【プロダクション】ニコニコ超会議2のライブ配信 2日間で500万人が視聴 会場内24拠点でカメラ50台以上を駆使

2013.7.10 UP

2日間で10万人が来場し、500万人がライブを視聴した「ニコニコ超会議2」
インターネットライブ配信「ニコニコ生放送」の撮影〜配信の機材選定、システム構築を担当した金井氏

インターネットライブ配信「ニコニコ生放送」の撮影〜配信の機材選定、システム構築を担当した金井氏

 4月27、28日の二日間、千葉県幕張の幕張メッセで開催されたニコニコ超会議2には、10万人を越える来場者が集まった。ニコニコ超会議は、ドワンゴとニワンゴが提供するイベント。日本独自の動画共有/配信サイト「ニコニコ動画」のほとんどを「地上に再現する」というコンセプトで企画された超巨大公式イベントだ。会期中、主催者が会場で実施したライブ配信「ニコニコ生放送」は、2日間で500万人が視聴したという。「ニコニコ生放送」の裏舞台について、映像配信部分の機材選定からシステム構築までを担当した株式会社ドワンゴコンテンツ 営業本部コンテンツ営業部第一セクションテクニカルグループの金井章泰氏に聞いた。(小林直樹)

■リアルな場所に集まってもらい「ネット上のものを擬似的に再現」
 現在、登録会員数が約3400万人。月に約80万人のペースで増加しているというニコニコ動画。視聴者の層はセグメント化され、すべてのユーザーが触れ合う機会がほとんどない。そうした状況が、リアルの世界とかけ離れたものになっていくことを危惧していたニワンゴの杉本誠司社長が、なるべく多くのユーザーに、なるべく全てのジャンルにまたがって、リアルな場所に集まってもらい「ネット上のものを擬似的に再現」しようとしたのが、「ニコニコ超会議」だ。超会議を主催した株式会社ニワンゴの代表取締役社長、杉本誠司氏は、昨年のインタビュー(注1)で、ニコニコ超会議開催のねらいを次のように話している(以下抜粋引用)。

・・・・
 (前略)「視聴者の層はセグメント化されていて、(中略)すべてのユーザーが触れ合う機会というのがほとんどありません。特に、ネットを通じて集まっているので、他の様子を伺い知ることもしなくていい状況にあります。」
(中略)「現実社会では、好きな事だけではない事も受け入れる総合的な選択肢と向き合って生活していかなければならないが、ネットの世界では必ずしもそうではないのです。」杉本氏は、リアルの世界とバーチャルの世界がどんどんかけ離れたものになっていくことを、危惧していたという。
 杉本氏「ニコニコ動画では、ジャンルによって人気のあるものと、そうでないものといろいろです。自分が好きなものが多くの人たちも好きだということで、影響力の強いものに付加価値を見いだす人もいますし、逆にマイノリティであることにより、希少な存在であると、価値を再認識する人もいます。そういった価値を再認識するためにも、他の人がどんなものを好きなのか知るということは効果的だと考えました。そのため、なるべく多くのユーザーさんに、また、なるべく全てのジャンルにまたがって、リアルな場所に集まってもらい、そこにネット上のものを擬似的に再現することにしたんです。」(後略)
・・・・

 このねらいに呼応するかのごとく、多くのユーザーが全国から集まった。第一回の昨年は、9万2,384人が来場。今年は、それを上回る10万3,561人が会場に足を運んだ。会場内では出展各社や参加者がネット配信をしたほか、主催者による公式ライブ配信「ニコニコ生放送」が実施された。
 「ニコニコ生放送」の拠点は全部で24カ所。昨年の20カ所からさらに増加している。注目コーナーやキー・イベントなどは、マルチカメラによってスイッチングをしながら配信を行った。ニコニコ超パーティでは、10台近いカメラをセットしているという。
 番組はイベントごとに独立したものもあり、二日間で計70本以上の公式生放送が配信されている。両日とも、ほぼ一日中、生放送が配信されていた状態に近い。会場に来られなかったニコニコ会員とともに、来場している会員も視聴することを想定し、モバイルでの視聴に対応した低解像度での配信も実施された。また、開催前日からしこみの様子を俯瞰で見られるようにした定点カメラなども設置されている。
 2日間のトータル視聴者数は延べ500万人を越えたという。
 映像配信に関わったスタッフは、通常、ニコニコ生放送を担当している社内スタッフ約50人に加え、外部の制作プロダクション7社に収録を委託しているという大がかりなもの。会期中は、ニコニコ生放送のスタッフが全員、幕張メッセに詰めて作業をしていたという。

