【NEWS】NVIDIAとQualcommがSoCで火花/クラウドによるレンダリング・サービス登場 SIGGRAPH 2013 報告(2)

2013.8.4 UP

米NVIDIAは、GPU搭載SoC「Tegra」の自動車応用を訴えていた
UIコンポーザで設計したUIは、即座にインスツルメント・パネルに反映できる(NVIDIA)

UIコンポーザで設計したUIは、即座にインスツルメント・パネルに反映できる(NVIDIA)

米Qualcommは、GPU搭載SoC「Snapdragon」の機能と開発ツールを積極展示していた

米Qualcommは、GPU搭載SoC「Snapdragon」の機能と開発ツールを積極展示していた

Prefixa Internationalは独自開発のレイトレーシング・レンダラによるクラウドサービスを開始する

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Green Buttonは、PIXARのRenderManをクラウド上で利用するサービスを開始した

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  CGとインタラクティブ技術の学会・展示会であるSIGGRAPH2013(以下、SIGGRAPH:主催=米ACM SIGGRAPH)は、7月21日から25日の5日間、アナハイムコンベンションセンターに17,162名の関係者を集めて開催された。昨年より出展が増えた展示会では、クラウドを用いたレンダリングサービスが登場した。また、プロダクション管理ツールにもクラウドベースのものが登場した。CGの世界もクラウドと無縁ではいられないようだ。
(映像新聞 論説委員/日本大学生産工学部講師 杉沼浩司)

■オートデスクが出展とりやめ 出展社数は昨年より微増
 今年のSIGGRAPHが開催されたカリフォルニア州アナハイム市は、米国ではディズニーランドとアナハイム・エンジェルズ球団の街として知られている。ロサンジェルス(LA)からフリーウェイを南下すること約40分のところにあり、LAは通勤圏内だ。このため、LA近辺のプロダクションに勤務する人達は、多くがSIGGRAPH会場へ「通勤」したと見られる。地元の人にとっては、通いやすいSIGGRAPHであったと見られるが、他の地域(特に海外)からの参加者にとっては、交通は一苦労だったとみられる。最寄りの空港はオレンジ・カウンティ/ジョン・ウェイン空港(SNA)である。発着数では全米有数の規模だが、国際線が乗り入れていないため米国外での知名度は低いとみられる。今回、日本からロサンジェルス国際空港へ乗り入れ、そこからバス、タクシーなどでアナハイム地域へ入った人も多いが、陸路部分が大変であったという。ジョン・ウェイン空港を使えば、車で約15分でアナハイムに到着する。
 今回のSIGGRAPHは、17,162名の参加者を得た。昨年が21,212名であるので、約30%の減少となる。また、前回のアナハイム大会(1993年)は27,000名であった。
 出展社数は、180社で展示床面積は43,850平方フィートであった。2012年は、出展社数161社、展示床面積44,759平方フィートであるので、出展社数は12%増加、床面積は2%減少、となる。今年は、米オートデスクが展示フロアへの出展を取りやめたことが、展示会場の寂しさの一因と感じられるが、会場自体は賑わっており、空白感が感じられることはなかった。

