【NEWS】 NHKエンタープライズ  4K番組制作支援ワークフロー「MASAMUNE」を開発 RAWファイルの高速変換で効率化 「1週間かかる作業を1日に短縮」の実績も

2013.12.19 UP

NHK-MTに設置した「MASAMUNE」
NHK-MTに設置した「MASAMUNE」

NHK-MTに設置した「MASAMUNE」

伊達氏

伊達氏

スタッフの藤木氏(左)と杉浦氏

スタッフの藤木氏(左)と杉浦氏

フリーフライ社のmoviも導入

フリーフライ社のmoviも導入

 NHKエンタープライズ(NEP、東京都渋谷区)は、4K番組制作支援ワークフロー「MASAMUNE」を開発し運用を始めた。一般的なコンピューターを使い、HDの4倍の情報量を持つ4Kを、RAWファイルから高速変換することで制作を推進。特機もいち早く導入し、4Kをより汎用的に制作できる態勢を整えている。

■実時間の約5割の時間でプロレゾに変換
 MASAMUNEは、カラーフロント社のカラーグレーディングおよびファイル管理ソフトウエア「オンセットデイリーズ(OSD)」と、RAWファイルをさまざまな形式に高速変換する「トランスコーダー」を中心に構築した。
 4KRAWで撮影したデータは、OSDでプライマリーグレーディング後、実時間の約5割の時間でHD変換(主にプロレゾ422HQ)して編集。この編集データをもとに、グレーディングした映像データから必要な部分のみを4K映像として再構築する。
 システムはNHKメディアテクノロジー(NHK-MT)の社内に設置し、主にポストプロダクション技術者が運用する。プラットフォームはHPのZ800で、編集済みの映像データを記録するドットヒルシステムズのRAIDディスクと、AJAの4KI/Oデバイス「コービットウルトラ」と合わせて設置した。
 現在の放送には先に作ったHD映像を利用。ウェブ用など他の用途にも同時に変換できる。セカンダリーグレーディングが必要な場合は適宜個別のグレーディング装置で作業する。

■RAWデータのコピー、移動が不要 SSDをオリジナルメディアに採用
 このフローで特徴的なのが、4K制作で最も時間がかかるオリジナルRAWデータのコピーや移動を不要としたこと。ロケ隊にMacとともに貸し出すプロミス製SSD「ペガサス」(RAID5、24テラバイト)がオリジナルメディアとなる。
 収録後、撮影スタッフがこのディスクに映像を移す。同時に、撮影現場用ソフトウエア「エクスプレスデイリーズ」により、編集やメタデータ、カラーデータを記録するオープンソースのデータベース「MySQL」の登録情報が生成される。
 NEPは素材が搬入されると、フロアの一角に設けたスペースでマスターデータのプレビューやOSDで読むための調整などデータマネジメントを行う。60pから60iといった放送向けのフレームレート変換や、ドラマから中継まで多様な番組を制作する環境で簡単に扱えるメタデータ生成ツールは自社開発した。関連スタッフはプログラマーとデータマネジャー、ディレクターなど5人。

■「4Kコンテンツ不足の解消は制作会社としての重要課題」
 システムを担当した伊達吉克氏(企画開発センター)はバーチャルスタジオなどリアルタイムCGシステムを手掛けてきた技術者。今回の開発の経緯について次のように説明する。
 「4Kはデータが重く処理に時間がかかるため、費用に見合わず制作しないというケースもある。今は制作会社として4K制作を多く手掛けコンテンツ不足を解消すべきフェーズだ」
 「しかし市場には、カラリストやカメラマンなど異なるスキルを、撮影から完成まで”一気通貫”でき、同時にコストに見合う形で『普通に』作れるシステムが存在しない。開発部門を持たない制作会社として、外部のしっかりした会社の製品をコアに自社の経験を加えながら独自作成することになった」
 「HDDやコンピューターは消耗品であり安価で簡単に換装できる装置が良い。またテレビ番組の場合、大半はプライマリーグレーディングでビデオのカラコレ以上のことに対応可能で、セカンダリーが必要なのはわずか5%。必要な場合はハイエンド設備で作業すればよく、5%のために高額な投資をするのは違うのではと考えた」

■「Nスペ 富士山」から制作支援を開始 すでに6作品を担当
 カラーフロント製品はその高速性を評価して選択。オートデスクのラスターを開発したヤズベレニー兄弟が設立した会社で色の取り扱いにも長けている。MASAMUNEを使ったことで「通常なら1週間かかる作業を1日で仕上げたこともある」(同氏)という。ワークフローは小輝日文と共同開発した。
 同社では今年放送された『NHKスペシャル 世界遺産 富士山-水めぐる神秘』から4K素材での制作支援を開始。現在は250時間分の4K素材を保有。6作品の制作支援を進めている。
 このうちの独自コンテンツ『薪能』はソニー「PMW-F55」を5式用いてマルチ収録した。4Kカメラの感度の高さを生かし、夜の屋外で撮影のための照明を焚かずに伝統芸能を撮影した。
 また、大画面で視聴されることの多い4K映像の撮影を簡便にかつ高品質に行うため、米フリーフライシステム製3軸カメラジンバル「MOVI」を導入。安定性に加えステディーカムよりも上下にカメラを移動できる柔軟性を持ち、モーションシックネスを防げる。

■8Kの制作支援も視野に
 今後は8Kが課題となる。伊達氏は「8Kでは今の帯域の3-4倍が必要。ビデオ編集にもCG制作的な分散処理を取り入れることで可能性は広がるが、同時に一つ一つのコンピューター自体の速度が上がる必要もある。制作会社がその部分まで着手すべきか疑問はある。また、将来的にセカンダリーグレーディングもシームレスに作業できる環境としたい」と説明している。

NHK-MTに設置した「MASAMUNE」

NHK-MTに設置した「MASAMUNE」

伊達氏

伊達氏

スタッフの藤木氏(左)と杉浦氏

スタッフの藤木氏(左)と杉浦氏

フリーフライ社のmoviも導入

フリーフライ社のmoviも導入

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