【NEWS】3D University JAPAN 2015 報告(2)アワード 3D部門:4Dシアター用映像など特殊な上映形態の応募作品が増加

2016.2.18 UP

ルミエール・ジャパン・アワード 2015:3D部門 受賞者と審査員

ルミエール・ジャパン・アワード 2015:3D部門 受賞者と審査員

ルミエール・ジャパン・アワード 2015:UHD部門 受賞者と審査員

ルミエール・ジャパン・アワード 2015:UHD部門 受賞者と審査員

『世界に誇るつつじの名所! 〜つつじが岡公園〜』

『世界に誇るつつじの名所! 〜つつじが岡公園〜』

 前回に続き、昨年12月10-11日に開催した「3Dユニバーシティ・ジャパン(3DU-J)」(主催:先進映像協会 日本部会)のルミエール・ジャパン・アワードについて報告する。3DU-Jは11年から毎年開催されているイベント型の教育・啓発活動だ。良質なコンテンツ・活動に贈られる賞で、グランプリ受賞作は、3D部門が、長編フルCGアニメ『GAMBA ガンバと仲間たち』に、UHD部門は、フジテレビ制作の『TimeTrip軍艦島』がそれぞれ受賞した。ルミエール・ジャパン・アワードの受賞作品は、AIS本部主催の「クリエイティブ・アーツ・アワード」へのエントリー権を得られ、16年1月27日にロサンゼルスで授賞式が開催される。
(大口孝之)
(上写真は『TimeTrip軍艦島』のタイトル画面)

■ルミエール・ジャパン・アワード:3D部門
 「ルミエール・ジャパン・アワード:3D部門」は11年より行われている、優れた3Dコンテンツを表彰する部門である。優秀作品賞は3つ選ばれており、1本めはTBSビジョン制作の実写(一部アニメーション)の劇場長編『アリのままでいたい ARI NO MAMA DE ITAI』だ。医療用内視鏡などを基に独自開発した「虫の目レンズ」で知られる、昆虫写真家の栗林慧氏が撮影監督を務め、3年を掛けて制作された作品で、昆虫たちの生態を深い被写界深度の超クローズアップ映像で捉えている。
 なお、今年の3D部門の特徴として、前年までの映画、テレビ番組、ゲームソフトといったコンテンツ以外に、特殊な形式の作品の応募が増えたことが挙げられる。例えば、2つめの優秀作品賞に選ばれた『世界に誇るつつじの名所! −つつじが岡公園−』は、4Dシアター用ソフトである。館林市のつつじが岡公園内に昨年10月から開業している「つつじ映像学習館」のコンテンツで、200型の3Dスクリーンと、40席の4Dシートにより、風、水スプレー、振動などの効果を演出する仕組みだ。
 各品種の花のクローズアップや、微速度撮影による開花シーンなどを加えることで、単純な公園内の紹介映像にならないように工夫されている。
 3つめの優秀作品賞は、ラグーナテンボスとエイベックス・ミュージック・クリエイティブによる、『8ミニッツ AAAプラネットへの旅』に与えられた。
 これは、複合型リゾートのラグーナテンボス内にあるテーマパーク「ラグナシア」の360度全周3Dアトラクションで、コンテンツ制作は大阪のアエックス社が担当した。上映システムは、直径16m、高さ6mのサークルスクリーンに、パナソニックのDLPプロジェクターPT-DZ770SとMINI-Zスクリーン(偏光モジュレーター)を組み合わせたものを各10セット用意し、2段スタックで5面シームレス投影している。映像は、男女7人組のパフォーマンスグループ「AAA(トリプル・エー)」の実写とCGを合成したもので、会場内のあらゆる方向の空間に物体が浮遊している不思議な体験を味わわせてくれる。
 これら以外に、東京藝術大学大学院映像研究科による『Crossing Sight』に特別賞が与えられた。監督は中国からの留学生である邵雪晴(しょう・せっせい)氏で、学生作品のアワード入選はこれが初めてとなる。
 手術台で眠りに就く患者が生と死の狭間で体験する幻覚を、手書きによる作画アニメに視差を与えて3D化した。さらに左右に異なるイメージを表示することで「両眼視野闘争」(左右の目が見ている像が異なる場合、どちらかのみが意識に上るが、それがランダムに左右の目が争っているかのように切り替わる現象)を意図的に発生させ、「片目は幻を見て、片目は現実を見る」という特殊な状況の表現にも挑戦している。これは作者自らの実体験に基づく発想だそうで、その大胆なチャレンジ精神が高く評価された。
 今回の3D部門グランプリ受賞作は、長編フルCGアニメ『GAMBA ガンバと仲間たち』に与えられた。14年のグランプリ受賞作『STAND BY ME ドラえもん』に続き、再び白組による作品である。
 今回の映画化にあたっては製作委員会方式に頼らず、全て白組が企画から完成までを手掛けた。立体視に関しては、全編ステレオレンダリングを行い、かつ子供の鑑賞を考慮した無理のない映像設計になっている。海外のフルCGアニメにも負けていないキャラクター描写や、後半の大部分を占める海の流体表現など、高い技術力が評価された。

