【NEWS】「主要輸出品」として評価高まる 仏アニメ アヌシー国際アニメーション・フェスティバルレポート(2)

2013.8.3 UP

『Oggy et-les Cafards, le film』(c)Xliam, France 3 Cinéma
アヌシーでは、英国の共同製作インセンティブに関するパネルディスカッションも開かれた

アヌシーでは、英国の共同製作インセンティブに関するパネルディスカッションも開かれた

フランス テレビアニメーションの過去5年間の動向(CNC年次レポートより)

フランス テレビアニメーションの過去5年間の動向(CNC年次レポートより)

 アニメーション業界最大規模のイベント「アヌシー国際アニメーション・フェスティバル」および「MIFAマーケット」が開催されたフランスでは、1998年に大ヒットしたミシェル・オスロ監督の映画『 Kirikou et la Sorcière』(邦題『 キリクと魔女』、フランス、ベルギー、ルクセンブルグ)以降、一般観客も国産アニメーション映画を再評価している。フランスのアニメーションは、デジタル技法の普及と相まって質量ともに充実。今では主要な『輸出品』としてフランスに外資を誘導し、雇用創出に貢献している。
(伊藤裕美/オフィスH 〔アッシュ〕)

■国外販売の率が高いフランスのアニメーション市場
 フランスのCNC(国立映画・映像センター)が6月に発行した年次レポート「2012年のアニメーション市場-テレビと映画、制作、配給、観客・視聴者」によると、11年のテレビアニメーションの国外販売額は3530万ユーロ(約45億8900万円)で、総販売額の32%に相当する。また、12年に国内で制作された298時間の75.6%に当たる226時間は、国際共同製作や外国のプリ・セールスだ。
 長編アニメーションでは、日本でも公開されたリュック・ベッソン監督の映画『アーサーとミニモイの不思議な国』(2006年、フランス)と映画『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』(2009年、フランス)が、それぞれ40カ国以上、マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー共同監督の映画『Persepolis(ペルセポリス)』(2007年、フランス)およびシルヴァン・ショメ監督の映画『Les Triplettes de Belleville(ベルヴィル・ランデブー)』(2002年、フランス)はいずれも30カ国以上に配給された。
 日本未公開だが映画『Igor』(2008年、米国)は30カ国で400万人以上を動員。また『Asterix et les Vikings』(2006年、フランス)と『Un monstre a Paris』(2011年、フランス、邦題『モンスター・イン・パリ 響け!僕らの歌声』 )は、ともに28カ国、前者は270万人、後者は140万人を動員した。(『Igor』は、制作は米国のExodus Film Groupだが、CGをフランスのSparxが担当した)

■上昇する制作費 ハリウッド作品への対抗意識か
 フランスの長編アニメーションの制作費をみると、リュック・ベッソン監督の『アーサーとミニモイの不思議な国』(2006年、フランス)、『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』(2009年、フランス)、『アーサーとふたつの世界の決戦』(2010年、フランス)は、6000万円ユーロ(約78億円)規模。それ以外は3DCGでも「1500万-2000万ユーロ(約19億-26億円)が妥当」と見られてきた。
 しかし100億円規模のハリウッド作品に対抗するためにか、制作費の上昇が見られる。前出の『モンスター・イン・パリ 響け!僕らの歌声』は2800万ユーロ(約36億円)を超えた。
 放送局M6傘下のスタジオが制作する、14年公開予定の3D(立体視)作品『Asterix et le domaine des dieux』(邦訳=アステリックスと神々の領域)は、米国と共同で3,100万ユーロ(約40億円)を超す制作費が投じられた。古代ローマ時代のガリア人が主人公であるバンド・デシネ(フランス語でマンガ)の『アステリックス』は、シリーズ累計3億5000万部以上発行のロングセラーで、フランス語圏と中南米に圧倒的ファンを持つ。
 また、ベルギーのベン・スタッセン監督による3D作品『Fly Me To The Moon』(邦題『ナットのスペースアドベンチャー3D』、2008年、ベルギー)の続編『Samy2』(2012年、ベルギー)は、2100万ユーロ(約27億円)から2500万ユーロ(約32億円)に拡大した。
 人気コミックス原作やヒット作の続編とはいえ、欧州のアニメーションには、国外配給の実績が伴わなければ投じられない規模の制作費が動いている。

■低予算で世界市場を目指すスタジオも
 一方、欧州では低予算と考えられる”5億円規模”で制作するスタジオもある。フランスのイグジラムの長編アニメーション『Oggy et-les Cafards, le film』(2013年、フランス、邦訳=映画版 オギーとコックローチ)は400万ユーロ弱(約5億円)だった。
 原作は1997年に放送が開始されたテレビシリーズ『オギーとコックローチ』で、青色の猫のオギーと天敵の3匹のゴキブリが主人公のドタバタコメディー。フランス版「トムとジェリー」として親しまれる。カートゥーン・ネットワークがアジアと中南米で放送し、フェイスブックのファンは120万人に達する。
 イグジラムは、パリとベトナム・ホーチミンに制作チームを持つ。複数のテレビシリーズを制作しながら、80分の長編アニメーションを18カ月で制作した。企画開発と制作管理をパリで手掛け、アニメーション制作はベトナムのスタジオで実施した。
 創立者でCEOのマルク・デュポンタヴィス氏は、「フランス公開前に15カ国へ販売し、国内で35万人の動員で採算レベル」と述べている(フランスの映画専門誌「エクラントタル」6月12日号より抜粋)。
 自社で著作権を保持し、ライセンス管理を自在に行うために、過剰な投資や大手との共同製作を避け、低予算で世界市場を目指す。 

アヌシーでは、英国の共同製作インセンティブに関するパネルディスカッションも開かれた

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フランス テレビアニメーションの過去5年間の動向(CNC年次レポートより)

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