■機材の耐久性を事前に確認
 配信用に用意したパソコンは24カ所の拠点にバックアップも含めてそれぞれ3−1台を設置している。すべてのパソコンにブラックマジックデザインのDeck Linkキャプチャー・再生カードを搭載。複数台のカメラ、マイクを設置しているところではスイッチャーを介してカメラ、ミキサーを介してマイクからの入力を取り込んだ。PAからの音声は、ミキサーを通して、PCでキャプチャーしている。キャプチャー映像は、Flashmedia Encoderでリアルタイムにエンコードし、配信している。
 使用機材は、ビデオカメラ50台以上、スイッチャー約30台、同録用メディア約20台、マイク類約40台、ミキサー10台以上と、ちょっとした国際スポーツ中継なみの規模だ。これは、ドワンゴが用意した機材で、これ以外に外注スタッフなどが持ち込んだカメラやスイッチャーが多数あるという。
 生中継の映像配信部分の機材選定からシステム構築までを担当した株式会社 ドワンゴコンテンツ 営業本部 コンテンツ営業部第一セクション テクニカルグループの金井章泰氏は、次のように話す。
 「昨年は、初の試みということもあり、機材の貸し出し交渉などの相談を手探りで進めましたが、今年は、昨年のつながりもあり、スムーズに進みました。機材は昨年とあまり変わっていませんが、今回もまた、事前に入念なテストを行っています。特に重視したのは、機材の耐久性です。開催の3カ月前には、各機材をセッティングし、24時間連続の配信テストを実施しました。その上で、機材同士の相性が良く、長時間使用してもノイズの発生などの問題が出なかった製品を選定しています」。会場でも「スイッチャー、カメラなどの配信トラブルは一切なかった」という。

■ニコニコ超会議3の計画進行中 
 すでに、ニコニコ超会議3の開催が発表されている。2014年4月26、27日の2日間、千葉幕張メッセでの開催だ。来年も会場の規模は同じ予定だが、金井氏は「配信数はさらに増える可能性がある」と見ている。来年の抱負として、「会場内の映像センターに一極集中させた配信用の映像を、マルチモニターのような大型画面で常に確認しつつ配信をしたかったのだが、時間的なこともありできなかった。来年はぜひトライしてみたい」と話す。

【ニコニコ超会議2 ニコニコ生放送で使用した機材】
・カメラ(50台以上)パナソニックHPX250、AF105、AC160など
・スイッチャー(約30台)=パナソニックAW 50-HS、ブラックマジックデザイン ATEMなど
・同録装置(約20台)=パナソニックP2など
・マイク類(約40台)=ゼンハイザーMKH416P、シュアSM58など
・ミキサー(10台以上)=ヤマハ01V96、ヤマハMG124など
・PC(約30台)= 24拠点に1〜2台、バックアップ含む
・カード(約30枚)=ブラックマジックデザイン DeckLink Studio、ブラックマジックデザイン DeckLink HD Extreme 3D
※上記のほか、外注スタッフの持ち込みによるカメラ、スイッチャーなどが多数

(注1)ブラックマジックデザインが昨年の「ニコニコ超会議」について取材した記事(http://www.blackmagicdesign.com/jp/community/communitydetails?UserStoryId=39997)

インターネットライブ配信「ニコニコ生放送」の撮影〜配信の機材選定、システム構築を担当した金井氏

インターネットライブ配信「ニコニコ生放送」の撮影〜配信の機材選定、システム構築を担当した金井氏

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