【NEWS】パナソニック 遠隔操作可能なHDカメラ新製品を発表 ディープラーニング搭載ソフトにより撮影対象を自動追尾 テレビ番組4K映像の切り出しにも有効

2019.5.31 UP

HDインテグレーテッドカメラ「AW-HE75W/K」

HDインテグレーテッドカメラ「AW-HE75W/K」

豊富な出力インタフェース(本体背面)

豊富な出力インタフェース(本体背面)

昨年末、リモートカメラの製品化で10周年を迎えた

昨年末、リモートカメラの製品化で10周年を迎えた

今後、8K対応製品開発などもめざす

今後、8K対応製品開発などもめざす

 パナソニックは5月29日、回転台一体型のリモートカメラ「HDインテグレーテッドカメラ AW-HE75 W/K」(以下「HE75」)を6月に発売すると発表した。パナソニックは同日、プレス説明会を開催し、同製品の発表と同時に、同社がリモートカメラを発売して10周年を迎えたこと、またディープラーニング技術を用いた「自動追尾ソフトウェア」を同カメラに搭載したソリューションなどについてデモを交えて説明した。ディープラーニングによる自動追尾の技術は今後、テレビ番組4K映像の切り出しの省力化で活用できる可能性もある(上写真)という。

■リモートカメラ発売から10周年
 パナソニックは、2008年に一体型リモートカメラを発売し、昨年末に10周年を迎えた。メディアエンターテインメント事業部 プロフェッショナルAVマーケティング部 部長の宮沢哲也氏が「『リモートカメラ』発売10周年の軌跡」と題し、リモートカメラの製品化10周年の足跡と今後の展望について話した。冒頭、宮澤氏は「放送用カメラ、制作用カメラの事業を展開しているが、この2-3年、リモートカメラの分野が非常に伸びており、事業を支える大きな柱の一つになっている」と述べ、リモートカメラが多くの分野で利用が拡大していることを紹介。「2008年の一体型モデルの市場投入以来、常に業界初のコンセプトと機能を意識しながら進化を続けることにより、2017年度に金額、台数において、業界シェアNo1をかちうることができている」と述べた。同社の一体型リモートカメラは、出荷台数ベースで20%、売り上げベースで30%の世界市場シェアを占めるという。

■リモートカメラのIP活用を牽引
 宮沢氏はさらに、「リモートカメラの開発において、放送・映像業界での高画質映像機器の開発ノウハウを注ぐことで、放送品質の画質を実現。さらに、カメラと回転台が分離した2体型を含めると制御技術という意味では20年以上の経験があり、その中で探求しつづけてきた操作性、特にスムーズな動作に関しては非常に高い評価を得ている」とし、同社の製品における映像の画質、操作性の高さを強調した。(宮澤氏)
 さらに、「 IPの取り組みをいち早くおこなってきて、業界で初めてIP制御、IP画像伝送、そしてPoE対応といったIPを活用したソリューションを牽引してきた。また、運用性の柔軟さも特徴の一つ」と述べ、「10年にわたりワンアーム一体型や、IPによる映像伝送やPoE供給、4K/60Pの12G-SDI伝送など、常に業界に先駆けて新機能を搭載してきた」とリモートカメラの歴史を俯瞰。今後の方向性として、8K対応など高精細・高画質化と、自動追尾などソフトの充実の2つを重点項目としてあげている。

■1080/60p、HDMI/SDIの両出力に対応
 新製品の「HE75」は、1080/60pのフルHD出力が可能で、HDMI、SDI、USB、LANの4種類の出力インタフェースを備えている。外部同期信号の入力端子を搭載し、BBS(Black Burst Sync)や、3値同期に対応する。また、3つのズームレンズと1つのフォーカスレンズが同時に独立して駆動する「4ドライブレンズシステム」により、レンズを大きくすることなく、ハイズーム(光学20倍)と大型センサーの搭載を両立し、小型化を実現している。
 
 ドアの開閉や、設置されている音響機器から生じる取付面の振動を検知し、光学式と電子式の両方の4軸で自動補正することで映像のブレを軽減する。これにより、音楽イベントなど、振動が発生するシーンでもよりブレの少ないクリアな映像を提供できる。ナイトモードは、低照度下でも撮影できる機能で、周囲の照度にあわせた自動切り替えが可能だ。

 HDRモードでは、露光時間の異なる2枚の画像を撮影して合成。これにより、逆光下でも白飛びや黒つぶれを補正した視認性の高い映像を作り出せる。
 自動追尾ソフトにより、高性能な動き検知と高精度の顔認証を実現している。この自動追尾ソフトを用いることで、学校の講義で講師を認識して追尾する場合、後ろを含めどの方向を向いてもカメラが追従できるようになった。

 現行モデルの「HE70」シリーズは、SDIモデル「70S」とHDMIモデル「70H」があるが、今回は、1モデルで両方に対応。また、同じ30倍ズームの比較でも、より高精細で明るい特性を実現しており、水平画角に関してはよりワイドな撮影が可能。現行の「HE70」シリーズは光学30倍ズームだが、「HE75」は、光学で20倍に超解像技術を組み合わせることで30倍ズームを実現。通常は、超解像の場合、若干画質が落ちるが、今回は、上位モデルで開発した高精細レンズを採用することにより、同じ30倍ズームでも、ディテール化、「HE75」のほうが上回っている。

