MotionⅡを出展した。フルHD対応で最大600コマ/秒の高速撮影が可能で、プログレッシブ走査のため映画やテレビドラマ、CGとの合成でも高品質のスロー映像が得られる。メモリー機能によりスロー再生中でも録画が可能で、感度を4倍向上し、池上通信機と共同開発した映像処理系により画質向上とフリッカーレスにした。フォトロンも概観は従来モデルと変わらないが、毎秒コマ数、感度を向上したハイスピードカメラ“FASTCAM SA-X”を展示していた。シネカメラの老舗でNAB常連のARRIは、従来モデルのデジタルカメラ“ALEXA PLUS”に4×3画角のスーパー35ミリ相当のセンサーを搭載し、アナモフィックレンズを使いワイド撮影も可能にしたニューモデルも出展していた。Vision RESEARCHは、各種ハイスピードカメラ“Phantom”シリーズの最上位機種“FLEX”に加え、今回はニューモデルの“V642”やコンパクトモデル“Miro”を展示していた。I-Movixは以前はフォトロン製カメラを使っていたが、今回、Vision RESEARCH製に替えた超高速度カメラ“Sprint Cam”を公開していた。ブラックマジックは2.5Kセンサーを採用しSSDも搭載し、これまでのテレビカメラとはコンセプト、形状がかなり違う新型カメラ“Blackmagic Cinema Camera”を出展し大きな評判になっていた。

 オールデジタル時代になり、映像の高画質化、高精細度が進み、画質をしっかり管理し表示する映像モニター、ディスプレイは非常に重要なツールである。かって映像モニターに使われていたCRTは今やなく、その後継モデルとして液晶やPDP、有機ELへと、大画面ディスプレイは大型PDPやLED、DLPやDILAへと多様化し、各社から多種多彩なタイプのものが出展されていた。
 パナソニックはブース正面の目立つ所に大画面用DLPディスプレイを配し、ロンドンオリンピックを視野にシドニーやアテネオリンピックの映像を映していた。またシアターではこのプロジェクターを使い400"位の大画面で、展示物のプレゼンテーションに加え、ハリウッドやサンフランシスコなどの美しい映像を映していた。モニターコーナーには上面にワイド大画面のカーブドディスプレイを配し、その下部の壁面に“Critical View Plasma”と新製品の18.5"LCDモニター、さらにタブレット型を並べていた。一方、ソニーはCRT後継のマスターモニターとして、動画応答性が良く黒の階調と色再現性にも優れる有機ELモニターをメインに出展していた。フルHD、RGB10bitの有機ELパネルを採用し画面サイズは17"と25"型である。
 放送局などへ映像モニターの納入実績の高い池上通信機は、これまではCRTやFEDなど各種タイプの映像モニターを出展していたが、今回はオープンスペースでLCD型モデルのみを展示していた。広視野角、高輝度・高コントラストで、優れた応答性と色再現性の高精細液晶パネルを採用したフルHDの32"と24"型モデルとマルチフォーマットの17"~9"サイズのモデルを並べていた。JVCも例年同様に高画質の映像モニターとして、IPSパネルを使い広視野角、高画質化した42"、24"、17"型LCDモニターを並べていた。制作現場で使いやすいように、画面内に映像だけでなくベクトルスコープや映像波形も表示できる機能を持っている。ドルビーは、昨年デビューし、正確な色再現性、漆黒の再現性と高いカラーコントラスト・広いダイナミックレンジを実現した業務用リファレンスLCDモニターを出展していた。なお同モニターはナック社のブースにも展示されていた。
 今や民生用テレビ市場で世界的に圧倒的シェアを誇る韓国勢だが、業務用映像モニター分野でも目覚ましい発展を遂げている。TVlogicは、解像度QFHDの56"型はじめ47"型3Dモニター、フルHDやWUXGA、マルチフォーマット対応の各種サイズのLCD型モニターを数多く並べていた。去年出していた有機ELモデルは見当たらなかった。
 デジタルシネマの進展に伴い、シアター用大画面ディスプレイも高機能・高画質化が進んでいる。前述したようにパナソニックも新製品のDLPを使いプレゼンテーションしていたが、常連のBARCOは3チップDMD搭載の高コントラストで操作性も向上させた新型DLPを使い、300"位の大画面に迫力いっぱいの映像を映していた。こちらも常連のCHRISTYはいつものように各種DLPと大スクリーンを天井から吊下げ上映していたが、その一つはこれまで見たことがないような変わった形状のスクリーンにCG映像を映していた。例年屋外用の大型LEDディスプレイを出していた三菱電機は、今年はデジタルサイネージ用をターゲットにDLPとLCDを組み合わせたマルチ画面ディスプレイを展示していた。

 次号ではデジタル時代に相応しいファイル化が進んでいるコンテンツ制作系や配信系、符号化技術の動向について紹介してみたい。

映像技術ジャーナリスト(学術博士) 石田武久

評判のデジタル一眼レフカメラ(キヤノン)

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デジタルシネマカメラALEXA Plus(ARRI)

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注目の高画質25"有機ELモニター(ソニー)

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オープンスペースに並べられたLCDモニター(池上通信機)

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#interbee2019

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