【ニュース】SIGGRAPH 併催イベント「Digital Production Symposium」が初の開催 VFX制作現場の問題解決手法を紹介・討議 OLMデジタル 安生氏が提案

2012.7.20 UP

DigiProのロゴ
SIGGRAPH2012開催会場のLAコンベンションセンター

SIGGRAPH2012開催会場のLAコンベンションセンター

■SIGGRAPHで”制作現場指向”のシンポジウム併催

 今年8月、米ロサンゼルスで開催されるSIGGRAPH2012において、新たな併催イベント(co-located event)「Digital Production Symposium」(略称:DigiPro)が登場する。映画やテレビなどのVFXスタジオを対象に、制作現場のワークフローに沿ったテーマを取り上げる。CGに関する学術的・理論的な発表を中心に開催するSIGGRAPHの議論と比べ、より現場寄りの問題解決手法の情報交換を活発化することがねらいだ。


■会場はドリームワークスのスタジオ内

 会期はSIGGARPH会期前の8月4日。初の催しとなる今回のDigiProは、ハリウッドVFX大手のドリームワークスのスタジオ内が会場となる。通常は、併催行事の場合でもSIGGRAPHと同会場か周辺のホテルなどで開催されることが多く、大手VFXのスタジオ内で行うというは異例といえるだろう。上映前の映画作品という機密性の高い情報を扱う関係で、通常はスタジオ内を公開するのはなかなか難しい。ドリームワークスが会場として提供するには、そうした課題を回避するためのさまざまな準備を経たと思われ、同社がこのシンポジウムに寄せる期待の大きさがうかがえる。
 基調講演には、WetaデジタルのVFXスーパーバイザー、ジョー・レテリ氏が登壇。シンポジウムには、ピクサー、ドリームワークス、ムービングピクチャー、テクニカラーなど、映画における高度なVFX表現で定評のあるスタジオが参加している。日本からも、OLMデジタル、北海道大学などが参加する。


■OLMデジタル 安生氏がSIGGRAPH併催を提案

 「DigiPro」は、昨年まで行われていた別の国際会議におけるワークショップが母体となっている。この母体となったワークショップ「CGI Workshop on VFX, Computer Animation, and Stereo Movies」は、CGに関する学会「Computer Graphic Society」の国際会議「CGI」(CG International)の併催行事として、昨年の6月に開催された。
 今回の移行は、同ワークショップの委員長を務めた韓国科学技術院(KAIST)の、ジュンヤン・ノウ(Junyoung Noh)氏から相談を受けた、OLMデジタルの安生健一氏(同社取締役・研究開発部門 ビジュアルエフェクト/R&D スーパーバイザー)がSIGGRAPHにおける開催を提案したことがきっかけとなっている。


■「現場ならではのノウハウを共有しワークフローの改善・進化へ」

 DigiPro開催の提案者であり、第一回DigiProの共同委員長を務める安生氏は、DigiPro開催のねらいについて次のように話す。
 「CGの技術・理論については、CGIやSIGGRAPHなどにおいて活発な議論が行われているが、論文で公開されたアルゴリズムを実際の現場で利用するためには、現場で用いられるツールや実際の製作工程などを考慮しなければならない。制作現場では、リアリティとともに、演出的な表現がなされていることが重要であり、リアリティを保ちながら、アーチストが直感的に映像を作り出せることが求められる。また、生産効率を落とさず、効果的に用いるための工夫も必要だ。こうした、現場指向のノウハウを紹介し、ともに共有し議論することで、VFXスタジオにおけるワークフローの改善・進化を図ることがDigiProのねらいだ」(安生氏)
 今回、SIGGRAPHの併催行事であるとともに、SIGGRAPHのスポンサードも得ている。これは、重要な催しとして捉えている証しともいえる。共同委員長には安生氏とともに、ソニー・ピクチュアズイメージワークスのアーミン・ブルデリン(Armin Bruderlin)氏が就任。プログラム選定共同委員長には、NVIDIAのエリック・アンダートン(Eric Enderton)氏、PDI/ドリームワークスのラリー・カトラー(Larry Cutler)氏、相談役(アドバイザリー・ボード)はWETA DigitalのJ.P.ルイス(J.P.Lewis)氏、KAISTのジュンヤン・ノウ(Junyoung Noh)氏が担当。そのほか、プログラム選定委員には、ピクサー、インテル、デジタルドメイン、リズム・アンド・ヒューズ、フレームストアーなど、大手のプロダクションや企業から経験者が参加しており、業界の期待と意気込みが感じられる。


■発表テーマと講演プログラム

 すでに発表テーマの募集は締め切られ、講演内容が発表されている。
 DigiProでの講演テーマとして求められたのは、次のような領域になる。

 【DigiProの講演テーマ】
 1. Production-relevant algorithms
  映画制作の現場で実際に用いられているアルゴリズム。
 2. Adapted solutions
  学会などで発表された理論やアルゴリズムを現場で利用できるように改良した事例。
 3. Production tricks and tweaks
  ワークフローに則して現実的に利用できるように理論や数式を”修正”した事例。
 4. Mixed team projects
  技術者に加え、アーチストやプロデューサーも交えて共同で問題解決をした事例。
 5. Collaborations
  外部のエンジニアや企業、研究組織などによる共同作業によるワークフローの構築事例。

 講演プログラムの詳細はすでにウェブサイトに掲載されている。「Deep Space」「Fluid Flow」「Speed」の3つのセッションに分けられ、それぞれのテーマに沿った講演が予定されている。
 

■継続的な催しに

 安生氏は今後の展開について、「今後も現場のアーチストやエンジニアが主体となって、SIGGRAPHでの毎年の併催イベントとして継続してゆきたい」と現場の若手の積極的な参加に期待をにじませた。


 

SIGGRAPH2012開催会場のLAコンベンションセンター

SIGGRAPH2012開催会場のLAコンベンションセンター

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