【NEWS】 世界から2,460本のアニメ作品が応募する「世界のアニメーションの展覧会」  最高賞はブラジル作品に アヌシー国際アニメーション・フェスティバル報告(1) 

2013.7.19 UP

最優秀賞クリスタルに輝いたブラジルの「Rio 2096:A Story of Love and Fury」
新アート・ディレクターのマルセル・ジャン氏

新アート・ディレクターのマルセル・ジャン氏

アヌシー2013のメイン会場

アヌシー2013のメイン会場

MIFAマーケット会場の入り口

MIFAマーケット会場の入り口

 世界のアニメーション界から7,000人を超すプロを集めた世界最大規模のイベント「第37回アヌシー国際アニメーション・フェスティバル」(以下、アヌシー2013)と「MIFAマーケット」が今年もフランス東部のアヌシーで6月10-15日の6日間開催された。1999年から14回、フェスティバルのアートディレクターを務めたセルジュ・ブロベール氏が昨年退任し、その後を継いだカナダ人のマルセル・ジャン氏が注目された。
(伊藤裕美/オフィスH 〔アッシュ〕)

(「Rio 2096:A Story of Love and Fury」(c)Buriti Filmes, Gullane Filmes)

■幅広さと多様性が特徴、期間中のべ500本の作品が上映
 30年前に現在のアヌシーの形を作った、故ジャンリュック・ジベラ氏がフェスティバル・ディレクターに就任したとき、フェスティバルに集ったのは1300人。その後、商業アニメーションを招き入れ、イベントは拡大した。
 アニメーション制作にコンピューターが導入されると、デジタル技法を学んだ世代が商業とアートの両面にその才能を発揮。コンペティションは応募者の増大と表現の多様化、そして参加する国と地域が広がった。
 ジベラ氏がマーケット(現在のMIFAマーケット)を1985年に始めたのは、欧州でアニメーションが産業として市民権を得る10年以上も前のことだ。ハリウッドの長編アニメーション映画が世界市場を開くと、刺激されたフランスや英国が『ヨーロッパアニメーション』をけん引し、今やフランスでは、アニメーションは輸出品として認められる勢いだ。
 新アートディレクターのジャン氏は、「アヌシーとは、多様な参加者の興味や関心にかなうフェスティバル」と話す。確かにフェスティバルは、スニークプレビュー/ワールドプレミア、コンペティション、名作・名監督の特別・回顧プログラムで構成。そしてMIFAマーケットの展示と商談や「Work In Progress」(制作中の新作紹介)、「Making Of」(完成した新作のメーキング)、「プロジェクト・コンペティション」、「Creative Focus」(若手アニメーターと著名監督やスタジオとが出会える場)などのイベントが用意されている。さらにマスタークラスといった教育的側面も持つ。
 コンペティションには、長編を含め2,460本の応募があり、一次選考を経た236本が最高賞のクリスタルを競った。延べ500本ものアニメーションが、市内7カ所10スクリーンで上映された。
 MIFAマーケットの登録だけでも80カ国からプロが集まり、アヌシーはプロ、学生、市民愛好家が期待する『世界のアニメーションの展覧会』だ。この幅広さと多様性がアヌシーを特徴付ける。そしてジャン氏は「正しい方向に向かっている」としている。

■頭角を現す南アフリカ、成長する南米
 25年目となるMIFAマーケットは、出展数454、参加バイヤー340人という規模もさることながら、欧州、米国、カナダ、中南米、オーストリア、アジアからの参加、さらに中東とアフリカが増えている。とりわけアフリカは市場としても、制作地としても注目される。
 長編アニメーション部門にノミネートされた、子供向けアドベンチャーの3D(立体視)映画『Khumba』(以下、『クンバ』)は、南アフリカのケープタウンにあるトリガーフィッシュ・アニメーション・スタジオズが制作した。
 同スタジオは1996年にストップモーション・アニメーションのスタジオとして設立され、CMのアニメーション制作を主としてきた。『クンバ』は同スタジオの長編2作目となる。同作を監督したアンソニー・シルヴァーストーン氏は、エミー賞の国際審査員を務めるなど、南アフリカを代表するアニメーション監督であり脚本家だ。
 そして長編部門で、窪岡俊之監督の『ベルセルク黄金時代編II ドルドレイ攻略』を抑え、最優秀賞クリスタルに輝いたのは、ブラジルの『Rio 2096:A Story of Love and Fury』(邦訳=「リオ2096年:愛と激怒の物語」)だ。
 共同制作したブリチ・フィルムスとグラニ・フィルムスは、1997年と96年に設立され、テレビから劇場公開作までを手掛ける、ブラジルを代表する映像制作会社だ。
ブラジルはポルトガル語を公用語とし、欧州、特にラテン語文化圏とつながりが強い。それだけでなく、カナダ国立映画制作庁が1980年代にブラジル人を対象にアニメーションのマスターコースを実施し、その研修を受けたアニメーターが同国最大規模のアニメーション国際フェスティバル「アニマ・ムンディ」を93年に始めた。欧米流のアニメーション技法に長けたアニメーターがテレビの番組やコマーシャルといった商業分野で活躍している。

【アヌシー 2013で公開された米国大手スタジオの最新作】
<スニークプレビュー>
 ●映画「Monsters University」(2013年公開、ピクサー制作)
 ●映画「The Blue Umbrella」(2013年公開、ピクサー制作、映画「Monsters University」と同時上映されるショートアニメーション)
 ●短編映画「Get a Horse!」(2013年公開予定、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ、白黒の短編新作。かつてミッキーの声優を自ら務めたウォルト・ディズニーの声が再びミッキーマウスの声として採用される)
 ●映画「Despicable Me 2(邦題:怪盗グルーのミニオン危機一発)」(2013年公開、イルミネーション・エンターテインメント制作)
 ●映画「Cloudy with a Chance of Meatballs 2」(2013年公開、ソニー・ピクチャーズ アニメーション制作、映画「くもりときどきミートボール」の続編)
 ●映画「Epic」(2013年公開、ブルースカイ・スタジオ制作)

<Work In Progress>(制作中の新作紹介)
 ●映画「How to Train Your Dragon 2」(2014年公開予定、ドリームワークス・アニメーション制作、映画「ヒックとドラゴン」の続編)

<Making of>(メイキング)
 ●映画「Cloudy with a Chance of Meatballs 2」(2013年公開、ソニー・ピクチャーズ アニメーション制作、映画「くもりときどきミートボール」の続編)
 ●映画「Epic」(2013年公開) ブルースカイ・スタジオ

最優秀賞クリスタルに輝いたブラジルの「Rio 2096:A Story of Love and Fury」

新アート・ディレクターのマルセル・ジャン氏

新アート・ディレクターのマルセル・ジャン氏

新アート・ディレクターのマルセル・ジャン氏

アヌシー2013のメイン会場

アヌシー2013のメイン会場

MIFAマーケット会場の入り口

MIFAマーケット会場の入り口

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