【NEWS】米VES 共有用デジタル撮影データファイルの業界標準「カメラレポート」1年の歳月をかけ完成 無償・制限なしで提供 
「実写シーンやライティング環境の再現は、高品質なVFXに不可欠」

2013.12.20 UP

カメラデータのプリントアウトのサンプル

カメラデータのプリントアウトのサンプル

iPadの表示例

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 2013年12月16日、ロサンゼルスに拠点を置く米VES(米視覚効果協会 / ビジュアル・エフェクツ・ソサエティ)は、実写プレートを撮影した際のカメラ情報を、より正確に&効率良くVFXスタジオに提供する事を目的とした、業界標準ファイル形式「VESカメラレポート」を公開した。これは、大手VFXスタジオの技術陣とVESのコラボレーションによって1年以上を費やし開発されたもので、データフィールド及びフォーマットを業界標準化し、より信頼性の高いカメラレポート、およびメタデータをVFXスタジオに提供する事を目的としている。 (鍋 潤太郎)

■撮影データ共有ファイルの業界標準へ
 ハリウッドにおける旧来の「カメラレポート」とは、撮影の際にカメラ・ローダー担当者が作成するリストのことで、各フィルム・ストックから何フィートを撮影に使用し、手元に何フィートのフィルムが残っているか等が記録される。また必要に応じてレンズの種類や、ストップ値、シャッター速度、ISO、コマ/秒、アスペクト比などが記録される。
 昨今のデジタル撮影やVFX現場へのデータ受け渡し等では正確な情報が求められるが、これまで業界標準となる形式が確立されていなかった。それを解決すべく、「VESカメラレポート」が業界標準のファイル形式として公開される運びとなった訳である。
 今回リリースされた業界標準の「VESカメラレポート」は、無償&制限なしで提供され、PCやiPadで使用できる。

■「ハイクオリティなVFXに不可欠な情報」
 VESチェアマンのジェフ・オークン氏は次のようなコメントを述べている。
 「映画におけるハイクオリティなVFXを実現する為には、カメラで撮影された実写シーンやライティング環境を、デジタル上で如何に正確に再現出来るかが大きな比重を占めています。”基本的なデータは撮影現場で採取すべき”という事については多くのVFXスタジオが合意するところですが、肝心の”正確なデータ”を収集する為のカメラレポートの形式はまちまちで、業界標準のフォーマットとしては、まだ確立されていませんでした」
 「ソニーピクチャーズ・イメージワークスのロブ・ブレドウ氏及びサム・リチャーズ氏の主導の下、VESテクノロジー委員会が画期的な成果を成し得た事を誇りに思います」(オークン氏)

■サード・パーティがサポートへ Shotgunも今後のリリースで対応
 開発は、関係各社や大手VFXスタジオ技術陣による専門のワーキング・グループの貢献によって進められた。その結果、サード・パーティ・ベンダーが業界標準としてこのフォーマットをサポートする動きや、既に複数の企業が強力なサポート体制を組む事に前向きな姿勢を示しているという。
 その賛同企業の1つ、プロダクション・マネージメント・ツールのパイオニア、Shotgun Software社のCEOドン・パーカー氏は「Shotgunの今後のリリースにおいて、この標準ファイル形式をサポートし、ユーザーにも推奨して行きたいと思います。メタデータの活用が、今後の作業効率向上の大きなステップの1つになる事を期待します」と述べている。
 同じく賛同企業で、デジタル・アセット・マネージメント・ツールの開発を手掛ける 5th Kind社のCEOスティーブ・クロナン氏も、「この新しい標準ファイル形式を、弊社のバックボーンに統合できる事は大変な名誉です。この規格は、2014年の第1四半期にリリース予定のCOREv4プラットフォームの大きな後押しになる事でしょう」と語った。

■Excel、FileMakerProでも利用可能なCSV形式を採用
 「VESカメラレポート」は、PCやiPadで手軽に扱えるようにする為、ExcelやFileMakerProでの読み書きをサポート。こうした理由からCSV形式を採用している。CSV形式は汎用性が高く、Python等のスクリプト言語で簡単に処理する事が可能となる。また、各フィールド名のネーミング指定方法やデータ型の一覧などの仕様、そしてCSVやFileMaker Proに対応したサンプル・ドキュメントが、ウェブ・サイト[http://camerareports.org/]で公開されている。
 詳細およびスペック、そしてPythonスクリプトのサンプル等がここから参照可能だ。また、カメラレポートに対する要望や項目追加等のフィードバックも、グーグルグループ上で受け付けているという。

■今後はカメラからデータを自動取得する手法の確立へ
 今後の課題としては、デジタルカメラからの各数値の自動取得がある。現段階では、レンズの種類やストップ値などの各数値をカメラから自動的に取得する手段が確立していない為、「VESカメラレポート」の各項目への入力は、1つ1つ手で入力しなければならない。この点について筆者が質問を投げたところ、サム・リチャーズ氏は「近い将来、サード・パーティ・ベンダーによって、カメラから各数値を自動取得出来るツールが提供される事を期待してます」と語っていた。
 「VESカメラレポート」は、立体映画作品やデジタル撮影など、さまざまなフォーマットにも対応しており、今後この新しい標準ファイル形式を利用したiPadアプリやAndriodツールが登場し、現場で活用される事に期待が寄せられている。
 ※カメラ・ローダーの主な役割は、
  (1)クリップ・ボード(カチンコ)の操作
  (2)フィルムをマガジンに装着したり、フィルムの交換を担当

<VESカメラレポート>
【開発目標】

•最低限必要な情報を網羅したカメラレポートの提供

•業界標準データのエクスポートを、指定された形式で提供

•外部の会社やプロダクションから提供された関連データであっても、できるだけ簡単に取得できるようにする 
•フィルム&デジタルの撮影におけるカメラレポート提供、ステレオ撮影や、複数カメラによる撮影へのサポートを提供
 (

現時点では、フォーマットはFileMaker-12データベースを使用するが、もし将来的にデジタル・カメラから直接情報が得られるようになった段階で、別の選択肢を模索する予定。FileMaker-12を使用する理由として、 iPadクライアントが無料という利点が挙げられる)

【インターフェイスのガイドライン】

•データベースは容易に拡張が可能で、各項目のチェックボックスも追加や拡張が出来るようにする

•フィールドはリストから選択可能で、可能な限り、敏速かつ正確にデータ入力が行えるようにする

•iPadの画面は、指を使って簡単に入力出来るよう配慮されるべきであり、フォントサイズやボックス等は通常よりも大きめに設計する



【データベース・レイアウト】

ショット毎に膨大なテイクが増える事を想定し、シーンとテイクは別々のテーブルに保存する



【テーブルの例】

•レンズデータベース - 撮影に使用されるレンズを指定するポップアップ・メニューを作る際に使用される

• VFXワーク - 各ショットで必要とされるVFXのリスト。フォームのチェックボックスリストを作成するために使用される

•メディアの設定 - これはデリバーすべき項目(HDRI,クリーンプレート等)のリスト。フォームのチェックボックスリストを作成するために使用される
 (デフォルトのエクスポート形式は、CSVファイルになる。テイク·フィールドは、識別し易いやすいようプレフィックスを「TK」とする。最初の行には、ファイルのフィールドが含まれる。また、CSVベースのメールマージ機能を使用予定で、特定の文字については特別の取り決めがある)

カメラデータのプリントアウトのサンプル

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iPadの表示例

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