【Inter BEE 2015】INTER BEE CONNECTED:セッション報告(4)「米国放送界最新事情:大手TVネットワークのOTT戦略とその波紋テレビ番組もオムニマーケティングを考える時代

2015.11.28 UP

小池氏が示したOTT事業者の4分類。コンテンツプロバイダー自身がOTTに乗り出している

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OTT事業者のリスト。数ドルから十数ドルと“付加”しやすい価格帯になっている

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CBSのムーンベスCEOは、今後何が起こってもおかしくない、と発言した

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番組のオムニマーケティングを示す図。放送界では耳慣れない言葉だが重要な概念

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 InterBEE Connected内での企画セッション、19日最初のコマは米国在住のITジャーナリスト・小池良次氏をお招きし、江口靖二氏の進行のもと米国放送界の最新事情をお話しいただいた。大手TVネットワークが積極的にネット配信に乗り出し、それを軸に大きく変化しつつある米国の動向がわかりやすく伝わるセッションとなった。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境 治)

 この記事では、小池氏の話の内容をできるだけ再現してお届けしよう。

■3〜4人に一人がOTTを利用 すでに成長率は鈍化
 「米国の家庭は6割がネットに接続しており、さらにその中の6割が何らかの形(ゲーム機などを介した家庭も含む)でテレビがネットに繋がっている。OTTサービスの最大手はNetflixだが、すでに米国内では3〜4人に一人が利用しているので、成長率は落ちている」
 「OTT事業者は大きく4つに分類でき、タイムワーナーケーブルのようなネットワークOTT、NetflixやhuluのようなクリアリングハウスOTT、AppleTVやROKUなどのOTT-STB、そしてそれらに番組を提供していた放送局などが直接配信するコンテンツプロバイダーダイレクトという新しいグループも登場している」

■"世界一周"をめざすNetflix 日本は中国進出の拠点
 「Netflixは世界一周をやると宣言しており、日本進出は米国内でも話題になった。中国に行く前の拠点として日本を重視している。もちろん日本市場そのものも一定の規模があり国内コンテンツもしっかりしているからでもある」
 「日本では5年間赤字が続くと明言しており、アジアはブランドを視聴者が重視するので時間がかかってもその後続く市場になると彼らは考えている」

■ケーブル契約100ドルに対しOTTは5〜10ドル
 「OTTサービスのリストを見ると、5〜6ドルから10ドルというところ。米国のテレビ受信はケーブル契約に100ドル程度かかる。収入の高い層ではこれに加えてOTTをいくつか利用する傾向になっている」
 「低収入層ではケーブルなど多チャンネルサービスの契約を減らしてOTTを付加する。コードカッティングではなくコードシェイビングと呼ばれている」

■OTTに熱心なCBS NFLの独占配信権を獲得したVerizon
 「ネットワーク局でOTTに熱心なのはCBSで、All Accessという5.99ドルのサービスを開始した。ライブでの再送信も行いつつ、7500本程度をオンデマンドで視聴できる。他は例えばFOXの場合、スポーツとニュースが強いのでオンデマンドに向かない。ケーブル会社や衛星会社にものすごく高い再送信料をとっている事情もあるようだ。ABCはニュースをネット配信しており広告付きで無料で視聴できる」
 「ダークホースがVerizonで、NFLの独占配信権を取った。一方で若者向けのgo90を手に入れショートフォーマットでネットネイティブの制作者たちが作っているので若者に人気が出ている」

■コンテキストがEC戦略のポイント
 「米国では番組をあらゆる機会に見られるようにしていて、これはECをモデルにしたオムニマーケティングと言えるだろう。米国のECはコンテキスト(Context)に合わせて広告を出す。コンテキストを握るということが番組にとって重要になる」
 「今後、番組と一緒に広告を見せるというより、番組がアドネットワークのようなものになり、そこにワンクリックショッピングがくっつく、ということになるのではないか。放送がネットに出て行ったときに、テレビ番組だけ他のインターネットと違うと考えてはいけない。おのずからネット上での主流であるECのやり方にならざるを得ないだろう」

☆★☆★
 とくに最後の方は非常に理解しにくい部分だろう。米国でもようやくはじまったばかりの考え方なので、ようやく番組のネット配信がはじまったばかりの日本ではイメージしにくい。だがネットに出たら「番組と一緒に広告を見せる」のとは違うやり方を考えねばならないし、それも含めてオムニマーケティング、つまり番組が視聴されるタッチポイントでそれぞれのマネタイズを整えて撚り合わせていく方向に考え方をシフトせねばならないということだと思う。
 小池氏のお話を聞くというシンプルなセッションだったが、ある意味もっとも最前線の知見を得る機会となった。

小池氏が示したOTT事業者の4分類。コンテンツプロバイダー自身がOTTに乗り出している

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OTT事業者のリスト。数ドルから十数ドルと“付加”しやすい価格帯になっている

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CBSのムーンベスCEOは、今後何が起こってもおかしくない、と発言した

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#interbee2019

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