【Inter BEE 2012】NHKメディアテクノロジー(#5111) 4K、4K3D、Advanced Stereo 3Dなど新しい放送様式を提案。4K3Dシアターを公開

2012.11.16 UP

  NHKメディアテクノロジーは、InterBEEの3D/4Kシアターで、3D立体映像や4K映像の最新作品を上映した。
 4つのスペースに分けた3D/4Kシアターで、それぞれ、3Dの最新映像や4K映像の最新作や比較映像を表示した。

上映映像は、以下の通り。
①3D映像作品  相馬野馬追、ガラパゴス、高速度撮影映像 各約3分
②Advanced stereo 3D  3Dの従来方式と新方式の画質比較映像、2Dモニターによる互換性映像 約8分
③4Kメガロポリス東京 NHKエンタープライズ制作 4K映像 各約3分
④4K3D シャボン玉 紙飛行機など、約3分

■新方式で2DフルHD、3DフルHDの両視聴に対応
 Advanced stereo 3Dは、放送における3D立体映像のための符号化の方式として現在、ARIBに規格化を提案中の技術。左側の映像をフルHD(1920×1080)のMPEG2映像として伝送することにより、3Dのみでなく、2DのHD映像としても視聴できる。これまで、3D放送はサイドバイサイド方式により、HD画像を二分割して放送していたため、3Dでの視聴ができない場合は楽しむことができなかった。新技術では、受信側の条件にあわせて2Dで見るか3Dでみるかを選択できるため、コンテンツの視聴の機会を拡大できる。

 符号化は、BSデジタル放送で用いられる20Mbpsの映像伝送帯域を想定し、左側に13MbpsによるMPEG2 、右側に7MbpsのH.264の映像を載せる。左側のMPEG2のプロファイルには、フィールドピクチャーストラクチャー方式を採用している。
 開発の経緯について、NHKメディアテクノロジー放送技術本部 3D・高精細部 エグゼクティブ・エンジニアの西田泰章氏は次のように説明する。
 「フィールドピクチャーストラクチャー方式は、MPEG2の策定時から規格に含まれており、最も高画質を維持できる方法として考えられていたが、圧縮時の演算負荷が高いため、デジタル放送開始当時は採用されなかった経緯がある。NECは、この方式のコーデックの開発を継続し、実用化にこぎつけた。すでに発売されている地デジ・BS・CSに対応した3波共用のチューナーのデコーダーには内蔵されている」と言う。
 これによって、13Mbpsという、現在の地デジ放送(17Mbps)より低いレートでフルスペックハイビジョン映像の伝送が可能になった。
 今回の3D立体映像の符号化Advanced stereo 3Dには、このフィールドピクチャーストラクチャー方式を左側の映像の符号化に用いて、右側には、H.264を用いる。これにより、左側が13Mbps、右側が7Mbps、合計20Mbpsの帯域で、フルハイビジョンの2D/3Dハイブリッドの放送が可能になる。
 西田泰章氏は、「3Dの視聴はまだ限定的であり、また、視聴形態や大勢での視聴時など、視聴環境によって選ぶことができれば、映像コンテンツの展開が広がり、ひいては3D視聴への関心を高めることにもなる」と同方式の意義を強調する。
 韓国でも同様にMPEG2とH.264を用いた方式があるが、フィールドピクチャーストラクチャー方式を採用していないため画質が劣ると言われている。
 「すでにデコーダーは普及しており、今後、ARIBで規格化されれば、フルHDによる2D/3Dハイブリッドの放送が可能になる」(西田氏)。規格化は来春の予定。

■相馬野馬追
 今回上映する作品の一つ、「相馬野馬追」の立体映像は、同社が、昨年の東日本大震災の後、継続的に被災地を立体映像で撮影しているドキュメンタリー作品の一環。本編は 「疾走!相馬野馬追〜東日本大震災を越えて〜」と題した57分のドキュメンタリー番組になっており、InterBEEでの上映はそのダイジェスト版(3分)になる。 制作統括を務めたNHK-MT経営主幹の智片通博氏は、被災地の映像取材のねらいについて次のように話す。
 「被災地の状況を取材し、定期的に報告することで、被災地の復興の状況を伝えて行くことができると考えた。立体映像で撮影することにより、現場の状況をよりリアルに感じてもらえる」(智片氏)
 相馬野馬追は、被災地であり、また、福島第一原子力発電所による放射能汚染の被害を受けている相馬地域における伝統的な神事。作品では、町をあげてのお祭りである相馬野馬追の行事を、被災して多難な状況にありながらも、参加する村人たちの思いや、苦難を乗り越えて実施するお祭りの情景を紹介している。
 NHKメディアテクノロジーでは、この3D作品を東京で避難生活をしている被災者に披露したところ、お祭りの懐かしさと、同郷で頑張る人たちの姿に元気付けられたという感想があったという。
 智片氏は「エンターテインメントとしてだけでなく、ドキュメンタリーにおける3D立体映像の有効性や可能性も訴えながら、より多くの場で紹介して行きたい」と話す。

#interbee2019

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