【NAB Show 2013】「Technology Summit on Cinema」速報(1) 〜次世代カメラや撮像素子、サウンドの話題もカバー〜

2013.4.8 UP

撮像技術の4名のパネリスト。左端がNHK技研の山下氏
オーディオのセッション

オーディオのセッション

 ディジタルシネマの話題を幅広く扱う「Technology Summit on Cinema: Advances in Image and Sound」が、NABと米SMPTEの共催で6日朝よりS222号室にて開催されている。2日間に渡るサミットでは、ディジタルシネマに関する技術を中心に、種々の作業に実際に従事している当事者からの報告がなされた。(映像新聞 論説委員/日本大学生産工学部 講師 杉沼浩司)


★カメラ進化の指標を示すセッション
「Advancing Cameras for Cinema」

■NHKの山下研究員が8Kカメラの開発状況を報告
 映画において4K撮影が当然となりつつある現在、撮影(Acquisition)はどこに向かうのか。漠然とした疑問が漂ういま、この先のカメラに目を向けたセッション「Advancing Cameras for Cinema」が指標を示した。
 NHK放送技術研究所の山下誉行主任研究員は、スーパーハイビジョン用8Kカメラの開発状況を示し、8K/60Pカメラは小型化の段階にあり、8K/120Pカメラはリファレンスデザインから小型化に向かう途中である事が報告された。
 最も難しいと見られてきた撮像素子は、既に1チップで120P対応のものが試作されている。カメラヘッドとCCUの間に波長多重(WDM)した光ファイバ接続を用いることで、48Gbpsのデータは問題なく伝送できることが示された。

■米Grass Valley Centen博士 計算写真学によるピント調整などを紹介
 米Grass ValleyのPeter Centen博士はレンズ収差の話題に絡めて計算写真学(Computational Photography)を紹介した。パープルフリンジ(収差のため、被写体の周辺に紫の縁が見える現象)の除去や、ライトフィールドによるピントの事後調整が紹介された。特に、後者は従来の米Stanford大学系のものではなく、米MITの符号化絞り技術が紹介されている。
 会場からは、絞りに加工して画質が落ちないのかとの質問も出されたが、針穴写真を多重化したと同じで問題は無いとの説明があった。

■Fraunhofer Foessel博士 量子効果を用いた新次元のセンサ開発中
 撮像素子のフィルタを加工することで、同様な符号化を実現したのが、独Fraunhofer研究所IIS部門のSiegfried Foessel博士だった。画素一つずつに濃度の異なるNDフィルターを適用する(無適用もある)。
 これは、HDR撮影に向いた素子で、1回の露光で撮像が完了する。従来のHDR用撮像素子は複数回の露光が必要なモノが多かった。露光後、信号処理で望みの露出を得る。最も野心的なものは、米Dartmouth大学のEric Fossum教授の量子イメージセンサだった。
 現在のCMOS撮像素子の根幹技術を開発したFossum教授は、現在,量子効果を用いた新次元のセンサを開発しているという。従来の撮像素子が光子を数えているのに対して、量子イメージセンサは光子が作り出すキャリア(物体内に留まる性質を持った電子など)を数える。高感度化が期待でき、高フレームレート化が容易になるという。実用化されれば、これまでは得られなかった映像(例:低光量下でのHFR映像)などが撮影できそうだ。

★オーディオは包み込む時代へ
「Sound Advice: Let’s Get Immersed」

■IOSONO社、NHK技研など、多様な技術を発表 
 今回は、オーディオに関する話題も豊富だった。Immerse(浸る)が共通語となっていた。「Sound Advice: Let’s Get Immersed」のセッションでは波面合成技術など、従来の多チャンネルとは異なる技術も紹介され、新次元の音響への方向性が見えてきた。一方で、米NATO(全米館主協会)から映画館用オーディオ方式の互換性維持を求める要望書が発表されるなど、一つの方式に固まってはいない。
 今回は、独IOSONO社(MP3を開発したKarlheinz Brandenburg博士が率いる企業)、米Dolby Labs.、Auro Technologies(ベルギー)、米DTS、NHK放送技術研究所などから、マルチチャンネルや波面合成など多様な技術が示された。従来の5.1チャンネルや7.1チャンネルでは得られなかった臨場感が得られることを登壇者達は強調していた。

オーディオのセッション

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