■ルミエール・ジャパン・アワード:UHD部門
 この部門には5本の4Kコンテンツが選ばれ、3つの作品に優秀作品賞が与えられている。まずパナソニック制作の『クロアチアの世界遺産 -原始の森と流れる水に響く歌声-』で、世界自然遺産プリトヴィツェ湖群国立公園において、12年に無形文化遺産に登録された南クロアチアの混声合唱団クラパの美しい歌声が響く作品だ。
 収録はパナソニックの4KカメラVARICAM35で行われ、Codex社がVARICAM35と一体化するように設計したVRAW Recorderを用い、非圧縮4K RAWで記録された。特に120フレーム撮影による滝の描写には目を見張るものがあり、水滴の一粒までリアルに感じられる。
 2つめは、BS朝日の番組『世界遺産で神話を舞う〜人間国宝・能楽師とギリシャ人演出家〜』だ。
 現存する世界最古の劇場「エピダウロス古代円形劇場」を舞台として、梅若玄祥氏による能の舞いを記録したドキュメンタリーである。題材は、長編叙事詩「オデュッセイア」をアレンジした「冥府行」という新作能で、ギリシャを代表する舞台演出家ミハイル・マルマリノス氏が演出している。マルマリノス氏は「仮面劇と能、あるいはオリンポスの神々と八百万の神など、古代ギリシャの文化は日本に生きている」という考えから、このイベントを企画したそうである。撮影は基本的にソニーPXW-FS7で行われたが、ギリシャ政府が支援しているフェスティバルのため、円形劇場でのドローン使用の許可が世界で初めて下りた。
 3つめは、ソニーPCLによる『GUNKANJIMA -Traveler in Time-』で、ユネスコ文化遺産指定会議における「明治日本の産業革命遺産」のプレゼン用に制作された作品である。女優の夏帆が演じる旅人が軍艦島の廃墟を旅するというストーリーで、大規模なドローン撮影を駆使すると共に、英国のDigital Design Studio - The Glasgow School of ArtとCDDVによる島のデジタル復元も用いられている。また複数の4Kプロジェクターと発電機を持ち込み、島の最盛期に撮影された写真を廃墟となった建造物へ投影した。
 さらに、フジテレビの番組『東京アイドルフェスティバル2014〜史上最多! アイドル138組が大集結!!〜』に特別賞が与えられた。約千人のアイドルと4万人超の来場者を、ソニーPMW-F55を用いて4K撮影した作品である。動きの速い被写体を、屋内外のステージや昼間・夜間での多様な条件でリアルに捉えていることが評価された。
 UHD部門グランプリを受賞したのは、フジテレビ制作の『TimeTrip軍艦島』である。偶然、軍艦島を扱った作品が重なったが、こちらは「タイムトリップビュープロジェクト」と同じチームが手掛けており、アプローチの仕方が異なっている。ソニーPMW-F55を用いて撮影された風化が進む現在の軍艦島と、にぎやかだった時代に撮られた写真を同ポジで正確に重ね合わせることで、時の流れを実感させ、情感あふれる構成となっていた。

ルミエール・ジャパン・アワード 2015:3D部門 受賞者と審査員

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ルミエール・ジャパン・アワード 2015:UHD部門 受賞者と審査員

ルミエール・ジャパン・アワード 2015:UHD部門 受賞者と審査員

『世界に誇るつつじの名所! 〜つつじが岡公園〜』

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