■拡大するリモートカメラ市場のHD製品ラインアップを強化
 システム構築例として、3G-SDI、HDMIは、従来のAVインタフェースを有したシステムに使用される。一方で最近増えて来ているのが、フルIP伝送のシステム、映像音声信号、カメラコントロール、電源供給を1本のLANケーブルで実現。「これにより、施工も簡単になり、直接ライブ映像を配信するシステムには非常に重宝される機能。需要拡大が期待できるリモートカメラの市場で、今回発売するHE75は、安価でフルHD機ということで、さまざまな分野での活躍を期待している」(宮沢氏)という。

 一体型リモートカメラのラインアップの中での同製品のポジションとねらいについて、宮沢氏は「ミドルレンジのラインアップ強化」としている。昨年12月には、フラグシップと位置づける4K対応のハイエンドモデル「UE150」を発表しており、「UE70」シリーズとともに4Kシリーズがあるが「現状ではHDがまだ主戦場」との認識で、既存製品「HE130」「HE70」シリーズといったHDラインアップを強化するため、さらに「HE75」を投入する。宮沢氏は「市場からの要望として、リーズナブルなフルHDモデルの声が強く、私どもとしても、ラインアップの充実ということで、この開発に至っている」と説明する。

■ディープラーニングにより撮影対象を自動追尾
 説明会の後半、メディアエンターテインメント事業部 テクノロジーセンター ソフト設計部 課長の櫻井康二氏は「『自動追尾ソフトウェア』ディープラーニング技術による追尾精度向上のご説明」と題し、ディープラーニング技術と導入による利点について説明した。

 櫻井氏は「パナソニックのリモートカメラは、ソリューションとして提案している点が特徴。商品とソリューションを組み合わせた形で、さまざまなニーズに提案しており、既存のシステムとの連携やインタフェースの接続など柔軟な対応をしている」という。「LAN上のリモートカメラをコントロールするPCに、自動追尾ソフトを搭載することで利用が可能」(櫻井氏)。

 自動追尾ソフト「AW-SF100/SF-200」は、ディープラーニング対応の人体検出自動追尾ソフト。2016年に発売し、2019年3月にディープラーニング対応版としてアップデートしている。特徴は、ディープラーニングを活用した高い追尾精度を実現している点にある。

■教育市場のLCSで省力化に貢献
 櫻井氏は、このディープラーニングによる自動追尾機能について、教育現場における利用を想定した説明をした。現在、欧米、日本の教育市場では、LCS(Lecture Capture System)と呼ぶICT導入の動きが活発化している。LCSにより、収録した講義を学生が復習用に視聴したり、欠席した学生が視聴できるようになっている。さらに、ライブ、VODによる遠隔講義などの需要も高まっているという。

 自動追尾機能は、このLCSでの映像コンテンツ制作で、省力化・効率化を実現する。具体的には、従来、講義の収録ごとに講師を撮影するなど、オペレーターによる操作が必要だったが、カメラの自動追従によって、オペレーターは遠隔で複数の講義を同時に操作するなどの大幅な省力化が図れるという。

 パナソニックは、2016年に自動追尾ソフトを発表し、その後2017年、2018年と進化させてきた。2016年には、「テンプレートマッチング」と呼び、講師の典型的なポーズをテンプレート画像として追尾の対象として追従することで自動追尾を実現。2017年には、特定の講師の顔をあらかじめ登録し、「顔認証技術」で顔を認識することで映像内の顔の位置を検出し、自動追尾させている。「テンプレートマッチング」「顔認証技術」だけでは解決できない課題を解決する方策としてディープラーニングを採用し、3つの技術を組み合わせることで、より確実な自動追尾を実現しているという。

■データが増えるほど精度向上
 今回、コア技術として採用したディープラーニングは、人工知能(AI)における機械学習という分野の一つであるが、機械学習が画像から手作業で特徴量を抽出するのと比べ、ディープラーニングでは、特徴量を画像から自動的に抽出する点が大きく異なる。画像データと処理するタスクを与えるだけで、自動的にその処理方法を学習していくという特徴がある。
 関連する特徴量を事前に学習する必要もなく、大量の画像データをプログラムが自ら学習して学び取る。1つの画像に含まれる数々の特徴を学習していき、より複雑な特徴を学び、認識対象となる物体の形状の学習を深めていく。自動的に特徴抽出をしていく仕組みにより、画像の認識・学習に高い分類精度を発揮。さらに、データが増えていくほど精度を向上させていくことができる点も大きな利点だ。

■CiscoSystemsの導入事例紹介64台のカメラ同時収録に利用
 櫻井氏は、今年1月にCiscoSystemsが実施したイベントにおいて、64台の4Kリモートカメラ「AW-UE70W」と自動追尾システム「AW-SF200」を組み合わせて、多数の会場で同時に実施したセミナーの撮影を低コスト、かつシンプルなシステムで運用した事例を紹介。暗所や照明によって影が生じるようなケースでも、対象となる人物を追尾して撮影し、省力化・省コスト化を高く評価されたという。

■テレビ番組制作の切り出し映像生成に利用可能
 櫻井氏は最後に、ディープラーニングによる自動追尾機能を利用した今後の展開として、テレビ番組で、複数のカメラで異なる出演者を追尾し、スイッチング・切り出し用の映像を生成するといった応用や、メダルや馬などの動物など、人物以外の対象を自動追尾するといったカスタマイズによる新たなソリューション開発も可能性として検討していると述べた。



 
 

HDインテグレーテッドカメラ「AW-HE75W/K」

HDインテグレーテッドカメラ「AW-HE75W/K」

豊富な出力インタフェース(本体背面)

豊富な出力インタフェース(本体背面)

昨年末、リモートカメラの製品化で10周年を迎えた

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今後、8K対応製品開発などもめざす

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#interbee2019

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