【NAB 2014】米国で進む4K番組制作 Netflixの4K納品が火付け役に クリスティはレーザー光源DLPシネマプロジェクターをデモ

2014.4.12 UP

Dolby 6Pレーザー光源DLPシネマプロジェクター(上の2台)

Dolby 6Pレーザー光源DLPシネマプロジェクター(上の2台)

 NAB SHOW 2014の幕開けを飾るセッション「テクノロジー・サミット・オン・シネマ」が4月5日、6日の二日間、米ネバダ州のラスベガス・コンベンションセンターで開催された。セッションでは、テレビドラマの4K制作の増加傾向や、NetflixがCESで発表した4K番組配信の映画産業への影響を懸念する声などが聞かれた。また、SMPTEにより、映画のマスタリングのための中間ファイルフォーマット「IMF」の規格化の状況などが紹介された。初日の5日のセッションの話題をダイジェストでお送りする。
(映像新聞 論説委員/日本大学 生産工学部 講師 杉沼浩司)

■テレビ番組制作の4K撮影が盛ん
 テレビドラマの4Kカメラによる撮影が増加傾向にある。ソニーピクチュアズ・テレビジョンの技術担当常務 フィル・スクワイアズ(Phill Squyers)氏によると、同社制作の4Kテレビ番組撮影の75%がソニー製のカメラを使用し、25%がREDを使用しているという。ソニーピクチュアズのグループ会社、ソニーピクチュアズ・テレビジョンは、13年の2月に、4K番組の編集専門スタジオColorworksを開設した。同スタジオでは、これまでに120以上のエピソード(撮影日数600日以上)を手がけたという。

■HFRの効果は120fpsから
 ニューキャッスル大学の神経科学研究所のビジョンサイエンスの研究リーダージェニー・リード博士(Dr. Jenny Read, Leader in Vision Science Newcastle University, Institute of Neuroscience)によると、4Kなら空間解像度は、視角限界にほぼ達するが、時間解像度は120pでも十分ではないとのこと。

■Netflix、4K番組制作のワークフローを紹介
 映画業界は、4Kのマスタリングにより力を注ぐことの必要性を強調。現在、多くの映画の制作工程において、撮影は4Kだが、マスタリング〜上映は2Kであり、このままだと画質はネットによる映画配信(Netflix、YouTube)に人気を奪われてしまうと恐れている。
 こうした主張に対し、映画業界では、同意するものもあるが、現状維持(Status Quo)を主張するものも多く、また、4Kマスタリングには、VFXの工程(レンダリング等)がネックになるとの意見がある。
 今年1月に開催されたCESでNetflixは、今年前半から4Kコンテンツの配信を行うと発表。これには自社で制作するコンテンツも含まれており、配信時の符号化にはHEVCを用いる。また、YouTubeは、2015年までに4Kコンテンツの配信を行うと発表。親会社であるGoogleが推進するオープンソースの符号化方式VP9を使用する。複数の方式が使われるため、拡張ボックスに入ったデコーダーが担当することになりそうで、ソニーやサムスン電子は、これに対応した拡張ボックスを出展している。

■スタジオの映画マスタリングを効率化する新フォーマットが標準化
 SMPTEのパネル「 Innovating Interoperability from Digital Cinema to Interoperable Mastering Format」では、映画スタジオによる映画配信の効率化のためのマスタリング用中間ファイルフォーマット「IMF」( Interoperable Mastering Format)についての討論がなされた。IMFは、SMPTEが今年夏ごろに正式に規格として発表されるもの。映画制作の最終工程であるマスタリングにおいて、世界の配給先に応じたローカライズを行った際の各国版の作用内容等を1パッケージに収められる。1つの最終バージョンのデータと、100以上の地域へのローカライズのための編集情報を一つのパッケージに納めることができ、ファイル管理が大幅に簡略化される。
 これによって、映画スタジオは、一つのタイトルに対して、1つのIMFを持つことにより、世界中のどの地域の映画のマスタリングも自動的にデータ生成できる。現在では、何百という地域にあわせて、ローカライズ用のデジタルシネマファイルを地域にあわせてマスタリングし、保持していたがそうした手間と膨大なデータ保管のコストを減らすことができる。

■クリスティがレーザープロジェクターを披露
 クリスティは、光源に半導体レーザーを使用する「Dolby 6Pレーザー光源DLPシネマプロジェクター」をNABショーで公開した。6P(6 Primary)とはDolby 3D方式で使う6原色を意味する。通常のRGBと、わずかに(波長にして20nm)ずらしたRGBの2組を使う。3D表示のための右目・左目用映像をレーザー光源で分光表示し、2台のシネマプロジェクター(Christie Duo)で表示する(3DメガネはDolby 3Dを使用)。NABに先駆けて、 Technology Summit on Cinemaの上映会において披露し、14ftLという驚異的な明るさで3D上映を行った。

Dolby 6Pレーザー光源DLPシネマプロジェクター(上の2台)

Dolby 6Pレーザー光源DLPシネマプロジェクター(上の2台)

#interbee2019

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