■モバイル用SoCでNVIDIAとQualcommが火花
 ハードウェアは、モバイル機器でのグラフィックスを睨んで、各社がデモを行った。特に、モバイル用SoC(システムLSI)を持つ米NVIDIAと米Qualcomm(クアルコム)が自社SoCとその開発環境を追求した展示を行った。
 NVIDIAは、同社の主力商品であるGPUに加えて、SoC「Tegra」シリーズの応用に焦点を当てていた。
 今回は、Tegraの自動車応用を訴えるコーナーもあり、インスツルメント・パネル(速度計、タコメーター等の計器類)の完全電子化を見せていた。インスツルメント・パネルは、機械式から電子式へ変化しているが、現時点では専用のパターンを焼き込んで作った固定式のパネルがほとんどだ。しかし、大手部品メーカーは、ドットマトリクス式のインスツルメント・パネル用ディスプレイを開発している。これは、超ワイド型の小型モニターが運転席に置かれたのと同じで、表示はすべてソフトウェアで決められる。既に部品メーカーは完成車メーカーと商談を行っており、早ければ2015年モデルから一気にドットマトリクス型が普及すると言われている。
 NVIDIAは、ディスプレイ・コントローラにTegraを導入することを提唱している。同社がパネルデザインツールを提供し、これを用いてサブシステム供給企業が自由にパネルデザインを変更する様子がデモされた。
 もう一つのデモは、Tegraで車線逸脱警報(LDW=Lane Departure Warning)や、標識認識を行うもの。LDWは、最近のドライブレコーダーにも搭載されているが、標識認識は一部の高級車に搭載が始まったばかりの機能である。前方監視カメラで画像を取得し、標識を識別し、そこに書かれている情報をインスツルメント・パネルに表示する。今回は、識別・認識部分がデモされた。制限速度、前方警告などの標識がリアルタイムに認識されていた。
 Qualcommは、同社のSoC「Snapdragon」シリーズに搭載したGPU「Adreno(アドレノ)」が最新のAPI仕様「OpenGL ES3.0」に対応していることを大々的に示していた。また、Snapdragon上でのゲーム実行をデモし、早い動きを十分に表現していることを訴えていた。
 Qualcommは、2012年のSIGGRAPHより展示を始めたこの世界では新顔である。グラフィックス業界へのアプローチを今後より強めてゆくとみられる。

■クラウドによるレンダリングサービスが2社から登場
 CGの世界にもクラウドがやってきた。クラウドによるレンダリングサービスを2社が提案している。
 メキシコのPrefixa International(プリフィクサ・インターナショナル、 http://www. prefixa.com)は、今夏以降にクラウド上でのレンダリングサービスを実施すると表明し、会場でデモを行った。同社が開発したレイトレーシング型のレンダラが使用できる。利用者は、作業量に応じたリソースをクラウド上に展開し、レンダリングを実行する。
 ニュージーランドに本拠を置くGreen Button(グリーン・ボタン、http://www.greenbutton.com)は、米Pixar Animation Studiosのレンダリング・ソフトウェア「RenderMan」をクラウド上で実行するサービスを開始した。RenderManは、業界では標準的なレンダラとして知られている。同社のクラウドは、アマゾン、マイクロソフトなどのクラウド・プラットフォーム上に展開しており、利用者はコスト(特に、データ転送コスト)やプロセッサ処理能力から最適のものを選択できる。

■レンダラのライセンス管理もサポート コア数・容量の変更が簡単
 CG業界には、これまで「レンダー・ファーム」と呼ばれる、レンダリング専用の演算資源レンタル業があった。クラウドとレンダー・ファームの違いについては、両社とも「ソフトウェアの管理、特に多数のハードウェア上で利用するためのライセンス管理が利用者にとって不要であること」を最大の相違点として挙げていた。
 レンダー・ファームが貸し出すのは、ハードウェアにOSが乗ったところまでで、レンダラのインストール、ライセンス管理、レンダリングジョブの分配などは、すべてユーザ(依頼者)が行わなければならなかった。今回出展した両社とも、レンダラのライセンス管理は、クラウド事業者側で行っている。また、処理資源の迅速な組み替えもクラウドの大きな特徴といえる。利用するコア数、使用するハードディスクの容量などが、簡単に変更できる。
 クラウドを用いたレンダリングは、大きなハードウェア投資を行わなくても多数のフレームにまたがるレンダリングが可能となる。これまで、計算資源が不足することで受注に踏み切れなかった小規模なプロダクションが、大きなプロジェクトに参加する道を開く。プロダクションをハードウェアの資源規模の制約から解放する手段として、クラウドは重要な役割を果たしそうだ。

UIコンポーザで設計したUIは、即座にインスツルメント・パネルに反映できる(NVIDIA)

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米Qualcommは、GPU搭載SoC「Snapdragon」の機能と開発ツールを積極展示していた

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Prefixa Internationalは独自開発のレイトレーシング・レンダラによるクラウドサービスを開始する

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Green Buttonは、PIXARのRenderManをクラウド上で利用するサービスを開始した

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#interbee2019

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